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好きの意味

 久しぶりにみんなで温泉に来た。ユキ達が可哀想なので、ストーンウォールで端に壁を作って、中に氷を投入する。

 私はルビー母さんの蜘蛛の下半身に乗り、時折体を冷ます。

 魔物も来るけど、アルケニーと竜のいる場所に近づく猛者はいない。

 スカイもルードも雄だけど、人化してないときは恥ずかしくないってどういう事?等と自分に突っ込みを入れるけど、これが種族の違いって事かもしれない。

(マナ、もう少し温くしていい?)

「いいよ。あんまり熱いとゆっくり入れないからね」

 マナは、氷柱を何本か立てて、熱くなった顔を押し当てる。

 ルードが、作った氷柱をガリガリと牙で噛み砕いて食べている。

「食べちゃったらお湯が冷えないよ?…そうだ!」

 本当はちゃんと夏になってから出そうと思っていたけど、お風呂に入りながらっていうのも贅沢だよね。

 お皿を五枚、浮かせた木の盆に並べる。そこに氷をさらさらになるように並べて、半殺しにした苺をたっぷり乗せて、砂糖とミルクをかける。

「かき氷だよ。食べて」

 ちゃんと夏になるまでにはシロップも作っておこう。


「うにゃっ!苺…甘いにゃ!」

 ふふっ。ユキ達は気に入ったみたいだ。

「熱い中で食べると美味しいわね!」

 お皿を取りに来たルードが、人化する。

「わ!ルード、人化しないで!」

「何でさ?人化しないと、一口で終わっちゃうじゃないか」

「でも!温泉入る時は竜の姿って約束したじゃん!」

「ユキも人化してるけど」

「ユキは女の子だからいいの!恥ずかしいから竜になってよ!」

 乙女心?は繊細なのさ。

「うにゃ?にゃーは恥ずかしくないにゃ?」

「僕には変わりないんだけど」

 文句言いながらも、食べ終えたら竜に戻ってくれた。

 そうなんだけど…確かにそうなんだけど、何でかな?

 まあいいや。


 亜空間でルードにもたれかかって、毛布を被る。

「ね、牛乳はどうやって生産してるの?」

(マナのゲームの?)

「違うってば。高価だけどバターは少し流通してるでしょ?」

(分からないけど、輸入物じゃないかな?マナはどうやってバターを作っているの?)

「ゲームの中で牛を飼っているから、そこから牛乳を収穫して、攪拌して作っているんだよ」

(飼ってるって…従魔じゃないよね?)

「ただの家畜だよ。ああ…そういえば、普通の動物もいないもんね」

 驚いたのは、馬も魔物だった。比較的大人しいから、生育者がちゃんといて、育てられている。コッコも弱い魔物だから、生育されて、卵が生産されている。

「牛の魔物は…私が知ってる中だと、ウォーターバッファローだけど、ミルクが採れるとは思えないな」

 ミノタウロスは問題外だし。

「んー。先生に聞いてみようかな」

(ミルクが欲しいなら、スマホで採れるんだろ?)

「牛乳が簡単に手に入れば、チーズの生産もすると思うし、そしたら色んなチーズもできたらいいなって」

 流通少ないって事は、ダンジョン産の可能性もあるけど、バターそのものがドロップするとは思えない。


(マナ、食べ物の話?)

「ん。牛乳の話だよ。流通すれば、色々できるのにと思って」

 スカイが飛んできて、毛布の上に乗る。

(小さいからたくさんは無理じゃない?)

「え?スカイは何か知ってるの?」

(マナがスマホの中から持って来るのと一緒かどうかは分からないけど、昔、食べた事があったよ?)

「食べる?」

(魔の森の端の方にあって、…でもマナの持って来るのとは違うかも)

「あるって事は、植物?」

(木の実だよ)

(それってミールの実の事?)

(名前は分かんない。人がなんて呼んでるかなんて知りようがないし)

(マナが探しているのは、牛?だよね)

「もしかして、バターじゃなくてマーガリンだったのかも?」

(え?…何、それ)

(動物性じゃなくて、植物性だったのかもって事。それ、欲しいな)


(じゃあ僕が…)

(いや、どっちが早くマナに渡せるか競争だ!スカイ!)

 えー?何でそんな事になっているの?

「変な競争しなくても…いいけど、そこにゲート開けるの忘れないでね」


 朝ご飯が終わってからと二人に言ったので、二人共素早く食べている。ていうか、こういうイベント?があればルードも早起きするんだな。今朝なんて、私より早かった。

 いきなり起きて人化するから、支えを失って絨毯に転がる所だった。


「二人共どうしちゃったの?」

「何かね、私がミールの実が欲しいって言ったら、いきなり競争が始まっちゃって。何でかな?」

「二人共マナに好かれたくて必死なのよ」

「え?そんな事しなくても大好きだけど?」

「うーん。雄のプライド?」

「それならにゃーにも分かるにゃ。でもマニャが番を欲しがってると思えにゃいにゃ」

 あれ?…え?番って…!

「そうよねー?マナにとっては兄妹みたいな物だと母さんも思うわ」

「それってルードとスカイがそういう意味で私の事好きって事?」

 まさに青天の霹靂なんですけど。

「あら、余計な事言わなければ良かったかしらね?」

「マニャには無駄な努力にゃ」

「えーと、それは確かなの?」

「スカイはともかく、ルードは結構あからさまだったと思うけど?」

 いや、知りません。

 でも、言われてみれば、ヤキモチとか…。

「それっていつから?」

「従魔の頃からかしらね?少なくともルードは。スカイは自分が鳥だから諦めていた所もあったけど、マナにいい所見せたくて必死だったじゃない」

 いや、ルビー母さんの勘違いって事も。ていうかユキがそんな事言うなんて。

「ユキは、番の意味分かってる?」

「にゃーはもう大人にゃ。ケットシーには番は要らないけど、マニャと番になれたら嬉しいにや!」

 どこまで分かっているのか分からないな。ユキは。

「ユキ?マナはみんなの主なのよ?だから一人占めは駄目なの。二人共それは分かっていると思うけど」

 困った子達ね。と呟いてルビー母さんはため息をついた。


 ミールの実は、カリンみたいに硬くて割るのが大変だったけど、割ったら脱脂粉乳みたいなのが出てきた。

 昔スカイが食べたのは、割れててそこに雨水が入った物だと思う。

 これなら、油を混ぜれば割と簡単に作れるな。正体は分かったけど、チーズは無理だな。

 ヤギでもいいんだけど、大人しい魔物は珍しいから、見つかりそうもないかな?





 

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