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第11話 試合をしよう

 冒険者学校にて。

 今日は演習場で久々の模擬戦を行う。

 訓練としての稽古は何度も行なっているが、試合形式は実はあまりやらないのである。

 互いのプライドをかける真剣勝負は身が入るが、同時進行での試合は演習上の大きさからして難しく、全員が行うにはどうしても時間がかかってしまう。

 なので久々の試合、さらには魔法あり(直接身体への魔法攻撃は禁止だが)の実践形式はほとんど機会がなかった。


 今回の試合はリーグ戦形式の総当たりとなっている。

 残念ながら俺はアゼルとは別の枠だ。

 アゼルには以前魔法ありの今回と同じ形式の試合でやられていたので、雪辱を晴らすチャンスだったのだが仕方ない。

 代わりに、アゼルとレティという面白そうな試合が見れそうだし。


「二人の試合、そろそろ始まるか?」


 自分の試合までまだ時間があるのか、クレアが俺の隣に座った。


「ああ、リッドとハーシェのが終わったあとだな」


「くくく。楽しみだなぁ。奴には是非とも敗北と言うなの苦渋をなめてもらわねばならんのだ!」


 幼女のようなナリをして相変わらず狂暴な娘である。


「まだ前に試合して負けたこと根に持ってんのかよ。

 いいか、学校での試合は基本的に魔法での攻撃魔法が撃てないんだから、クレアには圧倒的に不利だろ。

 だから試合自体は負けても、それでクレアが弱いことの証明にはならないって」


「うるさいうるさい! ううう!! レティ!!! 私の仇をとってくれぇぇぇ!!!」


 駄々っ子と化すクレア。非常によく似合っている。

 未だ真面目に試合をしているリッドたちには悪いが……あ、勝負あった。リッドやるじゃん。

 デリフォルムのおっさんが、リッド達を下がらせて次の生徒たちを呼ぶ。


「レティ。アゼル。両者前へ!!」


 気のせいか、皆がそれぞれ手を止めて試合に注目しているような。

 って、向こうで試合中の奴も見てるんだが……そりゃ冒険者学校の生徒ではトップレベルの好カードだけどいいのかあれ。


「よろしくお願いしますね」


「ああ、よろしく」


 レティとアゼルが互いに声を掛け合い、二人は定位置まで離れる。

 互いの距離は20メートル程。魔法を一発撃つには十分な距離だ。


「それでは、はじめ!!」


 号令がかかり、それぞれが武器を構える。

 アゼルは両手に木製の短剣。レティは短弓、矢は先が潰してある。


「先手はもらうわ!」


 レティが鮮やかな弓裁きで次々に矢を放つ。

 狙いも正確でアゼルへと真っ直ぐ向かうが、アゼルは短剣で冷静に弾き、時にステップでかわしていく。


「……やるわね。でも!」


 レティは弓を打ち続けながら魔力を集中させていく。

 アゼルの技量でも魔法で補助強化されたレティの弓を避けるのは至難の技だ。


「魔法は困るなぁ。そろそろ僕も攻めるよ」

 

 アゼルは時折フェイントをいれながらランダムにジグザグに動き、レティへと接近していく。

 その間も当然レティは次々と矢を放っている。

 レティの弓の技量も見事だが、その矢をすべてさばききるアゼルは驚嘆の言葉しかない。


「あいつ、やっぱり物凄いぞ……でもレティのウインド・アローまではかわせないはず。魔法が間に合えばレティの勝ちだ!」


 クレアの言うことは最もだが、果たしてアゼルがそんな単純な試合運びするかねぇ。

 だが、もう互いの距離はほとんどない。

 まさかレティの時間切れか?


「さすがね。これじゃあもっと弓の修練が必要だわ」


「木の弓じゃなかったらこんなに簡単には弾けないよ。武器も実力ってことで」


 接近戦の間合いに入り、アゼルが短剣をレティに振るった。

 レティは短弓をもったまま、


「フロー・クイック!」


 魔法を唱え、平時よりもかなり素早い動きでアゼルの攻撃を躱し、一息に数メートルの間合いをあけ弓を構える。


「これで終わりよ」


 不安定な態勢、しかし正確な射撃でレティの放った矢がアゼルにせまる。


「フロー・クイック」


「な……」


 アゼルは先程のレティをなぞるかのように素早い動きで矢をかわし、呆然とするレティの首に短剣を突きつけた。


「……見事ね。これで攻撃魔法まで扱うのだから手に負えないわ」


「僕は、割りと対人戦に強いタイプだから。討伐依頼のときはいつも頼りにしてるよ」


「ふぅ。フォローありがと」


 レティが両手を挙げて勝負はついた。




「さすがだなぁ、アゼルは」


 魔法での遠距離も体術による近距離もいける万能タイプ。

 対人戦では特に間合いが要因で勝敗を決するときが多い。

 相手の苦手な距離で戦いを挑めるのだから、遠近使い分けができるのは大きな強みだ。


「あああ、レティが……ああああ」


「相性悪いんだからしょうがないだろ。

 対人戦でもパーティ組んでやったらまた別なんだろうから、そこまで気にするなよ」


「ううう。かくなる上は、ベネット! 覚悟してもらうぞ!! 同室の者の仇、お前でつけてやる!!」


「ああ、次俺たちだっけ。よろしくな」


「胸を貸してやる!!」


 ………。


 当然だが俺が勝った。

 クレアが展開した不慣れな炎式結界を物理的にブチ破っての勝利だった。

 ロクに魔法が使えない縛りのルールで魔法使いには負けられんわなぁ。

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