護衛依頼 2
指定された日にギルドに行くと、立派な馬車と、他にも護衛兵士達用の馬車もあった。
「これ私達、要らなくない?」
「戦力は似たり寄ったりかな?まあ、そこそこ使えるんじゃない?」
「それでも、数の力は大きいよ。盗賊団がどれ程の規模かは分からないけど」
(その事だけど、マナは援護だけしてくれればいい)
(え?)
(魔法で援護だけして)
(そんな事気にしなくても、相手は悪人なんだから、罪にもならないし、魔物を倒しているのと一緒だよ?)
(混戦になったら、マナは小さいから危ないから)
(ちょっと…!またそうやって)
貴族が馬車から降りてきた。
「うむ。では前衛と後衛に一人ずつ。直接の守りはマナに任せるとしようかのう?」
「なら、僕が前衛に回るから、ルビーは後衛を任せる。マナは…気をつけて」
マナは馬車の御者台に上ろうとしたが、止められた。
「直接の護衛なのだから、外にいられては困る」
「え…そんな、伯爵様と一緒とか、恐れ多いです」
「遠慮は要らぬ。冒険の話でも聞かせてくれぬか」
中には着飾ったおばさんと、私と同じ位の歳の男の子と、それより3歳位上の男の子がいた。
「よろしく!僕はトール!今年9歳になったんだ。同じ歳だよね?な、今までどんな魔物と戦ったんだ?Aランクって竜とか倒すのか?」
「いや、竜は倒せないし、竜はこちらが剣を向けなければかかってきませんよ」
「こらトール!一人で喋るな。私はラクル。是非、仲良くして欲しい」
何?話相手?そりゃ、王都まで一ヶ月近くある訳だから、退屈だろうと思うけど、私の仕事って護衛だよね?
ルードは軽く威圧を放っているので、ゴブリン程度の雑魚は寄ってこられない。
後方から、シルバーウルフが迫っている。ルビー母さんなら余裕だろうけど、数が多いかな?普通のウルフも多い。
「ちょっと退いて下さい、ウルフが迫っているので」
「安心なさい。その程度なら、兵士達に任せておけば大丈夫です」
「けど奥様?私は護衛ですから。シルバーウルフもいますし、奴らは素早いですから」
「問題ない。ゆっくりしていなさい」
はあ?何それ。
ルビー母さんは得意な糸は使わず、槍と魔法で戦っている。
ルビー母さんの目を通して見ているけど、ウルフ相手なら、兵士達の強さでも問題なさそうだ。シルバーウルフも数人掛かりで相手している。
(マナ、中はどんな感じ?)
(それがよく分からないんだよね。私も出ようと思ったんだけど、止められた)
(中には、マナの他に5人?)
(夫婦と子供達と、執事みたいな人。8人位は乗れそうな馬車だよ)
(ふうん…男?)
(同じ歳と、ちょっと上の子供達だよ。特に変な話は出てない)
(了解。そろそろ宿泊予定の村に着くから、マナはさっさと僕の方に来て)
(そうするよ)
私を見る視線に、時々うなじがチリチリするんだよね。
だけど、私は専用護衛という事で、貴族達と一緒の部屋になった。ルビー母さんは奥様と一緒で、ルードは兵士達と一緒。
私は女の子なんだから、女性の部屋に行って、ここにはルードが来ればいいと思うんだけど?
「あの、この部屋の護衛はルードの方が適任だと思うんですけど」
「嫌だよ!着いたらゲームをしようと思っていたんだ」
取り出したのは、…え、リバーシ?バッタもんの名前といい、昔転生者でもいたのかな?まあ、リバーシは得意だし。
あっさり負かしてやったら、執事さんに、坊ちゃま達に遠慮して欲しいと言われた。
えー。わざと負けるのは嫌だな。
「マナは強いね。これは貴族のゲームだって聞いたけど」
「えーと、特に難しいルールはないですし、角を押さえれば必然的に数は多くなるかなって」
「けど、女性なら男に花を持たせる位じゃないとって教わらなかった?」
「生憎と、平民なので」
「え?準爵って聞いたけど」
「あ、そうだっけ。でもそれは、Aランクになったからなので」
「それでもマナは特別だと聞いた」
「スーパーって事?そう言われるのはちょっと嫌なんだけど」
「兄様、本当に…」
「トール!…済まない。声を荒げて。私は気にしない。どの道父が決めた事だから」
チェスとかなら、私はやった事ないから勝てるのに。そういうの、どこまであるのかな?
(ルビー母さんと、ルードの方は大丈夫?)
(私達より、マナが注意しなさい)
(そうだよ。変な事になってない?)
(うん…私がリバーシで勝ち続けたら、ちょっと機嫌が悪くなった位かな)
(へえ?マナはリバーシ知ってるんだ?仕事が終わったらやろうよ)
(うん!リバーシならルードにも勝てそう!)
(へえ?それは楽しみだ)
この世界にもリバーシがあったなんて驚いたな。早くルードとリバーシやりたい!
トランプとか花札もあるのかな?でも紙が貴重だから難しいかも。さっきのリバーシもプラスチックじゃなくて石だったし。…それは当然か。どう考えてもプラはない。
このまま何事もなく終わればいいな。




