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第14話 試してみよう

 妖精のリーゼと行動を共にするようになった。

 リーゼは俺の魔力を糧にして存在しているらしい。

 自身の魔力は回復せず、よって朽ち果てかけていたのだが、偶然に俺という魔力の相性のいい人間がいたことからくっついて離れず今日まで過ごしてきたようだ。

 寄生先?が勝手に死んでも困るので、俺が怪我をしたときなどは勝手に回復していたらしいが、この辺はもう意識がないらしく定かではない。

 夜に回復しないことがあったのも、リーゼが普通に眠っている状態だったからではないかとのこと。


「そういや俺って魔法使えるようになんの?」


 リーゼが俺の魔力が枯渇して存在できないことを危惧して、俺の魔力を制限していたとのことだ。

 今は名付けによって効率的に魔力運用ができているらしいので、その制限は解除してもいいはずだ。


「ふむ、そうじゃなぁ…………いずれな」


「おいおい、なんでだよ。俺だってカッコよく魔法撃ちてぇぞ」


「ヌシは魔力があるといってもほんにしょぼいんじゃ!

 うっかり下手糞な制御で攻撃魔法なんて使ったら魔力がすぐからっぽになってしまう!

 そうなればワシには魔力が行き渡らなくなるではないか!!

 ようやくまともに現存できるようになった今、早々に老衰させられてたまるか!!」


「あ、はい……」


「よいか! ヌシはしばらくの間は魔法が使えぬものと思え。ヌシの魔力はワシが管理するのじゃ。

 まったく、旦那の稼ぎが悪い不幸な嫁の気分じゃぞ」

 

 ……この野郎、その少ない稼ぎをカットしたろか。やり方しらんけど。


「まぁまぁ、ベネット。

 ここはリーゼ様の言うとおりにした方がいいよ。

 妖精の方々は皆魔法は達者でいらっしゃるし、リーゼ様に任せたほうがベネットにもいいはずだよ」


「ほう。ヌシ、アゼルといったな。キモいだけではなくまともなことも言えるではないか」


 純粋に感心しているようだが、余計な一言でアゼルがまたグラついてた。


「……わーったよ。魔法はリーゼに任せる。

 んで、ある意味もっと大事なことなんだが、お前これからどうするつもりだ?

 ずっと俺の周りにひっついてなきゃいかんの?」


「ひっつくとはなんじゃ!

 ……じゃが、あまり離れるのは無理じゃな。それこそヌシからの魔力を受けられなくなり霧散してしまいかねんからな」


「そうか……」


 俺はぷかぷかと浮いているリーゼを見て、思わず頭を抱えそうになる。


 こいつは本当に妖精のようだが、エルフやハーフエルフの間ではどうか知らんが、少なくとも人間の間では御伽噺でしかないと言われている妖精をほいほい連れてるとかどう考えても悪目立ちしてしまう。

 いちいち説明するのもかったるいし、どう考えても厄介事を呼び込むようにしか思えねぇ。

 下手すればリーゼは悪意ある者に連れ去られて、俺と離れたことによりあっさりと消滅しかねん。


「あのな、リーゼ。お前は超目立つんだよ」


「ふふ、確かにワシの美はヌシら人間共からしたら神のごとき造型であるからなぁ。

 注目を集めてしまうのもわかるぞ」


「寝言はいいから。

 そのサイズで浮いてる小人とか明らか目が行くだろ。

 人前に出て目に付くのはまずいんだよ。ずっと俺の服の中にでも入ってるか?」


「ノリ悪いのう……それにいらぬ心配じゃ。

 ワシの姿はヌシ以外には限られた者しか見ることはできん。

 ヌシと繋がりがあり、ワシを知るものだけじゃ。

 つまり、その辺ですれ違うような輩はもちろん、ヌシと交流があろうともワシをそこに『いる』ものとして認識出来ていなければワシを見ることはおろか触れることすらできんのじゃ!」


 どうじゃ! と言わんばかりにリーゼが胸を張っている。

 要約すると超影薄いから大丈夫じゃねってことだけど、ホントかよ。

 明日も授業はあるし、下手に騒ぎにでもなったら嫌すぎるわ。


 というわけで、実験しておくとしよう。




 ◇ ◇ ◇




「して、相談とはなんだ? 私がどーんっと解決してやろう!」


 こちらは常識的サイズのちびっこ、クレアちゃんである。

 セットでレティもついてくるよ。


「男子の部屋は初めてきたけれど、あまり変わらないわね。

 それにしたって殺風景すぎるけど。あなたたち、本当に物が少ないわね」


「どうせ半年で出るしなぁ。

 俺はここが地元じゃないし宿屋暮らしができるとも限らんから、不要な物は持たないように注意はしてるけど」


「僕もそうだね。女子の部屋は同じ作りなのになんだが華やかなところが多いよね」


「ふん。私の部屋はすごいぞ! なにせレティがたんまりと…………なんでもないぞ」


 すげー気になるところで切るなよ。

 レティの顔がどす黒く変色しているから突っ込まんけど。


 それとアゼル君はあとで先生のところに来るように。いつの間に女子の部屋遊びに行ってんだお前は。


「クレア達を呼んだのは他でもない。今度学校側の実習で討伐演習があるだろ。

 そのパーティを組んでもらおうと思ってな」


 冒険者学校に来てから4ヶ月以上が過ぎた。

 これまでも時間がすぎるのが早く感じた。卒業まではもうあっという間だろう。


 卒業までに討伐依頼を達成していない生徒は非常に稀だが、学校側としてギルドの仕事を何も経験させずに卒業させるわけにはいかないのだろう。

 3日後にギルドに出されている討伐依頼を、学校側が用意した冒険者と共にこなすという実践演習が組まれていた。

 中堅・ベテランハンターに混ざって依頼を達成するのは、確かにいい経験になるだろう。

 とはいっても、所詮はひよっこハンターの集まりなので平易な難度の依頼を受けることになるが。

 

「それでどうかな? もしまだ組む相手を決めていないのであれば僕たちと組んで欲しいのだけど」


「ふ、ふふふ」


 クレアが怪しげに笑いながら仁王立ちになる。と、びしぃっとレティに指を突きつけた。


「賭けは私の勝ちだな!! 約束どおり、今日の夕食で一品いただくぞレティ!!!」


「……仕方ないわね。本当どうしてこんなに食い意地が張るようになってしまったの」


「ふはははは!! 敗者の負け惜しみがまた心地よいぞ!!

 ベネット、アゼル!! お前たちの誘い、受けようではないか!!」


 クレアさん、なんかしらんが絶好調である。

 いや、レティとくだらない賭けやって勝ったのは十分わかるけどさ。


「でも意外ね。あなたたちのことだから、すでに声がかかっているものかと思っていたけれど」


「誘われてはいたけど断ったんだ。

 ピクニックに行くとでも思ってそうだったし、足を引っ張られても困るからね」


 ……さらっと毒吐くなぁ。

 実際アゼルに群がる女子はいたけど、アゼルは華麗にかわしていた。ハードル高いやつである。


「つか、逆にそっちがパーティ組んでると思ってたけどなぁ俺は」


「ふ。実はレティと賭けをしていたのだ。

 ベネット達が私たちを誘うか否か。期限は明日までだったのでなかなか薄氷だったぞ! というかお前らすぐに誘わんか!!」


 なんという図々しさ。だったらお前から声かけんかい。


「……あぁ。なるほどね。これは僕が迂闊だったよ」


「いいのよ。甘やかしすぎても癖になるし」


 アゼルとレティがなにやらわかりあっていた。

 何の話かと聞いても華麗に流されてしまった。


「どうじゃ、ワシの言ったとおりじゃろ」


 リーゼに言われ、俺は小さく頷いた。

 リーゼはクレア達が来る前からずっと俺の右肩にのっていた。

 彼女たちには本当にリーゼが見えていないらしいし声も聞こえないようだった。


 クレア達が信用できないわけではないが、レティはともかくクレアはうっかり口を滑らしそうだ。

 なので、彼女たちには今しばらくリーゼについては黙っておくことにした。

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