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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
神格を持つ者と破滅の王
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第三軍『襲撃』

ここはクロード大陸ゲーテ城——


「ベル、あまり食べすぎるんじゃないぞ?」


「大丈夫~」

ベルゼは本を読みながら、クッキーを食べる


「しかし、クロノスは遅いな……」


「調べものだから時間かかるんじゃない?」


二人は温室跡で寛いでいる


「しかし、あんな化け物が現れるとはな……」

「あれはきついよねー。聖王軍勢ぞろいでも痛手は負うよねー」

「あぁ……」


だが、あんな化け物が存在するというのに


何故今まで姿を現さなかった……?


それに、ヨルムンガンドという名……


思い過ごしだといいのだが……


「ねぇ、お姉ちゃん。あの豪華な扉なんだろうね?」


ベルゼは温室の裏側にある青く、宝石が散りばめられた扉を指さす


「ここは魔王城だ。宝物庫かなんかじゃないのか?」

「んー、もう一つ気になるのはさ、ここって短剣の形の島だよね?」

「あぁ、それが?」

「ここは刀身の部分でしょ?」

「あぁ」

「柄の部分って何があるのかな?」

「確かに……」


柄の部分はディオーネの近く……

もしかするとロキ軍の支配下なのか?

これは調べる必要があるかもしれないな……


「お姉ちゃん、階段になってるよー?」

ベルゼは扉を開いている


「こ、こら!何をしているんだ」


「暇だし、行ってみようよ!」

ベルゼは中に入って行く


「仕方がないな……」

ベルフェは肩を落として、後を追う


階段は長く続く


下へ……下へ……


壁は青いレンガのようなもの


所々に淡く、白い光が灯っている


一体何処まで続くのだろうか……


眩暈がする……


「ベル……?」


ベルフェの視界がグルりと回る


——?


気づけばそこは広い草原のようだった


「お姉ちゃん、大丈夫?」


ベルゼが手を差し伸べる


「あぁ、僕は……いったい……」

「階段の途中でベルに向かって倒れてきたんだよ?」


「そうか……すまない」

ベルフェは手を取り立ちあがる


広く、草だけが生い茂る草原


空は赤く……月は青い……


グリモワールでは見たことがない


セレネの景色に近いと言えば、近いかもしれないが……


「ここは……なんだろうな……」


「王墓……と呼ばれる場所だよ」


後ろで足音がする……


「あ、お水ありましたー?」

ベルゼが手を振る


「待て……」


いったい……お前はダレだ……?


「ベルゼ!離れろ!」


ベルゼと男の間に入る


「そんな化け物を見るかのような目で見られてもな……」

片手に水の入ったグラスを持つ男は、不愉快そうだ


「こんな気配……魔物?人か?」


「人……だよ?」

男はゆっくりと歩み寄る


動け……動け……動けッ!


ベルフェは睨みつけたまま動かない


「そんなに怒ると可愛い顔が台無しだよ?」

男は笑う


「そうだよー?どうしちゃったの?お姉ちゃん」

ベルゼはベルフェを押しのけ、男に近づく


「やめろ!ベル!」


「お水ありがとうございます」

笑顔で男の前に近づき、グラスを受け取る


え?


「かはっ——」


ベルゼが血を吐き……


倒れる——


男の左手には赤く染まったクリスが握られている


何が起きた?


ベルが男から水を受け取って……












ベ……ル……?












「ベル!」

ベルフェはベルゼに駆けより

抱えると男と距離を取る

「しっかりするんだ!」

「お姉ちゃん……?何が……?いた……いよ……」

ベルゼの腹部が赤く染まってゆく

「まってろ!すぐに——」

すぐ傍に閃光の槍が刺さる


ライトニングノヴァ……?


「ベル、すまない」

ベルフェはアスクレピオスの杖を発動させ

ベルゼの胸元に差し込み

男へと走り出す


ケリュケイオンを前にかざす

「シャッフルファング」

無数の爪が男に襲い掛かる


ひらひらと

右へ、左へ、左へ、右へ

男は避ける


「フォトン」

男の脚が地面にめり込む


「ライトニングノヴァ」

閃光の槍が男に向かう


男は後ろに体を倒し

地面にめり込む


すかさずベルフェが

杖を振り下ろす


ガンッ


地面を叩く


「君は魔導士だろ?杖で殴る魔法なんて聞いたことないけど」

男は背後に立っている


「エアリアルバレット」

男とベルフェを竜巻が打ち上げる


「今度は自分ごと魔法の対象に……面白いことするね」

男は笑っている


「黙れっ!プリズムロア!」

巨大な氷柱が男を目がけ地面から突き出す

男は氷柱の先を掴み

勢いを利用してベルフェに飛ぶ


「発想はいいんだけど、空中でも態勢を崩さない奴もいるんだよ?」

男はベルフェに顔を近づけ笑う


ベルフェが笑う

「レイジングフレア」

ベルフェの背後、空から火球が降り注ぐ

「それじゃあ君も——」

「フォトン」

ベルフェは地面に勢いよく叩きつけられ

阻む者が無くなり、火球は男に降り注ぐ


火球は地面に落ちると、凄まじい音を上げ爆発する


「ケホッ——」

ベルフェはボロボロになりながらも立ちあがる


ぱちっ……ぱちっ……


煙が晴れると


男が無傷で拍手している


「流石は閃光の魔女……と言ったところかな?」

「なっ——」

「魔物や人間なら今ので終わってるね」

「何を……言っている?」

「僕は僕さ」

見たこともない……

笑顔と呼べるのか判らない顔で

男は笑う


「少し——。昔話をしよう……世界の端で少年は生まれました。在るのは魔物、城、世界……少年は幼くして悟りました……城を拠点とし、魔物を駆使して……世界を壊せばいいとっ!」

男は長い銀髪を靡かせ、天を仰ぎ高笑いした


「く……狂っている……」


男は不思議そうな顔をする


「狂っているのは君たちだよ?無駄に繁栄し、無駄に世界を貪り、無駄に生きる……何が残るんだい?」

男はニタァっと笑う

「何も……ノコラナァイ……ッハハハハァ」

男は笑い続ける


どうする……?

ベルゼの傷は?


悟られないように男の背後……


ベルゼを見ると

アスクレピオスの杖が光っている


順調に治癒は行われているが……

消費するマナ、傷の深さから

まだ完治はしていない……


「そぉんなに妹が気になるぅかぁ~い?」

男は笑う


「お前の相手は僕だ!かかってきたまえ!」


男は俯く

「なら——」

男が消え


目の前に現れる

「こういうのはどうだい……?」

「なっ」

ベルフェは後ろへ飛び退く


「アストラルゲート……!?」

男は右へ、左へ消えては現れる


「さぁさぁ、どうする?」

「これでも僕に」

「勝てるつもりぃ~?」

男が眼前に現れ、クリスを突き立てる

「ディレイ」

「なっ——」


男の左手は動きが鈍くなる


「待っていたよ、この時を……」

ベルフェは左腕から血を流す


「攻撃するときは動きが……読めるからね……」

「空間座標をずらせばこんなものっ」

「君がクリスを刺しきり、引き戻して、左腕を座標から抜く頃には終わっている」

「ディレイを命ある者に使う代償はわかっているのか……?」

「あぁ」

ベルフェは身動き取れない男をしり目に、苦しそうに歩く


「マナを大量に消費……する……ははっ、目の前が霞むよ……」


男は右手を空へ翳す

「ケラウノスーッ!」

赤い空は大きく穴を空け

振動と共に巨大な閃光の剣が舞い降りてくる


「君は……やはり使えるんだね……僕の選択肢は、間違ってなかった……」

ベルフェはベルゼに覆いかぶさると


剣は地面を抉り、刺さった


男は左手の自由を取り戻すと


男は振り返り指を鳴らす


剣は消え去り、地面には何も残ってない


「閃光の魔女……中々やるなぁ……しかし、彼女も人が悪い。ここまで強いなら言ってくれればいいものを……あぁ~あ、ふざけてやるんじゃなかった」


男はゲートを開き


消えていった


そして、二人はその光景に絶句する

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