ルードの彼女?
ユキが王都に行きたいと言うので、一緒に来た。
あれから音沙汰のないルードが心配なのかもしれないけど、邪魔しちゃいけない。変わらず元気としか伝わっていないけど、パスも偽装しちゃうから、信用ならない。
「苛々する位なら、会いに行くにゃ!」
「え…ユキが王都に行きたいんじゃなくて、私の為に?」
「ルビーも心配してたにゃ。マニャはきっと自分からは動かないから、一緒に行ってって」
うーん。読まれてる。
「こっちにゃ!」
「待って!ユキ、もし隠れていたら」
「邪魔はしないにゃ」
まあ、ユキは元アサシンキャットだから、心配はないだろう。
あれ?ルード?服飾店で綺麗な女の人と親しそうに何か話している。私の気配には気付いているはずなのに、こっちを見もしない。
「にゃー?」
ユキは首を傾げる。
どういう事?…あんな嬉しそうな表情、私以外にも向けるんだ。
「マニャ、これ可愛いにゃ?」
ユキが髪飾りを見せてくるけど、呑気にアクセサリーなんて見てられない。もやもやする。眷属とはいえ、プライベートにまで干渉する気はないけど。
ルードだってお年頃?なんだから、ここは主として暖かく…。
「あら?妹さん、ですよね?初めまして。私、マリエラ フォスターですわ」
「ごきげんよう。です。ええと、妹のマナと、ユキです」
…ちょっと間違えた?
「噂通り、あまり似てませんのね。それに、獣人の妹?」
「うちの家族は、ちょっと複雑なんだよ。マリー。マナとユキも、買い物?」
「もう終わった。お兄ちゃんも、ふらふらしてないで、家に帰って来てよ」
「ごめんなさい。パーティーまで日がないので、ルードさんには我が家で留まるよう勧めたのですわ」
「あ、そうだったんですね」
「僕はもう、大人なんだから、心配しなくても大丈夫」
「ならパーティーは、お兄ちゃんに任せればいいって事?」
「リーダーとはいえ、まだ子供だからそれでも大丈夫だよね?マリー」
「詳しくは分かりませんが、よろしいんじゃありません?」
「ふうん。冒険者活動に支障がない程度にしてね」
ちょっと嫌味っぽかったかな?でも、二人がお似合いに見えてちょっとだけイラッとしたんだもん。
(マナはパーティーに来ないでね)
「行こ!ユキ」
果実水を買ってユキと並んで座る。
「どうしたにゃ?怒ってるにゃ?」
「怒ってない」
「うにゃ…」
「ごめん。私って心が狭いのかも。ユキももし、好きな人ができたら言ってね?眷属の絆は切れないけど、結婚とかちゃんと祝福するから」
「うにゃ?にゃーはマニャが大好きにゃ!マニャと結婚するにゃ!」
あはは。ユキにはまだ早いか。
「相席してもよろしいですか?」
おお。いかにも貴族然とした立ち居振る舞い。
「他、空いてますけど?」
「いえ。一度お話を伺いたいと思っていたんですよ。私はアレン クルフォードです」
だから何?サンダーホークのスカイはもういないけど?
「おや、クルフォードの家名を知らないですか?」
「生憎と興味ないんで」
「王妃は私の叔母です。あなたはこの国の国民になりたいとは思いませんか?若いうちは実感はないかもしれませんが、皆、安定した生活を望むものですよ?」
「今は特に困ってませんし、必要ないですね」
「あなたさえ頷いてくれれば、家族揃ってこの国に住めますよ?何でしたら住む場所も用意しましょう」
「あなたに何のメリットが?」
「高ランクの冒険者が国に何人いるかで国の戦力も変わってきますから」
「私は戦争に加担する気はないよ」
「もちろん。神と関係があるかもしれないあなたを戦場になど出しません。逆に、あなたがいれば戦争も起こらないでしょう」
「抑止力って事?たかが目の色が金色だった位で勘違いもいいとこだよ。コンビニだかスーパーだか知らないけど、人一人が居ようがいまいが関係ないよ。私も家族も魔の森から出るつもりはないし」
「じゃあ何故、偽装などする必要が?本当に関係ないなら、そんな高等スキル、取る事もなかったでしょう?」
え?偽装って高等スキルだったの?100ポイントで取れたスキルだけど?…まあでも、自力で取ろうと思ったら、大変なのかもしれない。
「こんな風に勘違いされるのが嫌だからだよ!もう、放っといて!行こう、ユキ」
当分、この国に来るのはやめようかな?ジンギスカンは惜しいけど、面倒はごめんだ。でももし…ルードがあの人と結婚してこの国に住むなら…祝福してあげないと。
亜空間で落ち込んでいたら、ユキが目元を舐めた。
「マニャ…にゃーはずっと一緒にゃ…ルードもマニャが大好きだと思うにゃ。きっと戻って来るにゃ?」
結局私はまた…嫌な事から逃げるしかできないのかな。




