無題12
窓ガラスが溶け始めていた。部屋が歪み始めていた。
空間が圧縮されると、大気が薄い場所も出てくる。空気は既に無色ではなく、紫色の毒だった。
ベッドは小さく燃えていた。確かな熱量をもってそれは呼吸していた。まるでそこから血が噴き出しているように。
あらゆるものが膨張と収縮を繰り返していた。椅子、リンゴ、壁、ドアノブ、冷蔵庫、空気、書籍、無地の紙、カーテン……。それらは苦しそうに動き回り、発狂しているようにも見えた。フライパン、ジャケット、ティッシュ箱、CDケース、目覚まし時計、そんなものも内部と外部からの力に耐えきれず激しく変形し、汗を流すかのように色がドロドロと溶け出していた。
それらから流れ出した液体はでこぼこになった床に集まり続け、汚い色になった。
部屋の歪みが止まることはなかった。