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最終話 これからを始めよう

 オーク、ブルベアーの討伐から二ヶ月近くが経過した。

 討伐の報酬だが、これは全員で話し合って、応援にかけつけてくれたハンター達にギルドを通して分配することで同意した。

 彼らにとったらはした金だろうが、今回の件をそれぞれ戒めとして真剣に受け取るため俺たち自身が金を得ることはなしにしたのだ。

 また、あのとき多くのハンター達がオークを狩り(残党がまだまだいたらしい)、あれ以来オークが旅商人たちを頻繁に襲撃するようなことはなくなったそうだ。

 結局のところ、なぜオークがあれだけ発生していたのかはわからずじまいだ。


 冒険者学校では、俺は基礎体力の向上を始め、デリフォルムのおっさんから俺に合った剣技や体術について学び、同期を相手に対人戦の訓練にも励んだ。もちろんデリフォルムのおっさんが空いているときは、積極的に挑ませてもらった。

 おっさんはガタイの割に技のキレもあり、力負けするだけでなく勝負としての質でも俺は圧倒された。全盛期は確かな実力のあるハンターだったのかもしれない。


 魔法の練習にも取り組んだ。

 ……と言っても、リーゼがひたすら俺の魔力で魔法を使うだけなので俺は何もしていないに等しいのだが。

 これに関してはリーゼも数をこなすことで俺の魔力にも慣れて、ヒールだけでなく簡易な補助魔法や攻撃魔法も扱えるようになった。

 

 冒険者学校に入ってから、間違いなく一番真面目に修練に取り組んだ。

 俺は少しは強くなれたのだと思う。


 そして、学校の卒業の日が間近に迫るころ、俺は部屋にクレアとレティを招いた。


「二人は卒業後のパーティは決めてるか?」


 内心結構心配しながらも俺は本題から入った。

 ここ最近、俺は平時の授業後はもちろん、休日もギルドの依頼を受けずに自主訓練することが多かった。

 クレアやレティが俺の訓練に付き合ってくれることもあったが、一応訓練は真面目に取り組んでいたため訓練以外の話をすることは以前より減っていた。

 それで関係が悪化した、などということはなかったが、冒険者学校を卒業した後に二人がどうするかなどは聞きそびれていた。


「とっくに決まっているが、それがどうかしたのか?」


「え…………あ、そうですか。決まっておりましたか……」


 訓練に明け暮れて卒業後のパーティメンバーについては完全に頭から外れていて、最近になってようやく二人を誘い忘れていたことに気がついたのだ。

 まぁ学校の中ではアゼルを除いて一番話すし、たぶんOKもらえるだろうな的ノリだったのだが、ものの見事に粉砕された。

 よくよく考えてみれば、同期の中で二人の実力が突出しているのは明らかだし、性格的にもさっぱりしているから引く手があって当然だった。

 それとも、学校外のパーティに加入する予定なのかもしれない……。


 ずぅんと落ち込んでいる横で、アゼルが続けて聞いた。


「拠点はどうする? どちらかと言えば僕は街を出たいと思ってるんだけど……」


「私はどちらでも。ただ学費を借りている身だから、その支払いが終わるまでは別の街に行くことはまだしも他の国に移動はできないわね」


「ああ、それは僕も同じだね。でもきっとそれほどかからずにお金は返せると思うんだよね。

 ギルドの依頼をこなせば、貢献度に応じて額も減っていくんだし」


「まずはハンターとしての地盤を築くべきではないか。

 この街であれば多少知り合いもできたが、それほど多くはないだろう」


「フレアファストの街は確かに小さくはないけれど、今後を見据えて活動していくには物足りないんじゃない?

 一時的にこの地を拠点としてハンターとしての依頼に慣れる、って意味なら賛成かな」


「いきなり知らない街で地理を覚えて手探りで依頼をこなすよりかは、こちらである程度経験を積む方がいいわね……」


「ベネットはどうかな? 慣れないうちはこの街でやっていくってこと」

 

「……いいんじゃねぇの」


「なんだその気の抜けた返事は! 私たちのパーティのことだぞ! 真剣に考えろ!!」


 ゆーて俺関係ないし。

 まぁ、友人のパーティは大事だけどさ。

 ていうかアゼルも入ってるのかよ。

 俺だけ仲間ハズレなの? なにそれ死にたい。


「ヌシ、なにか勘違いしておらぬか? 

 ……アゼルよ、お前たちのパーティメンバーを挙げよ」


「はい? ……僕とアル、ベネットにレティにクレアですけどそれがなにか?」


 え?


「もしかして、もっと人数を増やすべきだということでしょうか?

 しかしリーゼ様の存在や僕とアルの禁呪のこともあります。

 事情を知らない人をパーティに入れるわけにはいきませんし、話せる人は限られますので少数にならざるをえないのです」


「冒険者学校の卒業生だけで組むパーティとしては少ないわね。大抵は8人以上になって、足りない戦力や経験値を数でカバーするから。

 現役のハンターとコネがある人は気にする必要はないわね。

 中堅ハンターのパーティが見習い兼雑用係として若いハンターを募集している場合もあるけど……」


「あれこれ命令されるのは私の性には合わんな!」


「…………なぁ、そのパーティっていつのまに決まったの?」


「「「は?」」」


「いや、うん、いい、なんでもない!」


 3人の今更何言ってんのこいつ感でようやく悟る。

 いつ話したのかしらんけど、どうもこの4人+1人のパーティは決定事項らしい。マジ安堵だよ。

 つか、平然と流されてたけどいつの間にクレア達にアゼル達のこと話してたんだよ。


「修練もよいがほどほどにせんとな。周りの者に取り残されるぞ」


 リーゼの呆れた声に、俺はぐうの音も出なかった。

 



 こうして俺は無事冒険者学校を卒業して、学校での評価と今までのギルド依頼の達成によりDランクハンターとなった。

 アゼル、クレア、レティも同様である。アルはEランクだが、間もなくDランクに上がれそうだとのことだ。


 そして俺たちはパーティ『翠の羽』を結成した。

 さて、最初の依頼は何にするかなっと。


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