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あかしや橋のあやかし商店街②【書籍化】  作者: 癒月
第九幕~人と妖怪の恋の道~
74/93

人と妖怪の恋の道-十-

 ✿―✿―✿―✿



「今日は凄くいい天気だから眠くなるね」



 春の麗らかな陽射しを浴びながら縁側で座っている僕は、隣に座っている彼女に言った。

 同じことを考えているのか、彼女は手で口元を隠し「ふぁ〜」と欠伸をしていた。まるで動物が欠伸をするように見えた僕は、そんな彼女を見て小さく笑う。



「菖蒲も眠たそうだね」

「なっ!? べっ、別に眠くはない……!」



 図星を突かれてそっぽを向く彼女に「素直じゃないなぁ」と僕は思う。けれど、それを口に出してしまったら、今度は怒ってどこかに行ってしまうかもしれない。それだけは阻止したいのが本音である。

 流れる季節、ひと時な時間を、僕は少しでも多く美しく愛らしい彼女と過ごしたいからだ。

 僕は、自分の体を横に倒し彼女の膝の上に頭を乗せる。



「っ!? なっ、なにしている!」



 驚く彼女に僕は目を閉じながら「気持ち良さそうな枕があるなぁって思ったから」と少し意地悪げに言った。

 薄らと目を片目を開くと、眉を寄せなにか言いたげな言葉を飲み込んでいる彼女が見えた。よく見ると、彼女の頬と耳は赤くなっている。



(あぁ、駄目だなぁ……もう、可愛過ぎるよ……)



 素直じゃない彼女に、僕が彼女に対する愛おしさが更に増していく。

 今直ぐに起き上がって、彼女を抱き締めたい。そう思うが、僕にはそれが出来なかった。

 すると、僕の髪を梳くように彼女が撫で始めた。その手の動きはどこかぎこちなくて、僕はつい笑ってしまいそうになる。



「…………」



 彼女が僕の頭を撫でるのを感じるのが心地よく、僕は次第に微睡みの中へと意識が持って行かれ始めていた。



「時成……私は今、幸せだ。こんな日がいつでもお前と過ごせるといいな。お前となら、私の毎日はきっとこの春のように暖かいものになる」



 彼女の言葉に僕は「一緒の気持ちだよ」と口に出したかったが、その言葉を外に出す前に僕は深い眠りへと入って行ったのだった。

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