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進化

 卒業後の進路の話になった。私は当然冒険者だけど、ポーラはおばあちゃんにもっと技術を教わって、錬金術師を目指すそうだ。

 ジーナは進級。王都にある中等学校に通うらしい。

 ソーニャは両親と一緒に行商人になる。ならば、と前にダンジョンの宝箱に入っていた手紙のやりとりができる魔道具を一つ渡した。二つ入っていたので、一つは私が持っていれば、この専用のコードを打ち込めば、ギルドからでもいつでも私とソーニャに連絡が取れる。

「ありがたいけど、ほんまにええんか?ギルドにめっさ高く売れるやん」

「その前にマナ、無茶はしてないだろうな?簡易転移装置は、ダンジョンの下層でしか手に入らないと聞く」

「マナちゃん、どこのダンジョンで手に入れたのかは分からないけど、無理しちゃ嫌だよ?卒業後も」

「お兄ちゃんも母さんも、私よりずっと強いから平気だよ」

 ユキの魔法は凄いし、スカイも強くなった。まだスキルに慣れていないし、体の大きさにも慣れていないから要練習な段階だけど。

 

 弟とは言えないみかけだから、母さんが再婚した事にする?って聞いたら、あっさり一言。嫌、と言われてしまった。かといってユキの恋人は、少し無理がある。みかけは10歳以上年齢が離れているし、精神的に子供なユキには、恋人役は適さない。

 なら私は?と聞いたら、スカイ以外に猛反対された。

 立場だけでも、私と特別な関係は許せないようだ。

 確かに今そういう事にしたら、スカイがロリコンの危ない人になってしまう。

 

 普通に他人だけど、スカイのランクが上がったらパーティーを組むという話でまとまった。まあ、その前に人化に慣れなきゃお話にならないけど。

 それと、武器を使った攻撃だね。どの武器を選んでも大丈夫なように一通り置いてきた。あとはスカイ次第だ。


 私も今の状態では、まともな依頼を受けられない。

 その辺の雑魚になら負けない自信はあるし、この前の冒険者実習でも、問題なかった。ただ、ふっと気を抜くと、寝てしまう。もし睡眠耐性なんてスキルがあったら、今なら取れそうだ。

 只の風邪ならここまで長引くはずはないし、眷属達が負担になっているとは考えたくない。


 眷属達にくっついて寝ると少しは楽になるので、夜は毎晩帰っている。

 眷属達も分かっているのか、いつでも誰かはいる。

 今日は珍しく人化したルビー母さんがいたので、抱きついて寝た。羨ましい位に大きな胸にふにふにしたら、ルビー母さんがくすぐったがった。


 明日でもう、授業は終わる。ギルド職員が来てくれて、Dランクのカードを発行してくれるけど、私は要らない。ので、荷物をまとめたらそれでお終いだ。


 普通は家の人が荷物を引き取りに来てくれるけど、収納庫のある私にはそれも必要ない。

 今日の夕方に四人でお別れ会をしたけど、魔道具のお陰で、いつでも連絡は取れる。

 

 こうして振り返って見ると、あっという間の二年間だった。そして、楽しかった。私が学校を楽しいと思うなんて、思いもよらなかったけど、友人達のお陰だ。


 ツリーハウスに戻っていつもの日常が始まるはずだったけど、張り詰めていた緊張感がなくなったからか、体が鉛のように重い。


「マナ、学校が終わるまではサマルト様が体を持たせてくれたけど、マナには進化の眠りが必要だ」

「ちょっと待ってよ。進化って何?それにサマルト様が、どうして」

「マナの進化には、時間がかかるからって。僕達眷属の全員の魔力でマナを包むから、マナは安心して眠ってて」

 ちょっと、ちゃんと説明して欲しいんだけど!


 大きなベッドの上で眷属達全員に囲まれて、全員の魔力を感じる。私はその心地よさに呆気なく眠りに落ちた。


 新年が過ぎて、寒い冬が終わりを告げる頃、ようやく私は目を覚ました。

 夢も見ない程の深い眠りの中、ずっと身近に眷属達を感じていた。

 そうして目覚めて、より深く眷属達と繋がったのを感じた。眷属達も同じように、眷属同士での繋がりが深くなっている。


「ルビー母さん、スカイ、ルード、ユキ…大好きだよ」

 今は、それしか言えないけど、私の感謝の心は充分に伝わっているはずだ。


 私は身長が少し伸びて、小さいながらも均整のとれた体つきになった。胸もちょっとだけ大きくなった。

 まあ、かなりささやかな変化だけど、姿見を見て驚いた。アニメキャラというよりは、アイドルみたいだ。

 眷属達に言わせると、神性が増したっていうけど、私には変わりない。


 亜空間から出ていつの間にか春が来ている事に、驚いた。

「私は、こんなに長く寝ていたの?」

「そうね。飽きて遊ぼうとするユキや、寝てしまいそうになるルードを起こして頑張ったわ」

「なんか…申し訳ない」

「それでも頑張れたのは、マナの為だからよ…母さんも少し寝かせてもらうわね?」

 他の三人は、とっくに夢の中だ。


 久しぶりに体が軽い。ストレッチをしていたら、強い神気を感じた。

「やあ、マナ。私に直接会うのは本当に久しぶりだね」

「サマルト様ですか?」

「そうだよ。進化してマナは神族になったけど、今まで通り好きに生きていい。自由にはいかないかもしれないけど、いつかは私達の仲間として、女神として神界においで。勿論眷属達も一緒にね」

 サマルト様は頭を撫でてくれて、来たときと同じように、唐突に消えた。


 …は?神族?

 ステータスを確認したら、確かに神族になっていた。

 年齢の表記はあるし、完全に神様になった訳じゃないけれど、予備軍的な?ものかもしれない。


 …まあ、私には変わりないのさ。

 いつものように、考えるのを放棄して、眷属達の眠っている亜空間に戻った。



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