死にたかった私が、思わぬ大活躍?
新連載始めました。
今回はのんびり書いていくつもりです。
宇賀神愛美は、現在中学3年生。それなりに整った容姿はしているけど、表情は暗く、前髪も目を覆う程長い。
後ろの髪の長さがバラバラなのは、クラスメイトに切られたせい。
虐めは小学校高学年から始まった。仲間外れやからかいの言葉。それは中学校に入ってから更にエスカレートした。
靴を隠されたり、私物を捨てられたりは日常茶飯事。先生に言っても何も変わらなかった。
暴力を振るわれて、踵で手を踏まれて手の骨にひびが入った時は親が学校に乗り込んで大事になったけど、虐めはなくならなかった。
むしろ服の下など目立たない所に傷が増えた。シャツの上から痣になるほどつねられたり、背中を蹴られたり。
学校も休みがちになったけど、不登校にはさせてもらえなかった。
親が厳しかったのもあるけど、ならクラスメイトの通えないような高校に進学しろと言われたせいもある。塾に通うのに、スマホも買ってもらった。
密かにゲーム好きな愛美は、作物を育てたり、家畜を育てたりするゲームをやっていた。
それとネット小説を読むのも好きだ。それが気晴らしにもなっていたけど、…今は、それすらどうでもいい。
愛美には好きな人がいた。隣のクラスの、陸上部の長距離をやっている人で、素朴な顔立ちだけど、笑顔がすてきな人。
けど、走っている姿を時々見ていたせいで、私の気持ちはバレてしまった。その人は、私の事を虐めていた人と付き合ってしまった。隠れてキスしていた所を見せられて、流石に心が折れた。
もう…いいや。
遺書代わりに、私を虐めていた人達の名前を全部書いて、スマホとカッターを持って家を出た。
もうすぐ夏になるのに長袖なのは、痣やリストカットの跡を見せたくないから。
コンビニに寄って、ちょっと贅沢なスイーツを買う。
お金を払って出ようと思った時、包丁を持った男が現れた。私を人質に、店員にお金を要求した。
丁度いい。一つ位社会貢献してから死のう。
愛美はポケットからカッターを取り出して男の包丁を持った手に切りつけた。慌てた男が、私を突き飛ばして私に馬乗りになり、お腹を包丁で刺した。
最後の反撃に、お腹から包丁を抜いて、男の利き腕に包丁を力の限りに刺した。
躰から、大量の血と体温が失われていく。周りから私に呼びかける声が聞こえるけど、声が遠い。
やがてサイレンの音が聞こえてきたけど、私は助からない方がいい。けど…生クリームたっぷりのプリン、食べそこねたな…。
気がつくと、私は真っ白な空間にいた。その先に、広い川が流れている。三途の川かな?私…死んだんだ。あの川を渡ると、死後の世界に行くのかな?
立ち上がり、引かれるように川に近づく。
「ちょっと待ちなさい!宇賀神愛美」
振り返ると、天使がいた。
「私はアカトリエル。審判の天使よ。とりあえず落ち着いて話をしましょう」
無機質な空間に連れてこられて、椅子に座った。室内はほの暗く、幾つかの家具も見えた。
「まずはお礼を言わせて頂戴。あなたのお陰であの男の利き腕は再起不能になった。
今でこそコンビニ強盗なんてケチな事をやっているけど、そのままにしておいたら大量虐殺をする男になっていたの。利き腕を奪われて、その未来も変わった」
「怖いですね」
「でも、あなたも寿命前に死のうとしてたでしょう?それはいけない事よ」
「でも…私」
「でもじゃないの!自殺はどんな理由があろうと地獄行きなの!…あなたにはうか様の加護があったし、善行をして死んだから、こうしてここに呼んだの」
「うか様?」
「あなたの一族は、うか様…お稲荷様って分かる?」
「狐が神様の神社?」
「おきつね様は、うか様の御使い。とにかくあなたの一族は、代々うか様の神官をしていたの。苗字にそれは現れているわ。善行もあるし。だから特例として、すぐに転生させてあげる事にしたの」
「私…生き返りたくないです。もう、人付き合いは嫌」
「なら、地球じゃなくて、異世界に行く?そういうの好きでしょ?」
確かに魔法とかに憧れはある。でも結局人間関係で失敗したら、同じじゃないかな。
「そうね。あなたの要望は伝えるわ」
アカトリエルは、どこからか紙を取り出した。
「あなたの善行をポイントに変えて、同じ条件で転生させてあげるわ。人のいない所にね。気が変わったら街に出るのもいいと思うけど、好きにできるようにしてあげるわ」
紙には、魔法とかスキルが沢山書かれている。それと数字。
強制異世界転生なのかな?一人で生きられるなら、それもいいかな?
まず名前か。漢字はなく、カタカナ表記なので、ミを取ってマナにした。ゲームでたまに使う名前だ。
魔法は使いたかったので、全部入れた。
「あの、このスマホ持ち込みって、いいんですか?」
「一番あなたが執着してたのが、そのスマホだったから。ただし通話や書き込みは無理よ?見るだけなら問題ないように、転生先の神様に言ってあげる。ただし、それだけでポイントの半分は持って行かれるわ」
書いてあるポイントは、100000ポイント。スマホに50000ポイント持って行かれるけど、動くなら持って行きたい。小説も読みたいし、ゲームもやりたい。
ポイントは、魔法一つで200ポイント。更に上のレベルに上げるのは500ポイントかかるけど、上げるつもりなので、初期レベルだ。これだけで2800。更に鑑定と夜目、魔力視が合体したスキル、魔眼で2000。魔物がいるらしいので、鋼の槍を手に入れた。これで5000。
他に索敵や解体、状態異常耐性、物理耐性、魔力操作、錬金術や鍛冶、気配隠蔽で2700。テイムスキルは一つで1000かかったけど、動物と仲良くなれるならと手に入れた。
残念ながらアイテムボックスは無かったけど、仕方ない。
あとはステータス。特に運に振って、終わりにした。
「孤児でいいの?ポイント調整して貴族とかの方が良い暮らしできるわよ?」
「何のしがらみもない方がいいから」
「寂しい人生ね。まあ、ちゃんと伝えてあげるわ。あとは転生先の神様次第な所もあるけど、そこは仕方ないと思って」
「お願いします」
「運だけで幸せになれるかは分からないけど、次は寿命まで生きてね!」