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第17話 撃退しよう

「そんな感じでゴブリン狩りの成果は上々だったな。

 ザムディンさんとも親しくなれたし思った以上にいい演習だったなぁ。

 ホントあの人、いい人だったぜー」


 冒険者学校の休日。

 ギルドでアルを見かけて思わず喫茶店に連れ出して、店の外に並べられた席で俺は先日にあった演習での話をしていた。


「うん。ザムディンさんはいい人だよね。うん。私もそう思う」


「アル……?」


 アルの反応は微妙だ。


「はははは……実は前に一度だけパーティに入れてもらったことがあるんだけど、その時に気に入られちゃったみたいでね。

 好きだとか付き合ってくれとか言われたわけじゃないんだけど、どうにもこうにも……」


 な……アルの歯切れが悪いだと?

 つか、ザムディンさんがアルを?

 いやぁ、ないんじゃね。とは断定できないか。

 伊達にエルフじゃないからなぁ、外見は完璧と言っても過言ではない。

 年齢の差が、といってもむしろアルのが全然年下に見えるか。


「ザムディンさんがアルをどう思ってるかは知らんが、アル的にはないのか?」

 

「えぇぇ、だっておじさんだもん。ないよー」


 これが65歳ババァのセリフである。なんという棚上げ。

 いや外見年齢で語られたらしょうがないのかもしれんけど。


「あ~ぁ、私の勘違いだったらいいんだけどなぁ……」


 アルはそう言って机につっぷしてしまう。

 どうやら本当に困っているらしい。

 なんだか気の毒に思えてきてしまったぞ。ザムディンさんが本気だったらあの人のがもっと気の毒だけどさ。


「はっ。このエルフは見る目がないのぅ。

 あのしなやかで強靭な肉体を見て惹かれないとは。

 鎖骨付近なぞ垂涎ものだったではないか!」


 俺の頭にのってるリーゼが力説する。

 しかし当然だがアルには聞こえていない。

 リーゼに関しては学校卒業後、折りを見て話をしようと思っていた。

 レティだけなら問題なさそうなんだけど、だいたいクレアといつも一緒にいるからなぁ。

 クレアはなぁ、せめて学校にいる間はやめといたほうがいいよなぁ。


「ベネットよ。こやつはダメじゃな。趣味が合わぬ。

 レティを呼べ。あやつはわかっておるからな」


 マジかよ、レティ筋肉マニアなの?

 聞いてしまうと納得できそうだけど衝撃!


「ザムディンを見るときに熱が篭っておったわ。

 あれこそ正しき乙女の反応というやつよ。純然たる力に惹かれるのはいつの時代も共通認識じゃ」


「今度会ったら聞いてみてぇな。でもレティだしな、素直には言わんか」


「……レティちゃんがどしたの?」


 はっ!? ついリーゼに返事をしてしまった。


「いやな、レティがもしかしたらザムディンさんを気に入っていたのかなぁってね。

 演習のときの様子を思い出してみると、ちょっとそんな感じがしないでもないかなぁって」


「レティちゃん、おじさん系がいいんだぁ。

 うーん、二人が並ぶといけないワケあり感が凄そう」


「お前なぁ……まぁわかるけど。すげーわかるけど」


「でしょでしょ! レティちゃんは年の割に大人っぽいけど、ザムディンさんと比べたらねぇ」


 倍近く年が離れてるのだからそれは仕方ないだろう。

 一瞬親子かな? と思われても、レティが年齢以上に落ち着いているのが相まって、余計不健全な状況にしか見えない。


「俺がどうかしたか?」


 うお!? 

 なんと、噂の当人ザムディンさんから話しかけられてしまった。

 まぁここは往来に面した場所だし、当人に見つかってもおかしくないのだが、すごい偶然だな。


「おお!! 筋肉の君ではないか!!!」


 物凄いあだ名をつけるリーゼ。

 これで好意100%なのだからたまらない。お前マジ黙ってろ。


 俺は立ち上がって軽く礼をする。


「いやぁ、この前はお世話になりまして……という話をしてまして。

 ザムディンさんはこれから仕事に?」


「ああ、今から魔物の討伐に出てくるところだ。

 君たちの姿を見ていて、俺も負けてられないと思ってな」


 ひよっこパーティを見て初心でも振り返ったのかな。

 なんにせよ、中堅ハンターに影響を与えられたと考えるとなんだかくすぐったい気になるな。


「ところで、アルシェリアさん。……その……よろしければこれから私たちと共に討伐に行きませんか?」


「えっと、どうしよっかべネ君?」


「せっかくのお誘いだし行ったらいいんじゃないか。俺はもう大体話したいことは話したし」


「そう? じゃあ一丁暴れてこよっか!」


 邪気なく不穏なことを言うやつである。

 と、なぜかザムディンさんが悟ったような笑みを浮かべていた。

 なんとなくこのまま砂にでもなりそうである。


「いや! すまない、なんでもない。なんでもないんだ。ははは、それでは失礼する!」


 はははははと速やかに爽やかに笑って去っていった。


 一体なんだったんだろう。

 向こうにいたパーティメンバーと思しきひと達に肩叩かれまくってるけど。


「あ、あれ? 行っちゃったね……」


「なんだったんだろうな。なんでアルが置いてかれてんだ?」


「え? ………………あー、まいっか」


 何をどう思ったのかアルは納得して、


「ヌシにはまだ早い話よ」


 リーゼが訳知り顔でつぶやいたのだった。

 


 

 ザムディンさんは行ってしまったので、俺たちも何かの依頼をこなそうと相談を始めたのだが。


「実はひとつ気になってる依頼があるの」


「へぇ。ひょっとして討伐系以外のものか?」


「ううん。オーク討伐」


「……お前それオーク食べたいだけじゃないだろうな」


 つか、まだその依頼あったのか。意外と長いな。もう一ヶ月以上になるよな?


「ちょっと、失礼なこと言わないでよね。食べるのはあくまでついでだよ」


 結局食うのかよ、と突っ込みを入れたかったが話が進まないので我慢する。


「んで、気になるってなにがだよ。

 演習の時も討伐したけど、特におかしなことはなかったぞ」


「ううん。個々のオークに関しては変なことは何もないと思う。

 でもこの依頼、いくならんでも長期に過ぎると思わない?

 私も何度か受けてるし、べネ君だって2度も受けてるんでしょ?

 他のハンターだって受けてるパーティは何組もある。

 それだけのオークが狩られてるのに、どうしてオークはいなくならないの?

 オーク自体が常時討伐に入っている魔物だし、本来であれば依頼が取り下げられるくらいには個体数が減っていてもおかしくないでしょ」


 力説するアル。説得力はあるな。


「それはつまり、俺たちでオークを討伐するだけじゃなくて、オークがいなくならない理由? についての調査をするってことか」


「そのとおり! ギルドからの正式依頼じゃないけど、討伐だけよりも面白そうでしょ。

 何かわかれば御の字。ギルドに情報提供してランクを稼ぐんだ!」


 意外としたたかな意見だがアルの話は俺も気になる。

 金にはならなくても調べてみるか。

 有用な情報でも手に入れば、アルの言うとおりギルドに報告することでハンターランクの向上にも繋がる場合がある。


「面白そうな話をしているではないか。私たちも一枚噛ませてもらおうか!」


 胸を張って元気はつらつに宣言する少女1名。

 なお、保護者のレティさんもちゃんといらっしゃる。


「今日は魔物討伐がメインじゃないぞ。いいのか?」


「アルの話、私も興味があるわ。それにこういった調査も、ハンターにはいずれ必要となる能力でしょ」


 どうやら決定事項らしい。

 アルを見ると、すでにクレアと相談中で、まずは近隣の村に聞き込みに行こうと話が進んでいた。

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