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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
神格を持つ者と破滅の王
49/71

第二軍『宝具』

アスティア帝国執務室——


「しかし、簡単に宝具の行方を探すことはできませんわね」

マーモは本を読み漁る


「作られた宝具が誰に渡されて、何に使われ、何処へ向かったか……知る者はいない」

レヴィアは棒状の飴を、マーモに向けて言い放つ


「はいはい、わかりましたから探してくださいますか?」

「むぅ~、付き合い悪い~」


レヴィアは扉へ向かい歩き出す


「何処へ行きますの?」

「図書館~」


扉が閉まる


「何か手がかりがあれば……」

マーモは椅子にもたれかかり、宙を仰いだ


——


「図書館~図書館~」

レヴィアは軽快に図書館のドアを開く


ここは帝国図書館


大陸中の古い文献や重要な魔導書

叡智の全てを注ぎ込んだ施設である


魔の道を進むなら

帝国図書館と冒険者ギルドの資料を全て読め

さすれば、永劫の刻印が授けられるだろう


大昔の魔導士が残した言葉だ


レヴィアは受付に進む


「ねぇねぇ、宝具関係の本はどこ~?」

「これは聖王様。7-18の棚にございます」

「ありがと~」


レヴィアは奥に進み、4列目を左へ曲がる

奥へ進み、18個目の本棚の前で立ち止まる


「おおいな~」

レヴィアは聳え立つ大樹を見るかのように

見上げると——


ゴンッ

「あぅっ」


本が一冊落ちてきて

レヴィアの頭を強打した


「申し訳ない、大丈夫ですか?」

一人の男が声をかけてくる


「いたぃよぉ~」

レヴィアは涙目になりながら、動きを止める


あれ?この声……


走りだし、8の列に向かうと


『あ』


レヴィアとクロノスが顔を見合わせる


「レヴィア~」

「クロちゃ~ん」

二人はがっちり抱き合う


「丁度お前に会うか考えてたとこなんだ」

「同じく~、助けがほしくて~」

「冥府の」「宝具の」

『ことなんだけど……』


『はい?』


——


二人は図書館の外に設置された休憩所に腰かけ

紅茶を嗜む


「さっきは悪かった、ここは奢るから許してくれ」

「なら許す~」

レヴィアは脚をぶらぶらさせ、ご機嫌のようだ


「で、宝具の何が知りたいんだ?」

「各聖王の弱点を補えるようなものの在りか」

「難しいな……例えば?」

「ベルフェは近接戦闘が出来ない~」

「ならアイギスの盾みたいな防御だな」

「マーモは火力不足~」

「デュランダルのような能力の底上げ」

「ベルゼは単体向きの攻撃しかない~」

「ミストルティンみたいな範囲攻撃」

「ルシフは防御が下手~」

「んー、それなら楯無かなー」

「楯無~?」

「あぁ、防御特化の宝具だ」

「何処にあるの~?」


クロノスは街の北東に位置するここから

南西を指さす


「四神の森の玄武だ」

「おぉ~、その手があった~」

レヴィアは手をポンッと叩く


「ん?」

「三匹狩れば三つ手に入る~」

満面の笑みだ


「おいおい、簡単に言うな……」

クロノスは苦笑いする


「他に目ぼしいものは~?」

「そうだな……パンドラの箱、アルテミスの弓、フレイヤの羽衣、八咫鏡、オルフェウスの竪琴、ガラハッドの盾、グラム……ここら辺は欲しいと思っている」

「やっぱりマニアは違う~」

「あと、伝説上だがエクスカリバーと聖杯も欲しいな」

「聖杯って伝説上なんだ……」

レヴィアはカタカタ震えだす


「どうした?」

「なんでもないの……それより、竪琴と弓は聖王がもってるよ~」

「先越されてたのか……」

クロノスは肩を落とす


「それで~?冥府を司る者について何が知りたいの~?」

「あぁ、名称、特徴、強さかな……強さは想像でいいよ、どうせ伝説上の生き物だ」

「強さは騎士が1000人いても勝てないかな~。さっき見たけど~」

「やっぱり出くわしてたか」

「うん~。気づいてたの~?」

「あぁ、こっちも出くわした」

レヴィアの顔が真剣になる


「急がないと不味いね……」

「あぁ、世界が壊れるかもな」

「レヴィたちが遭遇したのは大気を司る者バハムート……クロちゃんは?」

「八つの光る瞳……裏側で暴れていた」

「次元を食む者ファフニールだね。他には、遡る者ウロボロス、光を編む者セラフィム、施す者ティターニア、死を操る者ファラク……そして、一同に身を捧げ真なる王が目覚める」

「伝説の一部だな」

「その名はヨルムンガンド」

「!?」

クロノスは固まる


「クロちゃんの名前、皆が引っかかってた理由がこれだろうね」

「え、じゃあ俺が強くなるの?目覚めるの?」

「それはないよね~。これ以上強くなって何になりたいの?神にでもなるの?」

「神になれば本を読み続けられるなら」

クロノスは真剣な顔で答える


「も~、クロちゃんと話してると馬鹿らしくなる~」

レヴィアはいつもの笑顔に戻った


「失礼だなー」

クロノスもあっけらかんと笑う


「話戻すよ~?」

「あぁ、悪い」

「ウロボロスは尾を咥えた巨大な蛇、バハムートは黒い龍人、ファフニールは八つ目の蛇、セラフィムは天使、ティターニアは妖精、ファラクは闇のような者。伝承にはそうある」

「聖典には?」

「あんな使えない辞典には登録されてないよ~」

「そうか……ありがとう」

「これからどうするの~?」

レヴィアは立ち上がるクロノスに問う


「あぁ、まずはセレネに向かう」

「まだ向かってなかったんだね~」

「ちょっと野暮用でな」

「じゃあ、こっちも終わったらセレネに行くね~」

「あぁ、頼む」


クロノスが歩き出すとレヴィアが呼び止める

振り向くと、抱き寄せられ

口づける——


「すぐに会えるおまじない~。じゃあ……ね?」


呆然と立ち尽くすクロノスを置いて、レヴィアは走り去る


——


クロちゃんに会えたクロちゃんに会えた

クロちゃんに会えたクロちゃんに会えた

クロちゃんに会えた……


——ズダンッ


扉が勢いよく開かれる


「なんですの!?何かありましたの!?」

マーモは驚く


「今なら空も飛べる気がする!」

レヴィアはやる気に満ち溢れている


「いや、レヴィちゃんは元から飛べそうですけどねー」

マーモは苦笑いをする


「で、収穫はありましたの?」


レヴィアは椅子に腰かける


「聖王軍は厳戒態勢で駐留、神格を持つ者の捜索は放棄」

「はい!?それでは魔王がいた頃と同じではないですか?」

マーモの脳裏に鮮烈な記憶がよぎる


城壁からは出られず


毎日を怯えながら


辛辣な生活を送る


「うん、あの頃よりもひどくなるかも」

「そんな……」

「あくまで準備ね~。そうならないようにするのが、レヴィ達の役目~」

レヴィアは笑う


「そうですわね。私たちはどうしますの?」

「四神の森で宝具を手に入れ、サーシャと合流する」

「そうですわね。サーシャがいるだけで戦況は大きく変わりますわね」

「アルスは……」

レヴィアは俯く


「私たちが説得しますわ!今はやれることを、ひたすらやりますわよ!」


レヴィアは静かに笑う

「じゃあいこ~」


マーモは軍に指示を出し

支度を終わらせ、街の入口へ向かった


「おそいよ~」

レヴィアがむくれて、しゃがんでいた


「仕方ありませんわ。私はレヴィちゃんみたいに、空間移動の術はありませんので」

と、目の前でレヴィアが指で空を切る


「さ、いくよ~」

アストラルゲートに入って行く

「あー、それそれ、それですわ」

うなだれながらマーモもくぐる


森の開けた場所——


目の前には赤く炎に包まれた大きな鳥がいた


「お出迎え?」

レヴィアが首を傾げる


「いきなりですわね……」


『また人の子か……』


「頭に直接!?」

マーモは頭を押さえる


『ほぉ、そちらの魔女は驚かんか……』


「なれてるからねぇ~」

レヴィアは鎌を取り出し構える


『意気揚々としているところ悪いが……もうここには我しかおらん』


「どういうことですの!?」


『青龍も玄武もやられてしまってな……』


「誰に~?」


『銀色の髪の青年だ……我に興味を向けず帰っていったがな……』


「で、やるの~?やらないの~?」

レヴィアは鎌を向ける


『我はこの森を守らねばならない……見逃しては貰えぬか?』


レヴィアは鎌をしまう

「いいよ~?代わりに情報をくれる~?」


『なんの情報だ?』


「ウルスラグナ……」


『はて……何処かで聞いた名だな……よかろう、調べてやろう』

朱雀は羽を一つレヴィアに授ける


『これで我と会話が出来る……何か判れば伝えよう。感謝するぞ、魔女よ……』


朱雀は炎に包まれ、消えた


「何が起きたかさっぱりですわ」

マーモは立ち尽くす


「守護者がいなくなって森が無くなるのは困るからね~」

「レヴィアちゃん、狩ろうとしてましたわよね?」

「うん、青龍の宝具はいらないから、青龍以外をね~」


レヴィアはまた空を指でなぞる

「ほら~、オルフェに行くよ~?」


レヴィアはゲートに入って行った


「よくわかりませんけど、わかりましたわ」

マーモは頭に手をあて、後に続く


二人は再会を……


そして別の二人は窮地を迎えていた


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