パーティー
熟成小屋を覗いてびっくりした。そう何日も経っていないはずなのに、ちゃんと味噌になってる!糀もないのによく味噌ができたものだ。
次は醤油も作ってみよう。
よし、サンマのみりん干しもちゃんとできてる。イカの一夜干しも。
ハイオークのロースもちゃんとハムになっているし、ベーコンもできてる。
凄いな。熟成小屋。10%オフの日を待って買った甲斐があった。
一応お酒を造る樽もあるけど、作れば眷属達が飲むかな?入れる材料によって出来るお酒の種類が変わるようだ。
私とユキはまだ子供だけど…あれ?ユキって子供なのかな?スカイは?
それならルードも子供って事になるけど、この世界では子供もお酒を飲む。
私は…やめておこう。折角伸び始めた身長が止まったら嫌だし。
とにかく、しばらくは金策に励まなければならない。
畑の方をさっさと終わらせてダンジョンに潜って鉱石と魔石をゲットした。
マロの実をおやつに食べながら、錬成と成形を繰り返す。
家畜小屋に行って牛から牛乳を貰って、ふと思った。
コッコみたいに飼える魔物もいるんだから、ミルクが採れる牛にも大人しい種類がいるんじゃないかな?僅かだけどバターもクリームも流通しているんだし。
牛乳が流通すればもっと料理に幅も出ると思うんだけどな。それと、パンを発酵させる技術。無発酵でも牛乳が流通すれば、バターを練りこんでナンにすれば、もっと美味しくなるのに。
今日はメダルの授与パーティーだ。ルードは当然行くだろうけど、私はどうしようかな…ルードには来ないでとは言われたけど、もしかしたら私、邪魔?
いや、眷属を疑うのは良くないよね。私の為だよね?
「ルビー母さん、私、やっぱり行こうかな」
「ルードが心配?本当にマナはお兄ちゃん子ね。私かユキも行った方がいいかしら?」
「大丈夫だよ。会場に行けばルードもいるし」
「いえ。私も行くわ。変に目立たない程度にしゃべり方とか教えて」
私が教えるのか…ちょっと不安だな。その辺の成績は良くなかったんだよね。
「にゃーは?」
「んー、そのにゃーっていうのは言っちゃダメかもしれない?」
「無理にゃ…」
「いいよ。スカイとお留守番してて」
ていうか、たった数時間で教えるのは無理ゲーなんだけど。
パーティーは夕方から始まるので、その少し前に王都に着いた。
普通は馬車とか使うのかな?分かんないから歩いて来ちゃった。
ルビー母さんは目立つ。元々美人だし、スタイルもいいから。
歩いて来たからか、門番の人もエーって顔してるけど、知らんわ。
(マナ?もしかして城にいる?)
(いいじゃん別に。私も呼ばれているんだし)
(そういう問題じゃなくて)
(ルビー母さんもいるから大丈夫だよ)
ルードはまだ、会場にはいないみたいだ。
ダンスホールみたいな部屋に案内されて、ちょっとほっとした。ここには例の魔道具はないみたいだ。
「目がチカチカしそうね」
色とりどりのドレスに、装飾品。スカイが喜びそうだ。
王様達が現れる少し前にルード達も来たけど、あの時の女性と腕を組んでいたので、近づくのは遠慮した。
それにあっというまに女の人達に囲まれちゃったし。
王様達が現れて、メダルが渡される。ユキの分も預かったけど、スカイの分はまた後日という事になりそうだ。
ダンスが始まったけど、私に踊れる訳ないのさ。私もルビー母さんも誘われたけど、踊れないなら教えてくれるらしい。身長が釣り合ってないけどいいんだろうか?
ルードは踊れるみたいだ。こういうのはスキル関係ないみたいだな。
ルードが苛々してる。私がいう事聞かないで来たから怒っているのかな?
色々聞かれるけど、その辺は適当に流す。ルビー母さんも神と関係があるのか聞かれていたけど、何もないって言ってる。確かに今は神の使いの表示は消えてしまったから、嘘じゃない。何だか私が教えなくても全然平気な感じだ。
交際を申し込まれたけど、あなたはロリコンですか?って逆に聞いたら逃げた。
多分年齢的にはそんなに離れていないんだろうけど、私はまだ9歳。子供だからね。
けど、大人になっても貴族なんて面倒な人種はごめんなのさ。
ルビー母さんもモテモテだな。やっぱり胸?胸なの?
あんまり敬語とか使わなくても平気っぽい。なら、ユキ連れて来ても大丈夫だったかも?
ここにも獣人はいないし、そもそも獣人は、割合が少ないみたいだ。
ユキは獣人とは違うけど、普通の獣人が人族と結婚する事もあるらしい。その場合、ハーフではなく人族か獣人族のどちらかが生まれる。獣人族の寿命は人族と変わらないから、問題もあまりないとか。
エルフはまだ見た事ないけど、ドワーフの武具屋さんは見た事がある。小柄だったけど、痩せてたな?
ルビー母さんとルードは見かけ年齢ほぼ一緒だから、血は繋がっていないって事にしてる。でも私とルードは兄妹って事になっているから、みんな混乱して詳しく聞こうとするけど、その辺は曖昧にした。私達にはメダルもあるから、素直に答える必要もない。どこぞのご隠居の印籠みたいだ。
偽装を解いて欲しいとも当然言われたけど、嫌に決まっている。
あ、ルードが女性達を強引に押しのけてこっちに来た。
「マナ?子供はもう、寝る時間だよね?」
「はい?…ふうん。これからは大人の時間て事?」
「!ちょ…どこでそんな事…じゃなくて、マナはルビーと帰りなよ」
「別にルードの邪魔してないじゃん。言われなくても適当に帰るし」
大体、帰って来ないのはルードの方じゃん。私は何もしてない。勝手にルードが苛々してるだけで。
「そうね。マナ、そろそろ帰りましょうか?ユキ達も心配してると思うし」
「そうだね」
「歩いて来られたと聞きました。私が送りましょう。どこの宿に泊まられていますか?」
あ、やばい。亜空間移動で来たなんて言えないし。
「歩いて帰るのでいいです」
「遠慮なさらずに。もう夜も遅いですから」
「酔いも覚ましたいので、歩いて帰りますわ」
ルビー母さん、いつの間に飲んでいたんだろう?
「しかし、さすがに貴族街を抜けると、治安も悪くなるので」
「Aランク冒険者に手を出すような命知らず、返り討ちにできますよ」
「!えっ…あー」
若い女性と子供の二人だけなんて危ないと思っているかもしれないけど、見かけに騙されると痛い目見るのさ。
多分どこに泊まるのか知りたいんだと思うけど、いい加減鬱陶しい。
フラッシュを使って目潰しして、その隙に亜空間に入った。




