人と妖怪の恋の道-七-
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デート当日。
真司は前日に薫子から手渡された服を着て中学校の門の前で立っていた。深緑色のリングZIPがアクセントになっているパーカーに白のカットソー、黒のパンツを着ていた。パーカーの裾から少し見えるカットソーがお洒落にきまっていて、真司が普段掛けている眼鏡も服と合っていてお洒落眼鏡に見える。
「変じゃないかな……?」
パーカーをあまり着ない真司は着慣れていない感じに少しだけソワソワとしていた。
だが、その落ち着きのなさは服だけが理由ではない。
普段着物を着ている菖蒲が今日は洋装で、しかも、一緒に水族館に行くのだ。雛菊の様子を見るためだとしても、真司にとっては心がムズムズと気恥しい気持ちになっていたのだ。
(うぅ……なんだか落ち着かないな……)
「菖蒲さん達まだかな?」
気を紛らわすように菖蒲達の姿を探すと「真司ー!」と、菖蒲が真司の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「……っ!」
菖蒲の姿を捉えると、真司の心臓がドキッと強くなり、思わずギュッと手を握ると真司は走って菖蒲達の方へと向かった。
「菖蒲さん、雛菊さん、おはようございます!」
「おはようさん」
「おっ、おはようございます宮前さん!」
真司は菖蒲達の前まで来ると立ち止まり挨拶をする。雛菊は今から既に緊張しているのか、真司に返す挨拶もやや緊張気味だった。
菖蒲達の服装を一度この目で見たにも関わらず、やはり菖蒲達の洋装には見慣れないからなのか真司は挨拶を交わした後ジーッと菖蒲達を見ていた。
すると、菖蒲が徐ろに真司に自分が被っている同じ帽子を黒のショルダーバッグから取り出すと真司に被せた。
「ほれ、真司。昨日、持っていくのを忘れたじゃろ?」
「わわっ! あ、ありがとうございます……」
「ふふっ、これであの先生にもバレんぞ」
菖蒲とお揃いの帽子を被ることに気恥しくなる真司。菖蒲はそんなことは特に気にしていないのか、恥ずかしがる真司とは反対に楽しそうに小さく笑っていた。
「にしても雛菊よ、お前さんはさっきから緊張し過ぎじゃ。私みたいに楽しまねばならんえ」
「そっ、そう言われましても菖蒲さま……私、しっ、心臓がドキドキとずっと鳴っていてっ」
顔を真っ赤にしながら言う雛菊に真司も安心させようと声をかける。
「大丈夫です! 僕達も遠くの方で見ていますし!」
「うむ。真司の言うとおりじゃ」
「そ、そうですよね。……あ、あの私、どこか変じゃありませんか? 浮いていませんか?」
ホッと安心するとまた心配そうな表情で菖蒲と真司に聞く雛菊。
普段は簪で結い上げている髪も今は下ろして毛先に少しカールがかかっていた。スカートと同じようにふんわりとしている雛菊の髪はとても柔らかそうで、その雰囲気はどこかの御令嬢のようだ。
「全然変じゃありませんよ。凄く綺麗です」
「うむ。持ち帰りしたくなるほど可愛らしいぞ」
真司達の褒め言葉に雛菊の顔がまた赤くなる。
「あ、ありがとうございます」
「では、早速行くかえ。よいか雛菊。私と真司が一緒に行けるのは駅までじゃ。その後は、一定の距離を置いてお前さんのことを見ているからの」
「はい」
雛菊の返事に菖蒲は「うむ」と言いながら頷く。
「では、行くとしよう」
菖蒲のその一言に真司と雛菊が「はい!」と返事をしたのだった。




