鏡
次の日、また沢山ミスリル鉱石を採掘して、今度はミスリルの短剣を作った。
付与は斬撃強化と刺突強化。自動修復とクリーン。
防具は防具台で作成した大人用の防具に、サイズ自動調節を付与したけど、さすがに私サイズまでは小さくならなかった。
仕方なく今作った防具は出荷に廻して、オリジナル作成で小さく作り、サイズ自動調節を付けて上半身用の防具を身につけてみた。
若干大きい気がするけど、私の体もそのうち大きくなるだろう。
道具屋でパン種が売られ始めたので、今日は色々なパンを焼いてみよう。何故今になって?と思わなくもないけど、売ってくれるならありがたい。
クリームパン、ジャムパン等、発酵させている間に中身を作る。
食生活に関しては、ゲームのおかげで不自由なく過ごせているけど、スマホがなかったら生きていられなかったかもしれない。
森の外の世界がどんな感じか分からないけど、きっと今の私の方が良い生活していると思う。
やっぱり異世界定番の中世位だろうか?
パンを沢山焼いて次々に収納庫に入れるけど、空間把握があるから入れ忘れは絶対にない。
光魔法を極めたら、聖魔法を覚えた。上位の回復魔法は殆ど使っていないけど、毎日クリーンを使っていたおかげだろう。
ピュアとクリーンは似ているようでも違う。ピュアは除菌までしてしまうからだ。病院なんかにあるスリッパを除菌したような臭いがわずかにする。
というと、闇魔法の上位がルビー母さんも持っている暗黒魔法なのだろう。闇魔法も極められるように頑張ろう。
人族の魔法とは覚え方が違うのだと思う。スカイもいきなり収納庫を使えるようになっていたし。
そして未だに何も使えない補助魔法。スキル習得みたいに何か条件があるのか、それとも外れか。
ゲーム内から戻り、今日こそはゆっくりとお風呂に入る。
覚えているだけで、4年近くお風呂に入っていない。
生まれた時はどうだったんだろう?どんな経緯で孤児になったのか分からないけど、産湯には入ったと思う。そうして、記憶にも残らないうちに私は捨てられたのだろう。孤児を選んだのは私だけど、ルビー母さんに会う前の私の事、少しだけ知りたくなった。
スカイがまた、ガラクタを拾ってきたようだ。
趣味の悪い指輪とか、ガラスの破片。…!これは…!鏡だ!手の平に収まる位小さな物だけど、どきどきした。
雲った鏡にピュアをかけて、生まれて初めて自分を見る。
薄紫色の髪に黄色…金にも見える瞳。彫りが深く、前世の私の面影はないけど、かなりの美少女だと思う。髪や瞳の色から、何のアニメキャラかと思った。
将来はお嬢様系のキャラになりそうだ。
(マナ、どうしたの?)
(スカイ、この鏡貰っていい?)
(いいよー?僕、マナの役に立てたかな?)
(うん。今までは私、自分の顔を知らなかったから)
(ふうん?それって人には大事なの?)
(大切だよ。自分が分からないって不安だもの)
(今日はボア肉のステーキよ!…あら?)
自分よりも大きなボア肉を引き摺ってきたルビー母さんが、私の手元を覗きこむ。
(あら嫌ね。スカイかしら?)
(え?…私、自分の顔が知れて嬉しいんだけど?)
(マナは、ある方にそっくりなのよ)
(それって、私の両親て事?)
(そうなるのかしら?マナが大きくなって街に出たらいずれは気がつくと思う)
(もしやどこかのお姫様?)
(ふふふ!知りたかったら、自力で森の外に出られる位強くならないとね!)
(ええー…別に知りたくはないよ。私を捨てた人だし)
(とりあえずその鏡は母さんが預かるわ)
(何で?)
(森から出られる位に強くなったら返してあげる)
(意地悪)
(母さんは森から出られないわ。姿を見せたら討伐隊が組まれてやっつけられるかもしれないから)
(母さんは強い魔物なんだね。私は母さんと離れたくないからずっと一緒にいるよ)
人に係わりたくないのに、有名人の親がいるとか、真っ平ごめんだ。




