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第18話 聞き込みをしよう

 俺たちはフレアファストの街を出て、トラットリアの森の脇を抜けて歩く。

 目指すは北西方に位置するメイストの村。

 村までは徒歩で2時間程度と、街からはかなり近い場所に位置する。

 なんでそんな場所に村を作ったのかと思っていたが、どうやら歴史はフレアファストの街よりもあるらしい。

 基本的に自給自足で生活しているらしいが、旅商人が定期的に立ち寄っているようでそれなりに物流もあるようだ。


 メイストの村に到着し、とりあえず人の集まりそうな酒場へと向かう。

 昼過ぎの時間帯だからなのか、酒場にはあまり人がおらず店内はのんびりとした雰囲気だった。

 奥のテーブルには、俺たちと同じハンターと思われる数名が談笑している。

 カウンター奥には、年配の男性店主と思われる者が椅子に座ってくつろいでいた。

 俺たちはそれぞれ軽く食事を頼んで、オークについて話を聞く。


「オークねぇ。

 実を言うと、ワシらには直接被害らしい被害は出ていないんだ。

 村の外れで飼っている羊が襲われたらしいんだが、オーク自体は誰も見ていない。

 同時期から旅商人の団体が襲われ始めているから、羊の件もオークではないかということだ。

 旅商人の方についても、他国から護衛していたハンター達が不意をつかれて負傷したくらいだしな」


 代金に少し色をつけて払うと、店主は快く俺の質問に答えた。


「じゃあ村としては全然困ってないんですか?」


「今のところは、な。

 このまま放っておいたらいずれ村の人間や建物に被害が及ぶ可能性は十分ある。

 だから領主様が討伐依頼を出してくださっているのは、ワシらとしても望むところなんだよ。

 こうして君たちのようなハンターさんも訪れることがあって村も賑わうしね」


 ニヤリと笑いながら、なぜか器用にウインクする店主。

 普段から練習でもしているのではないかと思えるくらいの練度だ。

 暇なんだろうか。暇なんだろうな。




 俺たちは酒場を出て、あてもなく村を歩き回る。

 村の雰囲気は非常にのどかであり、オークに怯えてるような状況は微塵も感じられなかった。

 

「オーク討伐の依頼って領主様が出してるんだよな?」


「そうよ。さっきの話にもあったけれど旅商人に対して害が及んでいるのは間違いないようね。

 村の問題でもあるのでしょうけど、街全体を管轄する領主としては通商に問題が出るのは避けたいでしょうから」


「領主様が依頼を出すのは理解できるけど、ずっと依頼が出たままになる状況の理由はわかんないねぇ。

 討伐してもどんどんオークが出てきちゃうのはなんでなんだろ」


「……私が思うに、これ以上考えても答えは出ない気がするぞ。

 あとは村長に聞くなりして、それでもわからなければひとまず討伐の依頼を達成に行かないか?」


 クレアの言うことはもっともかもしれない。

 そも、簡単にわかるようならハンター間で噂になっててもおかしくないか。


 その後、俺たちは村長の元を訪れたが有力な情報は得られなかった。

 そんなわけで、とりあえずオークの討伐を果たそうと村近くの森に入ったのだった。




 ◇ ◇ ◇




「そっち1体行ったぞ!」


「問題ないわ」


 レティが素早く弓を射って見事にヘッドショット。オークが倒れる。

 今日のレティは標準の弓なので、連射はできなくても威力には期待できそうだ。


「べネット! 伏せるのだ!!」


「あいよっ!」


 クレアの指示で俺が伏せると、すぐさまアルが魔法を発動させた。


「ウインド・カッター!!」


 すぱぱぱぱーんとオークの首が舞う。

 これで、ここら一帯のオークは倒せたようだ。


「皆お疲れ様。ええと……全部で7体か。成果としては十分だな」


「うむ。オーク狩りなら任せておけ!」


「自分たちで調査しててなんだけど、このままオークを討伐できた方が私たちは安定した収入を得られそうね」


 レティは部位を剥ぎながら不穏な感想を漏らす。

 そのとおりすぎて同意しそうになる。

 まぁいつかはオークの数も元に戻って、以前のように常時討伐対象に戻るんだろうけど。


 皆に混ざって俺もオークの耳を取っていると、袖を引っ張られた。アルだ。


「ねぇねぇ、ここから街道まで近くだよねぇ。商人が襲われてるのってまだ続いているのかなぁ」


「そうじゃねぇか?

 もう襲撃が起きてないなら依頼も取り下げられてるんだろうし。

 いよいよとなれば、大規模討伐のクエストでも入るんじゃないのか?」


「ギルドがこの事態をどの程度重く見ているかによるわね。

 一度大規模討伐が発令されれば、収束に向かうのは間違いないでしょうけど」


 大規模討伐とは、その街にいるハンターが半強制的に受注することになる討伐依頼だ。

 大量に発生してしまった魔物を一気に討伐するときや、強力な魔物を討伐するためにパーティの枠を超えて協力する必要があるときにギルドから課されるものだ。

 例外となるのは、負傷したハンター、討伐対象者よりも3ランク以上ハンターランクが低い場合くらいだ。

 保証金を支払って自分の都合を優先させることもできるが、他のハンターやギルド職員からの覚えが悪くなるのであまり使われない制度だ。保証金もかなり高額らしいし。


 クレアは大規模討伐が課される可能性に否定的なのか、訳知り顔で話し始める。


「今オーク討伐を受けているのはDランクパーティがメインで、一部のCランクとEランクのパーティが少しといったところだな。

 現状は大規模討伐が組まれる予定はないだろう。

 商人等に被害が出ているといっても、護衛のハンターだけであれば特段に警戒するほどでもない。

 村人たちに被害が出るようであれば話は変わってくるだろうがな」


「受注してるハンターの層知ってるのかよ。

 俺たちに声かける前からクレア達は調べてたのか」


 なんだか意外だなぁ。

 俺はアルの思いつきに乗っただけなんだが、クレア達の方は力を入れて動いているのかもしれない。


「ギルド職員や、他のハンターに聞いた程度だけどね。

 私たちが聞くよりもアルに聞いてもらったほうが情報は手に入りそうだけど」


 確かに。

 アルならば街のハンターにモノを聞くにはうってつけだ。ほいほい答えてくれるだろう。

 でもいらん話も多そうだしやっぱりレティの方が適役な気がするな。


「とりあえず一旦村に戻ろうよ。ほらほら新鮮なオークだってあるんだし! 持って帰って酒場のおじさんに調理してもらおう!!」


 オーク肉はとにかく、一度村に戻るのは賛成だな。

 ちょっと休息して街に戻れば大分いい時間になるだろう。


 部位の剥ぎ取りもできたし、さて戻ろうかというタイミングで、リーゼが俺から少し離れて森の奥をじっと見ていた。


「どうした」


 小声で声をかけると、リーゼは俺の肩に戻ってきた。


「他の緑精がざわめいているのだ。奥が騒がしい」


 初めて聞く真剣な声色に緊張が走る。


「胸騒ぎがする。ベネットよ、気をつけろ」


「……おうよ、と言いたいところだが、ちょっとばかり遅かったかもしれねぇな」


 リーゼの警告に神経を尖らせると、俺は森の奥から漏れ出る気配に気がついた。

 それは数体程度ではない。

 大量の魔物の気配がいくつもいくつも連なって感じられた。

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