トレント狩り 1
ホルアスのダンジョンの町から更に南へ馬車で一日。リト村に着いた。
大きな森の近くの村では、流石に木造の家屋が多い。
村とはいえギルドはあるし、規模は大きいから町と言ってもいいと思う。
けど、村人に言わせると、実は空き家が多く、みんな町に出て行ってしまうから、思った程人口は少ないらしい。
「もふもふ家族の方々ですね?お待ちしておりました。よろしくお願いします」
(ちょっとマナ、その微妙な名前、いつの間に採用したの?)
(いいじゃん別に)
興味なさそうな顔してたから、適当に決めたのさ。
「建材として使われるので、傷は少なめでお願いします。多くても家具として使われるので、なるべくたくさんお願いします。枝葉は今回使われませんので、廃棄でお願いします。エルダートレントが混じっていた場合、一体につき金貨2枚が上乗せされます」
「そもそもさ、そんなにこの森だけでトレント居るの?」
「はい!それはもう!狩り尽くしても何の問題もありませんので!」
「じゃ、早速行こうか」
「お待ち下さい、滞在される間は、伯爵様より森の小鳥亭に宿を手配されていますので、どうぞご利用下さい」
「妥当だね」
マナは、みんなに斧を渡す。
「魔鋼製だから、魔法は通しやすいと思う。スカイは炎攻撃でみんなをサポートして」
(炎使っていいんだね?)
「広範囲はだめだよ?他の場所に燃え移ったら、水魔法で消火してね」
魔力感知を使いながら森に入っていくとすぐ、反応があった。普通の木のふりしてるけど、コブが見えている。高さ2メートル程の所にあるそれに、マナはジャンプして斧を振り下ろした。
枝がザッと動いてマナを振り払おうとするが、スカイの吐いた炎弾に焼かれた。
伸びる根をルビー母さんが糸で切るけど、再生してしまう。
ユキが火の精霊を召喚して根を焼いていくと、再生もしなくなった。
もう一度コブを狙って斧を振るうと、コブが落ちてトレントは沈黙した。
『スキル 斧術を覚えました』
あ。先に取っておけば良かったね。まあいいや。
ルードはその間に別のトレントを一人で仕留めて、枝を落としていた。
「ルビー母さんの斧ちょっと貸して」
元々付けていた付与をキャンセルして、新たに炎を付与する。あとは打撃強化しか付けられないけど、刃こぼれしたらシェービングで研げばいいだけだ。
「魔力を流せば炎が発動するから、それでやってみて?」
マナは、自分の斧にも同じ効果を持たせた。
「ルードの斧にも付与し直す?」
「いいや。火魔法は扱えるから」
「にゃー、硬いにゃ」
「ユキ、太い枝は落とさなくても大丈夫だよ。ユキの斧は小さいから、投げても使えるけど」
「うにゃー当てる自信ないにゃ。魔法で援護するにゃ」
「魔力足りなくなったら私の使っていいからね?スカイも」
眷属になったから、魔力も共有できる。ただ、主の方の魔力が完全に空になると、眷属の方から強制的に魔力が私の方に来てしまう。まあ、神速自動回復のおかげで、そんな事態にはならなと思うけどね。
犯罪者になるつもりも全くないからね。
さて、何しろ数が多いから、サクサク行こう。
本当に、そこら中に居る。他の冒険者とか、地元の人にも依頼は行ってるはずだけど、人力で運ぶには人数が必要だろうな。間引きしててもこの数じゃ、本当に村が呑みこまれそうだ。
斧術を覚えてからは、斧の扱いも少し上手くなった。取りたてスキルだから、大して役にはたたないと思うけど。
午後一杯使って、やっと10本程集まった。
「あ、聞き忘れていたのですが、何本位収納出来ますか?」
「さあ?今10本入っていますけど、まだまだ入りますね」
「凄いですね…申し訳ないのですが、50本程集まったら先に王都にあるギルドに収めてもらえますか?でないと…その、木材にしないとなりませんので。もちろん馬車は、こちらで手配しますので」
「分かりました」
森の小鳥亭はこの村では一番の宿屋で、最初はルードは別の部屋が手配されていたけど、四人部屋にしてもらった。大きさ的には変わらないので、一人部屋がキャンセルされる形になったけど、全然問題なし。どうせ寝る時には亜空間に入ってしまうのだから。
食事の味もいいし、私的にはパン以外は満足だ。
眷属達は、揃って小食になってしまったけど、少しは慣れてほしいな。
わざと気配を抑えて寄ってくる魔物をつまみ食いしてたから、量としては充分だと思うけど、人の姿で生食しないで欲しい。他の冒険者に見られたらどうするのさ。




