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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
神格を持つ者と破滅の王
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第二軍『戦慄との再会』

生い茂る草花、立ち並ぶ木々の根元は家になっている

眩しく射す日差しが気持ちよく感じる

ここは詩の国オルフェ

エルフの国だ——


「さて、来て早々ですけど……帰ってよろしいですか?」

マーモは苦笑いする


「う~ん、ぶっちゃけ起こすのめんどうだよね」


二人が行き着いた丸太でくみ上げられた様な部屋で

華奢な少女が寝息を立てている


ピンクの艶やかな髪が、窓から流れる風で揺れる

可憐、儚さ、絵画の様な……

言葉では表せれない美しさだ


「いっつもアルスはどう起こしてましたの?」

「ん~とね……」


レヴィアは上に跨ると

黒いドレスからのぞかせる

慎ましやかな双丘から、首筋に舌を這わせる


「ちょ」

マーモは顔を手で覆う


ぴちゃぴちゃと音を立て

舌を上下に動かし

右手を左手に絡め

左手で髪を撫でる


「んっ……アルス……?」

少女が目覚める


「疲れた~」

レヴィアは少女の隣に寝転がる


「どんな起こし方ですの!?」

「アルスはこうしてたよ~?」

「あれ……?レヴィア……マーモ?」


少女は重い瞼をこすり、起き上がる


「迎えに来ましたわよ?」

「なにか……あった?」

「聖王軍招集~」

「アルスは?」

「来ていませんわ」

「じゃあ……寝る……」

「おーきーてーですわー」

マーモが少女を揺さぶる


「ん……わかった、起きる」

少女は立ち上がり、軽く伸びをすると

枕元にあった竪琴を手に取る


窓に腰かけると、歌いだした


——


「相変わらず綺麗な歌ですわね」

マーモは小さく拍手をする


「そだね~」

レヴィアは左右に揺れている


「森を……起こした……」


少女は窓から降りると、竪琴を鞄にしまい

肩から下げた


「水浴び……」

少女は扉を開けると森へ歩きだす


「レヴィちゃん?私たちもいきますわよ?」


「ぁ~い」

二人は後を追った


「で?なんの招集?」

「魔王の再来ですわ」

「正確にはそのぐらいの緊急で~、例の偽物魔王より遥かに強いよ~?」

「そ」

泉につくなり少女はドレスを脱ぎ、泉に入る


「相変わらず羞恥心を捨ててますわね……」

「え~?」

レヴィアも全裸になって泉に入る


「この人たちは……」

マーモは一人座りむくれる


「マーモも……来たら?」

「マーちゃん~気持ちいいよ~」

「私には羞恥心というものがありますので」

マーモは更にむくれる


少女とレヴィアが顔を見合わせる

『せ~のっ……それっ』


水を二人してマーモにかける


「ずぶ濡れですの……やけですわ!」

服を脱ぎマーモも泉に入る


「仕返しですわっ」

「なんの~」

「えいっ」


三人は泉で遊ぶ


本来の目的を忘れて……


「で、来てくれますの?」

マーモはレヴィアに火系統の魔法で、服を乾かしてもらっている


「うん、いいよ」

「国を離れることになりますけど」

「問題ない……何かあれば森が知らせてくれる」


サーシャは木にもたれかかり、指にとまった鳥を見つめている


「いつ見てもすごいですわね……それ」

「なにが?」

「いや、指に鳥がとまるとか……おとぎ話の中でしか見たことありませんでしたわ」

「森と友達だから」


サーシャは鳥を飛ばせると、鞄からタクトを取り出す

「ハウリングティア」

タクトを振ると

七色のカーテンが森を覆う


「旋律魔法……エルフの詩の力と魔法を組み合わせたもの……流石のレヴィちゃんもできませんわね」

「そだね~。ハーフエルフのサーシャならではだね~」


「探知完了……森の奥にマナが集まってる」

「はぁ~、次はバハムートみたいなのじゃないことを祈りますわ」

「同感~」


「フェアリールージュ」

サーシャがタクトを振ると

心地いい音を鳴らして七色のカーテンが降り注ぐ

それをタクトで手繰り寄せ、足元に浮かばせる

「乗って」


「これこれ~」

「最高の移動手段ですわ」

二人が乗ると、まるで波乗りでもするかのように

空を滑り進む


大きな大樹、神樹と呼ばれるものの麓に

黒い渦が見える


「いくよ」

勢いよく三人は着地した


バチバチと音を立てながら渦は揺れる


「くる」


渦が小さくなり、弾ける——


光と共に

緑の綺麗なドレスに身を包む

優雅な女性が現れる


頭の上には王冠を乗せ

金色の髪、端正な顔立ち、長い耳

背には透明な翼をつけている


「厄介……ティターニア……」

レヴィアは鎌を取り出す


『わらわの眠りを妨げたのは誰かえ?』

ティターニアは欠伸をする


「自分たちで目覚めているわけではありませんの?」


『そこの小娘、面白いことをいうでない。起こされなければ起きぬわ』


ティターニアは神樹に近づくと手を伸ばす

『さて、わらわの力を返してもらうかのぅ』


サーシャの髪がざわざわと浮き上がる


ティターニアが神樹に触れようとした刹那——


ッダァーン


凄まじい音を立て空へ吹き飛ぶ


ティターニアがいた所には


竪琴を右腕で振り切ったサーシャがいた


「だれに……」


サーシャは空を見上げる


「誰に断りを入れて、人様の国の神樹に手を出そうってんだ!?あぁっ!?」


「でましたわー」

「だねー」


『激昂の悪魔ー』


穴の空いた雲が渦を巻き、集まり、弾けた


『よくもわらわに……許さんぞっ!小娘ぇえ!』


大気が震えた


「マーモ、レヴィア、行くよ?」

「フェアリールージュ」

カーテンを脚に巻き付けると

レヴィアとマーモの脚にも巻き付けた


「ぎゃあぎゃあ喚くんじゃねぇぞっ!?年増ぁっ!!」


サーシャは飛び上がると竪琴を放り投げる


竪琴はクルりと回りサーシャの背に並ぶ


「ベルセルク」

タクトを振り下ろすと

サーシャの背後の竪琴から

獣の咆哮の様な音を立て

爪痕が飛ぶ

縦に三本、斜めに三本

立て続けに飛び続ける


ティターニアの体がどんどん切り裂かれる


『効かぬなぁ~』

ティターニアは一回転すると光と共に傷が消える


「へぇ~、やるじゃん。これはどうだ!?」

「ディバインロアーッ」

タクトを天に掲げると

一筋の光が天を打ち


光の矢が流星のように降り注ぐ


ティターニアの体を次々に貫く


『これくらいっ』

「これはどうですの?」

横を向くと巨大な魔方陣から数多の銃口が顔を出している


「カラミティフレアーッ」

無数の銃撃が着弾し、爆発する


煙が晴れると右手、左足を失ったティターニアがいた


一回転すると光と共に元に戻る


『無駄だと——』

「これ……は?」


上を見上げるとレヴィアが鎌を振り下ろす


翼を切り落とされティターニアは落下する


「はっ!とどめだ」

タクトを下に向けると

先端にバチバチと音を立て黒い球体が浮かぶ


「ディザスターロアァッ!」


巨大な黒い雷が落ち行くティターニアを

真っ直ぐ打ちぬく


「やりましたわっ」

「やってねぇーよっ!クソ野郎がっ」

「ほぇ?」


『中々やるではないか……』


翼以外無傷なティターニアが立っている


翼以外……?


『何故じゃ!?何故飛べぬ』


ティターニアは翼がないことに気づく


『まさか……エリュシオンか!』


「いぇ~い」

レヴィアがピースする


『忌々しいものを……覚えおけっ!小娘共!』

ティターニアは光に包まれ、消えた


サーシャの髪が鎮まる

「レヴィア、ないす」

親指を立てる


「でしょ~」

満面の笑みだ


「やっぱりサーシャがいると戦況が変わりますわね」

マーモはサーシャに抱き着く


「で、次は?」

「セレネで噂の魔王と落ち合うよ~」

「わかった」

「そうですわ、このまま空を飛んで向かいませんか?」

「セレネの結界にぶつかる」

「そうでしたわね……レヴィちゃんゲートをお願いしますの!」

「もう出してる~まったく隊長は使えないのに魔女使いが荒い」

レヴィアはため息を吐きながらゲートをくぐる


「ハーフエルフ使いも荒い」

サーシャは疲れた素振りを見せてくぐる


「あぁ、荷が重いですわ……この二人」

頭を押さえてマーモもくぐる


そして魔王は後悔に溺れる


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