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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
【外伝】英雄忌憚と語られる魔導書
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【外伝】七聖の王と優しすぎる魔王

優しすぎる王と七人の従者たち


英雄忌憚


それは、この世界グリモワールにおいて、童話として子供達に読み聞かせられている


グリモワールには数々の夢が溢れている


魔法、宝剣、宝具、魔法学、冒険者ギルド、鍛冶ギルド、魔物、神格を持つ者


そして今、世界を悩ませている『魔王ゲーテ』


ここまで現実が色づいているのに、それでも目を輝かせる物語——


とても美しい世界グリモワール——


彼は世界の片隅で命という灯に明かりを燈した


盾の形をした大陸と短剣の形をした大陸


2つの大陸から成す世界は、美しく、儚くも、滑稽であった


彼は生まれながらの王である故、全てを悟るには時間はそう必要なかった


大地には草花の息吹、恩恵を受ける動物や作物、搾取する人間……


頂点に立っていると思われた人間は、魔物に命を奪われる……


なら何故、人はそこに在り続ける——?


王は答えを探す為に旅に出る


王は1つ目の街で強欲な少女と出会う


全てを思うがままに欲する彼女を赦し、彼女を旅の従者とした



王は2つ目の街で怠惰を貪る少女と、暴食のかぎりを行う少女と出会う


怠惰を貪る少女に労働の喜びを説い、暴食のかぎりを行う少女に分け与える心を説いた


そして、二人を赦し、旅の従者とした



王は3っつ目の街で傲慢な少女と出会う


人を蔑み、嘲笑う彼女に


敬意を説き、全てを赦し、彼女を旅の従者とした



王は4っつ目の街で嫉妬に囚われた少女と出会う


全てを妬み、恨む彼女を大きな器で受け止め、解放し


全てを赦し、彼女を旅の従者とした



王は5つ目の街で、憤怒の化身のような少女と出会う


喚き、刃を向ける彼女を冷静な力でねじ伏せ


全てを赦し、彼女を旅の従者とした



王は6つ目の街で欲情に溺れる少女と出会う


激しく求める彼女に、愛する喜びを説き


全てを赦し、彼女を旅の従者とした


7つの罪を赦し、旅を終えた王は


罪から右腕と呼ぶ者を作り出した


人が人を作る事に激昂した神は


王に試練を与える


3人の悪魔に存在する意味を与えろという試練だった


王は旅で導き出した答えを悪魔に向けた


1人目にクロードと名付け


罪を生み出す役目を与えた


2人目にラケシスと名付け


罪を人に割り当てる役目を与えた


3人目にアトロポスと名付け


人の罪を赦す役割を与えた


神は王に問う


『これで悪魔は存在してもいいのか?』


王は答える


『はい、人は業を抱え、苦しみ、もがき、成長し……やがて赦された時、本来の生きる役割に気づくのです。人とは支えあい、愛しあい、理解しあう事で、更に世界を美しく彩ります。しかし、人は時に迷い、決断しかねる時が来るでしょう……そのような時に悪魔に与えた役割、【運命】がきっと人を導くでしょう』


神は王の答えに微笑み、もう1つ問う


『ならば、罪から人を作り出した理由を答えよ』


王は微笑む


『私も脆弱な人の子です。いつか選択を誤る時が来るでしょう……そんな時に私の右腕となり支え、悪を説いてくれる者が必要だと考えました。私が王で在り続けるために』


神は王の答えを認め褒美を与える


『ならば王よ、お前が王で在り、正義で在り続けるために永劫の時を授けよう。世界をより美しく、儚いものへと導きたまえ』


そして王は世界を色褪せぬよう、小さな本にしまい名付けた


グリモワール—『魔導書』と……


「と、まぁ~、これが神話と呼ばれる有名な童話なんだよねぇ~」

ダボついた服を着た少女は、蒼白く、地面に着きそうな髪を揺らしながら

椅子を揺らす


「有名な話ですわよねー、わたくしも小さい時にお父様から聞かせてもらいましたわー」

サイドテールの少女は机に肘をつき、零れ落ちんばかりの双丘を揺らす


「僕はそんな話忘れてしまっていたけどね……なぁ?ベル」

長い黒髪を靡かせたゴスロリ幼女は、絶壁の前で腕を組む


「お姉ちゃん、昔好きだった気がするんだよねーその話」

跳ねっ毛なオレンジ色の髪をいじりながら、少女は微笑む


「カッカッ、私は兄様から聞かせてもらったなー。本を読むのは苦手でなぁ」

キセルをカンッと鳴らし、長い赤髪をポニーテールにした女は

主張が激しい双丘を揺らし、赤い着物の袖を直す


「私……ハーフエルフだし……あまり興味もないから……」

ピンク色の少女は竪琴を抱え、ぼーっと空を仰ぐ

黒いドレスで包まれた華奢な体は、風が吹いたら飛んでしまいそうだ


「ねー、どうでもいいけどさー?早く水浴びしたいから泉にいこー」

銀色の髪を二つに結んだ少女は、時折指を艶やかしい唇につけ

舐めながら暇を持て余す


『クロノスー?』


——ガチャッ


皆が呼ぶと扉が開かれる


「呼ばなくても騒がしいから聞こえている。俺は本を読みに行くだけだからな?邪魔すんなよ?」

腰までの黒髪を肩で結び、釣り目がちで、端正な顔立ちをした男は

白い外套を翻し、本を片手に外へと歩く


少女達をほったらかして


『待ちなさい!魔王!』


少女たちが呼び止めると、振り返る


「ほら、物騒な顔してると折角の可愛い顔が台無しだ。笑え、つまらないなら旅に出るぞ」


これはまた……別のお話……

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