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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
神格を持つ者と破滅の王
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第三軍『孤独』

クロノスはレヴィアを見送り振り返る——


「さて、俺もベルフェ達と合流して——」


ドサッ


は?


目の前にボロボロになったベルフェと

血を流すベルゼが落ちてきた


「おい、どうした!?」

「アストラル……ゲート……どうやら……成功した……みたいだな——」

ベルフェは意識を失った


「おい!っ……何だってんだよ!」

クロノスはゲートを開き

ベッドに二人を順番に運ぶ


ここは剣の国ルシフの館——


クロノスはベルゼの胸元に

か細く光るものを見つける


「アスクレピオスの杖か……」


こんなになってまでベルゼの事を……

立派な姉だよお前は


ベルフェの髪を撫でると

杖をベルフェに翳す


見る見るうちに傷が癒え

傍目ではただ眠っているようにしか見えなくなった


ベルゼを見ると

微かだが、まだ出血をしている


「起きたらベルフェにお礼を言えよ?」


杖を翳すと血が止まり

傷が塞がった


「目を覚まさないってことは、相当大きな精神ダメージを負ったんだろうな」


クロノスはベルフェの胸元に

アスクレピオスの杖を置くと

部屋を出る


整理しよう……

ベルゼが何者かにやられた。

ベルフェが杖を使い、応戦……

圧倒されて命からがら逃げてきた……


ベルゼを盾にとられた可能性もあるな

ベルフェを圧倒する者だとしたならば

冥府を司る者か……


ふと、クロノスの脳裏を映像がよぎる


「いいですこと?この作戦は戦力を分散して行いますわ。決して単独行動はとらないこと!相手の力が読めない分、慎重に行動してくださいませ!」


あー……

やっぱマーモってすごいんだな……


しかし、ファフニールのマナは消えた

特別大きなマナも城の方角には感じなかった

人……その可能性も考えなければ


クロノスは街を出る


だが、人があそこに来るには船で四時間

俺がいた頃には船などなかった……

空間魔法?いや、高度な魔法を使える奴はいないはずだ

いたとするならレヴィア……ベルフェが使えたのには驚いたな

アスクレピオスの杖を手放してマナの許容量が増え

ギリギリ使えたって感じだろうな


クロノスは街の南、国境の洞窟に入る


しっかし、あいつらには申し訳ないことをしたな

俺がいれば何とかなったかもしれない……

思い上がりか。

でも、状況は最悪をま逃れたかもしれない


洞窟の開けた所に出ると

待ち構えていたヴァンパイアが8体

一気に襲い掛かる


「凍れ……ヒュプノス」


飛びかかり、宙に浮いたヴァンパイアが

凍ったまま地面に落ち

次々と音を立て、崩れ去った


いやー、悪い悪い、まさかお前らがやられるなんてな

なんて言えないし……

どんな顔して次、会えばいいんだろ


道を歩くと天井が高くなる

切り立った岩が下に向かい突き出し

今にも落ちてきそうだ


奥のほうには巨体の群れが見えてくる

サイクロプスが五体——


クロノスは俯き、呟きながら歩き続ける


いや、そもそも俺が悪いのか?

だってそんなに時間かかってないし


サイクロプスがクロノスに気づくと

壁を殴る


岩が次々と降り注ぐ


右へ左へ避けながら歩く


サイクロプス達は拳を振り上げ襲い掛かる

「フォトン」

一体目を地面に前のめりに叩きつけると

踏みつけて進む


左右から二体目、三体目


右手を下から上に

左手は真っ直ぐ


「プリズムロア」

「ライトニングノヴァ」


右のサイクロプスは地面からの氷柱に貫かれる

左のサイクロプスは閃光の槍に貫かれる


膝をつき、動きが止まる


正面に四体目が構える

「アストラルゲート」

クロノスは眼前に出したゲートをくぐり

すり抜けたように背後に現れる


五体目が大きな斧を振り下ろす

「スピリッツロンド」

風系統上位の風のカーテンがクロノスを包み

斧を滑らせ、地面に刺さると

股の間を通り抜け


細い道へ入ろうとする


まぁでも、何か詫びの一つでもしてやるか


——ゥオラララララ


背後から一気にサイクロプス達が襲い掛かる

「あーもう、五月蠅い」


「ロックサークル」

五体のサイクロプスを

円形の岩の壁が包む


クロノスは軽快に右の指を鳴らす


瞬間、サイクロプスの中心に黒い球が浮かぶ

「タナトス」


球から黒い霧が噴き出し

サイクロプスを包む


すると、お互いを攻撃し始めた


でもなぁ、詫びったって何をすれば……

ベルゼには食事、ベルフェには服でも買ってやるか

そういえば、路銀はまだあったっけ……

セレネに着いたら、ギルドに行って仕事受けるか


遠く背後ではサイクロプス達のうめき声が聞こえる


青い光が見えてきた


洞窟から抜けると

夜空に浮かぶ赤い月——


常夜の街セレネ領に入った


常に夜なのは特殊な結界のせいらしい


「まだ……邪魔するのか?」


目の前には大きな角が二本

両手に斧を持った

巨大な牛の鬼


ミノタウロスが仁王立ちしている


腰に下げたデュランダルに手をあて


気づけばミノタウロスの背後に立つ


納まりきっていない剣を鞘に戻す


カチャッ


ドンムッ


鈍い音と共にミノタウロスの両腕が落ちる


グゥウオオオオオオオオ


ミノタウロスは痛みに叫ぶ


クロノスは頭をぐしゃぐしゃと掻く


「あー、今から見せる魔法は存在しないはずの魔法……俺の一番得意な魔法だ」

クロノスは振り返るとミノタウロスに向け、右手を伸ばす


そして——


握りしめる


……


カチリッ


時計の針のような音が聞こえた


ミノタウロスは動かない


「まぁ、完璧な魔法など存在はしない。今のお前に一切の干渉はできない……代わりに、再び歩き出せる日が来た……らの話だ」


クロノスは歩き出す


切り立った丘に出る


「へー、徐々に上に上がってる気がしたが……こんな高いところにでたか」


見下ろす街並みは

淡い赤、紫、青の三色

冒険者の為に用意された様な

幻想的な国だ


クロノスは草むらに寝転がる


「一人旅って……寂しいもんだな。やっぱり仲間は失いたくないよな」


右手を空に伸ばす


「こんなに綺麗な世界なんだ、笑いあって手を取り合って……」


「ロキ……何処の誰かは知らないが……お前にはおとなしくしてもらうぜ」


拳を握りしめ、満面の笑みで


空を見つめた


そして……四人は合流する

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