ハズレスキル
また次の日。蟹をたくさんゲットして、30階層に進んだ。
出たのは巨大な鮫。食べ物のドロップは期待できそうにない。
ルードと一緒にホーリーを打って、出現した宝箱を開けた。
ボール?赤と白のこれはもしかして…!
「スキル球か」
「へ?モ○スターボールじゃないの?」
「何それ。ランダムで何かスキルを一つ覚えられるんだよ。ダンジョン産の魔道具で、売れば高値で取り引きされるよ。せっかくだからマナ、使ってみたら?」
「でも私は、スマホで欲しいスキルは取れるよ?面白そうではあるけど」
「開けても欲しくなければ、中の魔石に触れなければいいだけだよ。商品価値は下がるけど、中が気になるし、どうせお金は余ってるし」
一番気になっているのはルードみたいだ。
確かに中を開けるまでが楽しみっていう気持ちは分かる。
なら、開けよう。入っていたのは五感強化というスキルだった。スマホで見た事あったかな?よく覚えていない。
「誰か欲しい人、いる?」
誰もいないみたいだ。確かに何か微妙。なら、売却決定かな?
(外側の容れ物はどうなっているの?中身より小さいよね?)
「空間拡張の付与がかかっているみたい?…ちょ、スカイ押さないで…!」
あー。触ったら魔石が只の石になって、勝手にスキルがついた事が分かった。
自慢じゃないけど、私は目はいい方だ。スマホ読んでる割には悪くなっていない。視力が落ちるのは魔の森では危険だから良かったけど。
まあ、味覚も強化されるなら、より美味しい料理が作れるようになるかもしれない。
あれ…ダンジョンはここまでかな?階段がない。
視覚が強化されたせいか、僅かに周囲より黒い壁が見えた。隠し部屋か?それともダンジョンコアがある部屋か。
「ね、あそこの壁、何かあるっぽいよ?ちょっと見てくるね!」
マナは、壁の向こう側に消えた。その向こう側で眷属達が慌てている。
「あー、ダンジョンコアの方だったか」
(ああ…遂に見つかってしまった)
え?どこから声が?…もしかしてあのコウモリ?
(ダンジョンコアのヒキコーです。神様)
うを?!只のコウモリじゃないな。ヒキコーって、ヒキコウモリ?
(はあ…僕は一人が好きだったのに。でもまあ、神様に見つかったなら仕方ないですね)
「いや、神様じゃないですけど」
(いや。人がこちら側に来るの無理だし。これもダンジョンコアの宿命なのか)
勝手に自己完結してるし。
「何か、見つけちゃってごめんなさい?」
(確かにダンジョンは、人が来てなんぼですけど、出来ればもっと難攻不落にしてから見つけられたかった)
「が、頑張って」
マナは、そそくさと退散した。
「!あ…良かった」
「やっぱり入れなかったんだね?邪魔しちゃ悪いし、帰ろうか」
亜空間移動で帰ってきて、シジミの味噌汁を作った。
「うは…美味しい!繊細な味まで感じ取れる気がするよ!」
ハズレスキルかと思ったけど、意外と大当たり?
でも、寝る前にいつものようにユキに顔を埋めてもふもふして、突然マナが笑い出した。
「どうしたにゃ?マニャ」
「く、くすぐったい!首にもふもふが…五感強化の副作用?!」
このままじゃもふもふできない。大問題だ!
「うえーん!もふもふしたいのにできないー!スカイの馬鹿ー!」
うっかり触っちゃった私も悪いけど、スカイが肩に止まらなければ。
(あぅ…良く分かんないけど、ごめんねマナ)
「何々、鳥がどうしたって?」
「五感強化のスキルだよー!くすぐったくてもふもふできない!」
「それは良かった…じゃなくて、我慢かな?」
ルード、本音がだだ漏れてる。
「うわー、意識したらもふもふ毛布もくすぐったい!」
「あらあら、困ったわね。スキルを切るとかできないの?」
うーん。普通ならスキルは意識して使う物だけど、五感強化は逆なのかな?
「あ、そういえば」
マナはスマホを取り出した。小さい頃はスキルが反転していて使えなかった事を思い出した。スキルをタップすると、反転した。でも、慣れればスマホ無しでもオンオフできるかもしれない。
「よし!これでもふもふできる!」
良かった。もふもふがなかったら、人生の半分は損する所だった。




