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第2話 授業を受けよう

 翌日、冒険者学校の演習場にて。


「全員準備はいいか!?

 昨日説明したとおり、お前らには同室の者と戦ってもらう。

 武器は何を使ってもいいが今回は魔法は禁止する。もちろん補助魔法も含めてだ。

 純粋に身体能力と技のみで試合をするように。

 それでは……始め!」


 デリフォルムのおっさんの合図で生徒達は一斉に動き出した。

 俺の前にいるのは木製の短剣を両手に装備したアゼル。防具は学校の備品の革製の胸当て、膝あてである。

 俺は平凡な木剣。

 

 さて、リーチは俺の方が圧倒的に有利。

 力は……あまりあるようには見えない。

 スピードはわからんが、短剣を装備するくらいだ。ある程度自信があると見ていいだろう。

 

「……シっ!!」


 気合とともに、俺は正面から一気に間合いを詰めて、倒す気はあるが全力ではない上段攻撃を見舞う。

 アゼルは俺から目を離さず後方に跳んだ。

 俺の剣は空を斬るが、気にせずさらに踏み込み左下から斜めに斬り上げる。

 

「くっ!?」


 アゼルは俺の斬撃を短剣を交差させ受けた。


 いい反応してる! だが、あまい!

 一発ぶち込むぜ!!


「うらぁ!!!」


 俺は短剣による防御をものともせず、そのまま木剣を振り切った。

 大きく態勢を崩すアゼルを追撃する。

 狙うはアゼルの左脇腹。

 これもアゼルは短剣で受けようと反応している。


 やるなぁ。でもそいつは囮!


 俺はアゼルが受ける前に剣を手放し、素早く顔面に右ストレートを入れる、直前で寸止めした。

 戸惑うアゼルは、しかしすぐに状況を飲み込み両手をあげた。


「……はぁ。参った」


 っし、勝利!


「うーん、僕も速さには自信あったんだけどなぁ……ベネットには負けるね」


「へへへ。アゼルも結構やるじゃん! 2回目の斬り上げは本気だったのに防がれるとは思わなかったぜ」


「あの踏み込みの速さは驚いたよ。力もあるみたいだし、これは体術だと厳しいなぁ。演習のときは素直に頼りにさせてもらうよ」


「おう、任しとけ!」


 その後は、別の生徒と2戦したが両方勝った。

 アゼルも他の2人には勝ったようだ。


 ……どうやら俺はひよこハンターの中では結構強いみたいだ。

 過去、文字通り死ぬほど鬼爺にしごかれたしなぁ。

 糞爺は、「この程度で根を上げるとは片腹痛いわ!」とか毎回言って俺をボコボコにしてたけど、やっぱりあの修練って傍から見れば大分イッちゃってたんだろうなぁ。

 



 試合は一段落して、今度は魔法の試験だ。

 10メートル程離れた場所から的に向かって魔法で攻撃するという、実にシンプルな内容だった。

 魔法の種類はなんでもOK。的を敵だと思って攻撃せよとのことだった。

 魔法の使える生徒達は次々と的をフルボッコにしていく。


 的がボロボロになっていくのを、俺は数少ない魔法使えない組と共に座って眺めていた。


「やっぱ魔法つえーなぁ。魔物を狩るときは特に頼りになりそうだぁ……」


 呟くと、それが聞こえたのか隣に座る少女が俺の独り言に返答した。


「羨ましいわね。私もこの学校にいる間に攻撃魔法をひとつでもいいから習得したいわ」


「だなぁ。牽制にだって使えそうだし。ってうおおお!」


 いきなり的がボォッと激しく燃え上がり跡形もなくなった。

 放ったのは小さな茶髪の女の子だった。


「すげぇ火柱だったな今の! あんな小さな子どもなのになぁ!」 


「……本当。私もうかうかしてられない」


 悔しそうに言う少女に大きく頷いて同意する。


 ちっくしょう、なんで俺は魔法使えないんだ!

 いや、魔法が苦手な爺の教え方がよくなかったのかもしれない。

 学校にいる間にどうにか覚えたいぜ! ていうか絶対覚えるぞ!! なんてったって超かっこいいしな!!


「おい、お前!」


「ん?」


 俺が熱く決意を新たにしていたら、いつの間にか小さな女の子が目の前に立っていた。

 なぜか仁王立ちをしている。


「あ、さっきの魔法の。お前子どもなのにすげぇな!」


「だれが子どもだ! 私はもう成人している!! 16歳だぞ!!」


「え?」

 

 ホントに? 年上?

 だって身長なんて俺の首くらいだし、どことは言わないがつるぺたーんとしてるし……。


「……お前が何を考えているか当ててやろうか」


 笑いながら右手に炎を生み出す幼……成人女性。


「ちょ、待て待て待て!! わかった俺が悪かった申し訳ありませんでしたー!!!」


 普通にシャレにならないので平に謝った。


「……次はないからな!」


 炎をまとった手でびしっと指さされて言われてから、成人女性は去っていった。

 どうにか許してもらえはしたようだ。


 思わず安堵してため息をつくと、となりの少女が笑った。


「私、あの子と同室」


「そりゃ……羨ましいけど羨ましくないな」


 俺の正直な感想に少女はまた笑った。

 と、少女が指を差す。


「ほら、君、彼を見ておいたほうがいいんじゃないの?」


「ん……おお! 次アゼルじゃんか!」


 ちょうどアゼルが魔法の準備を始めたところだった。

 ていうかいつの間に燃やされた的直ってたんだろ。仕事早ぇな先生。


 俺がどうでもいいことを考えている間にも、アゼルは右手を前に出して、


「フリーズ・アロー!」


 5本の矢を生み出して斉射し、そのすべてを的に命中させた。


「へぇ」


 隣から感嘆の息を漏れる。


「すごいわね、彼」


「……だなぁ」


 今まで見ていた中では、矢を生み出して攻撃する魔法は単独か多くて3本ってところ。

 矢の速度も見てから十分かわせる程度のものだった。

 それがアゼルの魔法は本物の矢と遜色のない速さだった。

 何よりも、魔法を発動させるまでの時間が他と比べてかなり短かった。


 こりゃあ、魔法ありで戦ったら結構厳しいな。

 開始の距離によっては一方的にやられて終わるかも。

 やっぱり魔法強いわ。

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