予感
王都のギルドに戻り、巨大ドクニジマスを出したら、何故かギルマスの部屋に案内された。そしてめっちゃ怒られた。
「まだ期限内だし、いいじゃないですか!」
「そういう問題じゃない!仕事が終わったら速やかにギルドへ報告。基本だろう!大体、何でこんなに小さな子がリーダーなんだ?そこからしておかしいだろう!」
「それはおかしいな。ギルドに年齢制限がないんだから、誰がリーダーでもおかしくない」
「そりゃそうだけど、あんたら家族だろ?兄ちゃんでも母ちゃんでも、やってくれ。子供に何かあった時の責任を負わせるつもりか?」
「ギルドで仕事しているのは、私のわがままなので」
「Aランクが雁首揃えてわがままもクソもあるか!」
「ギルマス、その辺でいいでしょう?それよりも新しいダンジョンの情報を貰わないと。あ、私はこのギルドのサブマスターです」
「情報と言われましても。入り口から30メートル位は息継ぎの場所もないので、何か呼吸を補助するような物がないと難しいですね」
「あなた方はどうやって?」
「結界魔法使えるので、上半身はそれで覆ってあとはバタ足で」
「器用ですね。中の様子はどうでした?」
「ダンジョンに入る階段の前が広場になっているので、楽でした。1階層はグリーンスライムでした」
「なるほど。中は普通のダンジョンのようですね」
「そうですね。サブマスターさんが最初から応対してくれればいいのに」
「怒る役は必要ですから。別に規定違反ではありませんが、仕事が終了したら速やかに報告して下さいね」
「以降は気をつけます」
「それと、新たなダンジョンの発見は、国から褒章が受けられます」
「はあ。何か面倒そうですね。そういうのはいいんで、冒険者だけやってられればいいです」
「え…大変に名誉な事なのですが?王に謁見して、褒美も頂けますよ?」
「そういう権力者は面倒なので」
「ガラン子爵の件ですか。さすがに王はそんな無茶を言うような方ではありませんよ?」
うん。この人が善意で言ってくれているのは分かる。けど、何か嫌な予感がするんだよね。
「新たなダンジョンの発見者として、名前も登録されますし」
「いえ、そういうのは恥ずかしいからいらないです。あの、どうしても謁見てしないとだめですか?」
「そんなに嫌ですか?こちらは冒険者なんですから、服装とか、作法とかでとやかく言われる事もありませんよ?」
あんまり断ると、この人にも失礼か。仕方ない。
「…全員で行く必要はありませんよね?私一人ならいいです」
「ちょ、マナ?」
「構いませんが。もふもふ家族のリーダーですし」
「マナ!変なのに絡まれたらどうするのさ!僕は許さないよ!」
「マニャ一人じゃ心配にゃ!」
「そうよ。そりゃ、母さん達もそういうのは嫌だと思うけど、マナ一人でなんてダメよ!」
「とりあえず、王都に何日か滞在して下さいね。光の勇者という宿が中央通りにありますので」
ぶっ、何その恥ずかしい名前。
ギルドを後にして、ため息をつく。
(急にどうしちゃったのさ?マナ)
(何か嫌な予感がするんだよね。虫の知らせ的な)
(虫にゃ?)
(あー、それは突っ込まないで。不確定な予感的な物だよ)
(先読みのスキル?)
(とは違う。当たるかどうかは分からないし。だからみんな、お留守番してて欲しい)
(僕だけでも連れて行ってよ)
宿はすぐに分かった。立派な佇まいの、高そうな宿なのに、看板が台無しにしている。勇者とか、本当にいたんだろうか?授業では習ってないけど。
話は通っていたらしく、もふもふ家族だと名乗ると、すぐに丁寧に応対してくれた。
通された部屋は広くて、リビング的な所の奥に寝室がある。マナは入り口に人形を置いて、奥の部屋で亜空間を使った。
スカイはまだもふもふ家族のパーティーに入っていないので、影に入れたままだったけど、亜空間で出した。
「ねえマナ、せめて僕だけでも連れて行ってよ。貴族への応対もある程度できるし」
「そうなの?ルードは凄いわね」
「んー。変なのに絡まれた時、頼りになるか…分かったよ。ルードだけね。でも服装とか、これで大丈夫かな?」
「一応あの裾の長いワンピースの方がいいかな?生地は最高級なんだから、そんなに気にしなくていいよ。そもそも僕達は冒険者なんだし」
「いいな。ルード」
「スカイは無理にゃ。にゃーだって我慢してるにゃ」
「ね、お辞儀の仕方とか教えてよ」
学校では貴族への礼の仕方しか習ってない。
「ね、これで合ってる?」
「大丈夫だよ。出来てる」
多分。
これがあったからギルドマスターもあれだけ怒ったんだな。
まあ、新しいダンジョンが発見されれば素材も入るし、冒険者も集まるから経済が動く。国にとってはプラスしかないだろう。
だから王様がご褒美くれるんだろうし。…それだけ、だよね?




