破天荒な女神現る-参-
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あれは、真司が転校して来たばかりの日のことだった。
「宮前、真司です……。東京から先日引っ越してきました……。よ、宜しくお願いします」
少し緊張気味に挨拶をすると担任の先生に自分の席を指示され、真司は下を向きながらそそくさと自分の席に腰を下ろした。
突然の転校生もあるが、目が隠れるぐらい長い前髪に黒縁眼鏡という全体的に暗い印象に、案の定クラス全員の視線が真司に集まっている。
「………………」
その視線に痛みを感じ、自然と体は萎縮し猫背気味になる。
真司は心の中で溜め息を吐くと「……帰りたい」と、思ったのだった。
真司は、皆の視線を感じながらホームルームを聞く。そして、ホームルームが終わると次の先生が来るまでの間、生徒は席を立ち授業の用意など雑談をそれぞれしていた。
真司はそれを内心恐れていた。前髪のことや転校して来た理由など色んな質問をされ答えるのが嫌だと思ったからだ。
世の中、聞いて欲しくないこと言いいたくないこともある。
「……はぁ」
また小さく溜め息を吐く真司。
(誰も話して来ないことを祈ろう……)
そう思っていると、思ったよりもかなり早く先生が入ってきた。
「おーい、席に座れー。今日は、これを使って勉強するから全員目を通せよ~」
気だるそうに教室に入り、気だるそうにプリントを配る先生。
真司は、早めに授業が始まりそうなことに内心ホッと安心したのだった。