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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
壊れゆく世界で溺れる姫
63/71

垣根の上に鎮座する者

クロード城上空——


嵐に覆われ、雲を纏い、雷を穿つ


その者の正体は……


逆さ吊りの塔


クロノスは今、そこにいる


「で、遠路はるばるご苦労じゃな」

紫色のローブに身を包む女性は、水晶に手を翳し鎮座する


「あぁ……相変わらず悪趣味だよな」


「戯けたことを、魔導書グリモワールには読み手が必要だと言ったのはおぬしではないか」


「そうだったな。でも、ここまで鉄壁にするか?」


「それもおぬしじゃ」


「そうだな……じゃあ頼みを1つ聞いてくれないか?」


「そんなにボロボロになってまで願う事はなんじゃ?」


「生と死の境界……垣根の上の魔女ヘクサ……レヴィアにマナを渡してくれ」


「母は娘に命を与えた。それで充分じゃろ?」


「知った仲じゃないか。たまには頼みを聞いてくれてもいいんじゃないか?マーリン」


「おいおい……300年振りに顔を合わせてぶしつけな頼みをするもんじゃなかろ?アーサー」


「今はクロノスだ」


「わっちもヘクサじゃ」


「はぁ、わかったよ。じゃあ500年振りに喧嘩でもするか」


「ぬしよ……大きく出たのぅ」


「確かにな。今はエクスカリバーもなければ、剣の腕もない」


「じゃが、わっちは『アレ』にマナを分け与えても尚、衰えておらんぞ?」


「じゃあ」


「始めるか」


塔の中に大きな暗い空間が広がった

ヘクサは椅子にかけたままだ


「随分余裕じゃないか。この期に及んで世界を語るとは」


なんのことじゃ?と、わっちは言ってみる


「食えない奴だ」


「お互いな」


『ファイアエッジ』

炎の刃が正面からぶつかり合い消える


『アイスエッジ』

氷の刃がお互いを切り付け合う


「お前……遊んでるだろ」


「いやいや、今は主……魔導士じゃろ?先輩として手ほどきしてやらねばな」


「調子にのるな」


「呑み込め……リュムナデス」

くっ、いきなり水系統最上位か……

座標空間を水で満たし……溺れさせるか


では、これはどうだ?

「おぉ、水を凍らせるか」


パキンッ


「溺れていてわ詠唱ができない、じゃが……マナを放出するくらい容易いのぅ……」


「しっかし、相変わらず強いな。俺と一緒に来ないか?」


「縛った鎖を解いてくれるかや?」


「そうだったな。じゃあレヴィアにマナを渡してくれよ」


「だからできんと言っておる」


「そう妬くなよ」


「なっ、妬いてなどおらぬ!」


「これからは遊びに来てやるから」


「また繰り返されるのに……かや?」


「もう繰り返さないさ……今の俺には従者じゃなく仲間がいるからな」


「それは……妬けるのぅ」


エンデュミオン

この火龍で飲みつくそう


「ヒュプノス」

ほぉ……氷の彫刻の出来上がりじゃ

なら、


インドラ

さぁ、食い尽くせ雷龍


「テュポーン」

おぉおぉ、雷龍が天を貫く嵐

嵐系統最上位で吹き飛ばされおったわ


「いい加減立ち上がったらどうだ?」


「ぬしと違って……体が新しくはないからのぅ」


「はっ、笑わせるなよ。そんなに色気に溢れてたら街中で何人引っかかるか」


「なら、わっちを抱いてくれるかや?」


「おとなしく言う事を聞いたらな!」


なんじゃ……?右手のマナはアルテミス……


左手に……タナトス!?


「ユニゾンマジック、タルタロス!」


「な、そんな事が」


周りを包むのは幻覚の霧……


ならば、ライトニングノヴァ


チィンッ


な、足元に返ってくるじゃと!?


これは幻覚と反射か……


厄介じゃのぅ


「だが——」


————


「起きたか?」


「え?」


ここは……


「お前の愛しの王様の膝の上だ」


あぁ、その笑顔……わっちが好きだった……


「で、負けた気分はどうだ?」


「ふんっ、何をやったかは知らんが負けは負けじゃの!」


「なら、頼むわ」


「じゃが……腑に落ちぬ」


「時系統の最上位魔法」


「なっ——」


「今回転生した体は魔法が得意だったようでな」


「呆れたわいなぁ~」


「これで800敗1勝くらいか?」


「いいや、982勝1敗じゃ」


「はぁ、とことんダメな王様だったな」


母性を感じるような、包み込む笑顔で応えよう


「優しくて、悪戯好きな王は……とても魅力的なよい王じゃったよ」


「っ——」


「ぬしは相変わらずわっちの笑顔に弱いのぅ」


「からかうな。じゃあ俺は行くから……次は全てが終わった後に会おう」


「あぁ……あぁ!」


クロノスはゲートに消えて行った


恐らく……一番か弱い者のとこじゃろう


かわらんのぅ


さて、わっちも行くかや


————


「レヴィア」


「え、お母様……?」


「なんじゃ、わっちの顔を覚えておったのか?」


「忘れるわけ……ないよぉ~」


おぉおぉ、そんな泣きながら抱き着いてきおると

ローブが汚れるじゃろうが……

仕方ないのぅ


「ほれ、わっちの今おる場所はクロノスが知っておる。いつでも会いにくればいい……だから泣くな?」


「お母様も泣いてる癖に」


「わっちが?」


気づけば頬から水が……


なんじゃ、わっちも人の心は残っておったか


「レヴィア、手を出してくりゃれ?」


「ん」


「今からわっちのマナを授ける。クロノスの力になってくりゃれ?」


「この光……暖かい」


「よし、これで終わりじゃ。ひと眠りしてからゆくがよい」


「お母様も」


「くふっ、甘えん坊じゃのう……今だけじゃぞ?」


「うん」


こんなか弱い体に無茶させて……


じゃが、わっちはこの世界を、魔導書グリモワールを読み伝えねばならない


いつまでもこの寝顔を見ていたいが


また……そのうち会おう……


————


さて、戦況はどうなっておるか……


ほぉ、また意外なとこに


それでは紡ぎ、語り続けよう


そして王は繋がれた蛇と対峙する


じゃな……

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