やせっぽっちの焼肉戦争
まじの駄文
やぁ、皆さんこんばんは。
私は普通の高校生だ。
身長175cm 体重 53kg でガリッガリであることを除けばだが......
そんな私は運動部に入っているが、如何せん線が細すぎるとの理由でベンチ外になってしまった。
私は猛烈に悔しかった。
だから食べた。食べに食べた。
たとえこの胃がはち切れようと決して箸をとめずに詰め込んだ。
吐き気と戦い、吐かぬように吐かぬようにと精神をすり減らした。
そんな生活を続けていたある日。
私に試練が訪れる。
それは、部内栄養会in焼肉食べ放題!
焼肉食べ放題とはリーズナブルな値段で肉をいくらでも食べられる実に素晴らしいものだ。
もちろんここでも私は食べまくるつもりだが、それだけではない。
ここには私の宿敵がやってくるのだ。
その名も「ちゃんと飯食ってるかおじさん」
やつは休みの日限定のコーチなのだが、毎回会う度に細い私を見ては、ちゃんと飯食ってんのか?ひょろひょろだな!小枝みたいだ!
と大笑いする、正に天敵。
それからというものスーパーに行くたびに「お、小枝買わなくていいのか?」
と菓子売り場で馬鹿にされている。
この屈辱は筆舌に屈しがたい。
私はこの恨みと怒りを一時も忘れたことはない。
絶対にこの焼肉食べ放題で目にものを見せてやる......
いよいよ決戦の時だ。
この店はタッチパネル式で席から注文する。
私は流れるような操作で肉を注文していく。
だが、ここで問題が発生した。
なんとチームメイトが飲み物を注文しだしたのだ。
かかる注文数制限。
思わぬ伏兵に遮られる注文。
この焼肉は自分との戦いだ。
そう思っていたが、認識を改めなければならないようだな。
一度、深呼吸をする。
OK、小分けに注文すれば良いのだ。
頭で完璧な肉の流れを考える。
よし、これで完璧だ。俺の勝ちのようだなコーチ。
勝利を確信した私は笑みを浮かべタッチパネルと向き合う。
そこに映し出されていたのは、鮮やかにサシの入った肉ではなく、この店のマスコットキャラクターが「申し訳ございません、ただいま注文が混雑しております」と深々と頭を下げているイラストだ。
なんでだ、もっと頑張れよ。バイト!!!!
ちらりと横を見るとコーチは肉をバクバクと頬張り美味しそうに喉を鳴らして生ビールを飲んでいる。
このままではまずい。とにかく少しでも食べなければ、箸を持ち自分のテーブルを見ると、網の上にはウユニ塩湖のような美しい平面が広がっていた。
「お前が注文終わるの待ってたんだよ〜。さ、焼くか〜」
なんということだ。
時として優しさは他者を傷つける刃となりうるとはこのことか。
コーチは二皿目に突入している。
まずいどんどん突き放されている......
焦燥が私を襲う。
仕方がないな。この手は使いたくなかったが…....
私はタッチパネルで大量注文するとおもむろに席を立った。
そして隣の席に行き笑顔を見せて「いらない肉とかない?」
と聞いた。
彼らは面食らったようだが焦げた肉や頼みすぎたホルモンなどを乗っけてくれた。
私はこれを全ての席で行った。
そう、これこそ私の最終手段、残飯処理である。
自ら残飯処理係に成り下がることで少しでも量を稼ぐプライドの欠けらも無い作戦だ。
だが、これにより私は一気に食事のペースをあげることに成功した。
それに加え、全席をまわり終えた頃には大量注文した肉も到着し、勝利は確実は目前のよう見えた。
だが、ここで最大の誤算が発覚する。
それは、満腹中枢の限界である。
今までは迅速に食事をとることによって満腹中枢に信号が達するまでは無敵時間のようにいくらでも食べることが可能だった。
だが、今回のケースは全席を周回して食べたため、無敵時間にドカ食いすることが出来なかったのだ。
くっ、どうする。
もうこれ以上食べるのは不可能だ。
どうすればいい。必死に突破口を模索する。
向こうを見ると心無しかコーチはこちらを見てニヤリと笑っているように見えた。
負けたくない。そう強く思った。
もうこうなったら、精神力で詰め込むしかないだろう!
私は食べた。いつも以上に食べた。
限界などとうに超えていた。
いつの間にか部員達は皆、私の応援をしている。
そして、ついに私は最後の大皿を食べ切った。
最後の肉を放り込むと同時に右の拳を大きく振り上げた。
大きな拍手が巻き起こる。
どうだ、これでもう私に「ちゃんと飯食ってるか」とは言えないだろうコーチ!
勝ち誇った顔でコーチを見ると彼は僕に向かって
「そんな食ってるのに太らないとは病気だな!」
と痛烈に言い放った。
そんな馬鹿な。
心境はまるで右のカウンターを顎に貰ったかのようである。
結局、私のあだ名は「小枝」のままで、なんなら形容詞に「永遠の」が付いた。
私はまたもコーチに辛酸を舐めさせられてしまった。
これからも私が汚名を濯ぐまでコーチとの仁義なき戦いは続く。
ぜひ、「無価値な彼女と無関心な僕の物語」の方もよろしくお願いいたします