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第一章[1]

 青く澄み切った空を、白い翼が力強く横切って行く。

 高く、高く。久しぶりに全力で空を飛べることが嬉しくて、ついつい翼に力がこもってしまう。

 身体を通り抜けて行く風。髪が煽られるこの感じに、思わず顔が緩む。

(やっぱり空を飛べるっていいなあ!)

 ついこの間までは、重く垂れ込めた冬空が頭上を支配していた。深々と降り積もる雪に道は閉ざされ、襲い来る猛吹雪に人々は家に閉じ込もることを余儀なくされた。それは背に翼を持つ種族である空人達も例外ではなく、狭っくるしい家の中でひたすら、再び空を自由に飛べる日を待ちわびていたのだ。

 それが今日はどうだろう。高く澄んだ空には雲ひとつ見えず、太陽は燦々と地上に光を投げかけ、凍った地面を溶かして行く。

 長く厳しい冬もようやく和らぎ、かすかではあるが春の気配が漂い始める地上の景色を嬉しそうに見下ろしながら、少女は背中の翼を元気よくはためかせていた。

 肩から提げられた鞄には、冬の間溜まりに溜まった手紙や小包がぎっしり詰まっている。

 配達先は、辺境の村。知る人ぞ知るその村は、去年から一躍有名になった。

「卵……孵ったのかな?」

 そう呟いた少女の瞳は、遥か遠くに霞む古代遺跡を捉えていた。

 あの遺跡のそばに、その村はある。

 かつて冒険者達が築いた村。今はただ、ひっそりとそこに佇む村の名は、エスト。

 人々はかの地をこう呼ぶ。

 最果ての地。夢追い人の溜まり場。

 はたまた、果て無き希望の地、と――。



 歌を、聞いた気がする。

 まどろみの中、遥か遠くから聞こえてくる歌声。

 聞いたことのない言葉。知るはずもない旋律に、なぜか夢の中で涙が止まらなかった。

 物悲しい、それでもなぜか心安らぐ歌に包まれて、穏やかな目覚めを迎える。

 徐々に全身の感覚が覚醒していく。なんだか妙に体が強張っている気がするし、しかも冷え切っているような感じもするが、きっと気のせいだろう。

 中途半端に伸びた髪を半ば無意識のうちに払いのける。顔にあたってくる朝日は心地よい熱さを帯びていて、思わず頬が緩んだ。

 今日はどうやら、久々にいい天気らしい。長かった冬もそろそろ終わりか。

 そんなことを考えながら、ゆっくりと瞼を開く。その瞬間ふと視界が翳ったが、まだきちんと頭が覚醒してなかったために気にも留めなかった。

 そして。


 視界一杯に映る、眩い笑顔。



――ビィィィィィィィィィッ!!――



 唐突に響いてきたその音に、少女はびくんっ、と白い翼を震わせた。

「な、なんです? 今の」

 耳に、というよりは、まるで頭の中に直接響いてきた「音」。例えて言うなら甲高い笛の音のようなそれは、今まで聞いたこともない種類のものだった。

 目の前の女将にそう尋ねると、女将はふふ、と肩をすくめて笑ってみせる。

「そうねぇ、なんていうのかしら、朝の挨拶みたいなものよ」

「挨拶?」

 訳が分からない説明に目を丸くする少女を、女将はさも面白そうに見つめていたが、ふと本来の目的を思い出して少女の手から受領証を受け取り、手早く署名をする。

「はい、ご苦労様。今年もよろしくね、ティーエちゃん」

「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 差し出された受領証を大切そうに鞄にしまいこみ、ぺこりと頭を下げる少女。彼女は二年ほど前からこの地域を担当する配達員だ。エルドナの伝令ギルド支部から十日に一度やってきて、配達と回収を行う。その窓口になっている『見果てぬ希望亭』の女将レオーナとは、随分親しい仲になっていた。

 と、二階から物音がしたかと思うと、すぐに階段を下りてくる三人分の足音が聞こえてきた。

「おはようございます、レオーナさん」

「おはようございまーす、って、あ、手紙ですか? 僕宛のあります?」

「久しぶり」

 賑やかな声は、ここを定宿にしている冒険者達のものだ。遅めの朝食をとりに降りてきたらしい彼らはティーエを見て、親しげに声をかけてくる。

「はいはい、おはようみんな」

「お久しぶりです、みなさん」

 それぞれそう言葉を返して、レオーナは三人の昼食を支度しに厨房へ向かい、ティーエは手紙の山からいくつかの書簡を選り分けて、いつもの席に着く三人の元へ向かった。

「しっかし、今日も懲りずに怒られてるんだな、あのチビちゃんは」

「ラウルさんも少しは妥協してあげればいいのに」

「強情だ」

 そんな話をしている三人組。その会話の中に気になる名前を聞き取って、ティーエはそっと会話に混ざる。

「あの……ラウルさんって、あの、卵を拾った神官さまですよね」

「そう」

 ティーエの問いに簡潔に答えてくれたのは、精霊使いだという褐色の肌の女性だ。名前は確かアイシャと言った。いつもながら必要最低限のことしか言わない彼女のその答えに、仲間の二人が苦笑を浮かべている。

「あ、これどうぞ。……で、その卵って、どうなったんですか? もう私、気になって気になって……」

「僕宛のですね、ありがとうございます。卵、ですか? えっとですねえ……」

 書簡を受け取った知識神の神官カイトは、ティーエの問いに曖昧な笑みを浮かべた。いつもなら、どんな質問にも必要以上に詳細な答えを返してくれるカイトのそんな態度に、首を傾げるティーエ。すると、赤毛の剣士エスタスが、苦笑しつつ彼女の問いに答えてくれた。

「竜の卵なら、無事に孵ったよ」

「本当ですか!? それじゃ、噂は本当だったんですね!!」

 嬉しそうに手を叩くティーエ。

 彼女の住むエルドナの街では、昨年末から色々な噂が飛び交っていた。不思議な卵とそれを保護する神官の噂は去年の夏前からすっかり知れ渡っていたし、初冬にはエルドナの領主が「影の神殿」と名乗る邪な連中と手を組んで、その神官を誘拐する騒ぎまで起こった。その後も「影の神殿」との対決があったらしいが、詳細についてはなかなか情報が入らず、やきもきしているうちに冬がやってきて、エストの村は雪に閉ざされてしまった。

 以来、今日まで人々は小さな噂や推測を広げ、好き勝手に「実は贋物だった」とか「とっくに孵って、どこかに行ってしまった」とか、様々な話があちこちで囁かれていたのだ。

 今年に入って初の配達が決まった時、件のエスト村を担当するティーエの元には同僚やら知り合いやらが詰めかけ、なんとしても真相を掴んで来い、と口を揃えて言ってきた。勿論ティーエも竜の卵に興味があったから、二つ返事でそれを引き受け、ここまでの道中もずっと、そのことばかり考えていた。

「それでそれで、その竜はどうしたんですか?」

 興味津々、という様子のティーエに、アイシャが一言、

「かえった」

 と答える。それを聞いてティーエは残念そうな顔をしたが、すぐに納得の表情を浮かべる。

「そうですよね。偉大なる竜が、人の間に長くとどまるわけありませんよね」

 ティーエには精霊使いとしての素質こそないが、同僚の一人に風の精霊と声を交わせる者がいる。その彼女は、街で囁かれている噂を聞いて、

「たとえ孵ったとしても、竜には竜としての役目がある。村にとどまる道理がない」

 と断言し、村に行けば竜が拝めるかもしれない、などとぬか喜びをしている人間達を落胆させていた。それを聞いた時はなんて夢がないことを言うんだろうと思ったものだが、実際には彼女の言う通りだったわけだ。

「その、竜にも色々と事情があるみたいですからね」

 どこかぎこちないカイトの言葉に、慌ててエスタスが、

「いやほら、竜って言うのは上位精霊らしいから、世界に神々の力を行き渡らせるっていう重要な使命を担ってい――」


 バンッ!


 エスタスの言葉を遮って、唐突に扉が乱暴に開かれた。そして四人の、更に丁度厨房から朝食を運んできたレオーナの視線が、扉に集中する。

 ――そして。

「いい加減にしろっつってんだろ、このチビ!! 何度言えば分かるんだ!!」

「らうっ! ちび、ちがう!! るふぃーり!」

「やかましい! お前なんざチビで充分だ!」

 それはもう賑やかな声が、食堂に飛び込んできた。


 入ってくるなり、というよりは、道すがらこの調子で怒鳴りあっていたらしい、黒髪の青年と金髪の少女の二人連れ。

 青年は不ぞろいな髪を首の後ろでくくり、黒い神官服をまとって、その裾を引っ張る少女を頭ごなしに叱り付けている。

 その少女はといえば、年の頃は五、六歳だろうか。もうすぐ四の月とはいえ、まだ外套が手放せない季節にも関わらず、薄手の白い服一枚で寒そうな素振り一つ見せずに、まるで光を束ねたかのような白金の髪を揺らして盛んに抗議の声を上げていた。

 それはまるで、光と闇。

 あたかも対の存在であるように、年齢も容貌も雰囲気もことごとく対照的な二人。

(なんか、あの絵から抜け出てきたみたい……)

 ふと、ティーエはかつて学校で神話の勉強をした時に見た一枚の絵画を思い出した。

 十一人の神々を色鮮やかに描いたその絵画の中、一際目を惹いたのは、中央に描かれた二人の神々。金の髪をなびかせた可憐な少女神ガイリアと、黒い外套を翻し不敵な笑みを浮かべる少年神ユーク。それは命を司る二神にして、十一神を統率する存在でもあると伝えられる。

 そんな偉大なる二神を模したかのような青年と少女。

 しかし、その二人がやっていることといえば、まるで子供の喧嘩だ。いや、片方は確かに子供なのだが。

「だから! いい加減離せっつってんだろ!」

「やっ!! るふぃーり、らう、いっしょ!」

「いっしょ、じゃねえ! しまいには叩くぞ、このチビ!」

「やー!!」

 お互い一歩もひかず、声を張り上げてやりあっている様子に、ティーエは先ほど浮かんだ感想をすっぱりと頭から消し去った。神々に例えるには、あまりにも賑やか過ぎる。もっと言えば、口と態度が悪すぎる。

「あ、あの……」

 ティーエは周囲に説明を求めようとキョロキョロしたが、困惑しているのはティーエ一人のようで、後の人間達はもうすっかり慣れた様子で二人の口喧嘩を見守っている。

「あのぉ……」

 そっと、一番近くにいたアイシャを伺うティーエ。アイシャは、いつもの如く無表情に、

「いつものこと」

 とだけ答えてくれた。そして、それだけでは流石に説明が足りないと思ったらしく、もう一言付け加えてくれる。

「仲がいい証拠」

「違うっ!!」

 しっかり聞こえていたらしい黒髪の青年が猛然とそれを否定するが、アイシャはしらっとそれを受け流し、少女の方に手を差し伸べる。

「あいしゃっ」

 少女も嬉しそうにアイシャに飛びつき、頭を撫でてもらって嬉しそうにきゃっきゃと笑う。その笑顔がとてもあどけなくて、ティーエも思わず笑みを浮かべた。

「おはようラウルさん、今日も朝から元気がいいわね」

 一方、朝食を食卓に並べながら声をかけてくるレオーナに、青年はけっと毒づく。

「ったくいい加減にしてほしいぜ。毎日毎日、朝っぱらから怒鳴らなきゃならないこっちの身にもなれってんだ」

「今日は何をやらかしたんですか?」

 カイトの言葉に、苦々しい顔でああ、と答え、青年はアイシャの膝にちょこんと座っている少女をきっと睨みつける。

「人の寝床を占拠して寝やがるわ、人を床に蹴落とすわ、それだけならまだしも、せっかく作った朝飯をひっくり返しやがって!」

 言っているうちに怒りが再燃してきたらしく、噛み付かんばかりの勢いで少女に食って掛かる青年。

「大体なあ、食べ物を粗末にするなって何度言ったら……!」

「るふぃーり、あそぶ! らう、いっしょ、あそぶっ!」

 たどたどしい言葉で抗議する少女。

「な・ん・で! 俺がお前と遊ばなきゃなんねえんだ!! 第一、食事中に遊ぶ奴がどこにいる! 食事ってのは椅子に座って大人しく食べるもんだ!」

「やー!!」

「いやじゃねえ!」

「あ、あの……」

 まさに火花を散らす二人の言い合いに、一人おろおろするティーエ。しかし他の人間達は呑気に、

「いやー、ラウルさんもすっかりお父さんですよね」

「ちゃんと躾けようとしてるし、意外だよなー」

「いいことじゃない。今度うちの子供も叱ってもらおうかしら。人参を残すとラウルさんに怒られるわよって」

 などと囁き合っている。途端に、

「誰がお父さんだ! 俺はこんな子供を持った覚えはねぇっ!」

「わわ、聞こえてた……」

 怒りの矛先を向けられて、ひゃっとエスタスの後ろに隠れるカイト。そして、そこでようやくティーエの存在に気付いたらしい青年は、それまでの怒りはどこへやら、すっとにこやかな笑みを浮かべ、ティーエに話し掛けて来た。

「これはこれは、お騒がせして申し訳ありませんでした。……あなたは、伝令ギルドの配達員の方ですか?」

 先ほどまでとはうってかわった青年の態度に目を丸くしつつ、頷くティーエ。

「は、はい。この地域担当のティーエと言います。あの……もしかして、あなたが噂の……」

 辺境の寂れた村を一躍有名にした人物。それは、去年の春にエストに赴任してきた若きユーク神官の青年。

 残念ながらティーエはこれまで直接会う機会がなかったが、その人となりは聞いている。黒髪に黒い瞳、すらりとした長身に整った顔立ちの、それはもう礼儀正しい人物だと評判の神官。そしてその名は、本人には些か不名誉な二つ名と共に知れ渡っている。曰く――。


 《卵神官》ラウル=エバスト。


「私はラウル=エバストと申します」

 ティーエの口からその二つ名が飛び出る前にと、ラウルは先手を打ってそう名乗った。途端に、少女の顔がぱぁっと輝く。

「うわぁ! ご本人に会えるだなんて感激ですっ!! あ、あ、あの、竜の卵が孵ったって聞いたんですけどっ、そのっ……!」

「ええ、去年の暮れにね」

 興奮気味のティーエに少々戸惑いながら、ラウルはそう答え、そして悲しげな表情を浮かべた。

「しかし、すでに竜はこの地を去りました」

 その言葉に、はしゃいでいたティーエはしゅん、となった。

「ごめんなさい、私……」

 彼が卵を拾ったのは去年の五の月と聞く。それから年末まで、半年以上の月日を彼は竜の卵と共に過ごしたことになる。その卵が孵って一番嬉しかったのも、そして別れが一番辛かったのも、恐らくはこの神官だろう。

 バツの悪そうなティーエを見て、ラウルは静かに笑ってみせる。

「お気遣いいただいてありがとうございます。しかし、別れというものは、生きていく上で決して避けて通れぬ定めです。こればかりは、どうしようもありません。それでも、そんな悲しみや苦しみを乗り越えて生きて行くことこそが、神が我らに課した使命なのでしょう……」

「神官さま……」

 穏やかに紡がれた言葉に感動し、目の前の神官を見つめるティーエ。一方、他の四人といえば、胡乱な目でラウルを見つめていた。

「……懲りてないよな」

「まったくですね」

「久しぶりに見るとなんか新鮮ね。あの猫かぶり」

「すけべ……」

 こそこそと囁き合う四人に、あとで文句を言ってやろうと思いつつも、ラウルはさり気なくティーエの手を取り、とびきりの笑顔で言葉を続ける。

「あなたがそんな悲しい顔をすることはありませっ――」

 唐突に途切れた言葉にティーエが首を傾げる。見ると、いつの間にアイシャの膝から下りたのか、ラウルの足元に金の髪が揺れていた。

「っってえなあ、何すんだ、ちびっ!!」

「らうっ!」

 頬を膨らませ、ぷんぷんと怒っている少女。その足は思いっきり、ラウルの足の甲を踏んづけている。

「俺が何したってんだっ!! え?!」

「らうっ!!」

 ダンッ!といい音がして、ラウルの顔が歪む。

「だっ……!! このっ」

 尚も足を踏んでくる少女の体をひょいと持ち上げ、足の上からどけて抗議するラウル。少女の方は、まるで荷物か何かのように持ち上げられながら、それが楽しかったのか途端に笑い声を上げた。

「ったくよぉ……あ」

 ため息をついたところで、目の前のティーエを見て「しまった」と顔を引きつらせる。

(ちくしょお……)

 やはり、一旦本性をさらけ出してしまうと、猫を被るのが下手になるのかもしれない。

(折角の機会が……チビめ、邪魔しやがって……)

「らうっ!!」

 少女の声が耳に届く。ラウルはがっくりと肩を落とし、それでも、ぶに、と少女の頬をつねって、出来るだけの抗議を示してみせた。また声が飛んできたが、この位はしないと気が済まない。

 一方、すっかり目を丸くしているティーエには、レオーナがくすくす笑いながら椅子を勧めていた。

「まあまあ、ティーエちゃんも座ったら? お茶くらい飲んで行く時間あるでしょ?」

「はっ、はいっ」

 弾かれたように答え、椅子に腰掛けるティーエ。しかし椅子に落ち着いてからも、その視線は何か妙に落ち込んでいるラウルと、そしてその腕に抱えられてご満悦の少女に向けられていた。

(ど、どういうことなんだろう……? なんか、噂と全然……)

 礼儀正しい、真面目な神官だと聞いていのだが、どうにも話と違う。

(しかも、この子って、一体……?)

 困惑の表情で見つめてくるティーエに、ラウルはまいったな、という顔で頬をかく。そんなラウルの肩をぽん、とレオーナが叩いた。

「さっきの話じゃ、ちゃんと朝ご飯食べられなかったんでしょ? うちで食べてきなさいよ」

 あたしのおごりよ、と片目を瞑って、レオーナは厨房へと消えて行く。

「ありがとな、レオーナさん。恩に着るよ」

 おごり、という言葉に思わず嬉しそうな顔を浮かべたラウルは、まだじっとこちらを見ているティーエの視線に気付いて、はっと表情を引き締め、そして空いている席に腰掛けた。少女は当然だと言わんばかりにその膝の上にちょこんと座り込む。

 怒鳴り続けて疲れたのか、黙り込んだまま口を開こうとしないラウル。そして、こちらは上機嫌で机の上に置かれた花瓶の花をつついている少女。三人組はといえば、黙々と朝食を口に運んでいる。

「あ、あの……その……」

 この気まずい雰囲気を何とかしようと、ティーエはひとまず、一番に浮かんだ疑問を口にしてみた。

「その子、は?」

「るふぃーりっ!!」

 ラウルが口を開く前に、問われた本人が、片手を上げて元気よく答えてくれた。


 闇に仕える神官、ラウル=エバスト。

 そして光の竜、ルフィーリ。


 巷で噂の二人(?)は、このエストで今日も元気に暮らしていた。


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