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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
神格を持つ者と破滅の王
48/71

第一軍『航海』

「で?これからどうするんだ?」


ここは月夜見亭——


ジンとルシフの着物がよく映える宿


「まず、南の森の神格を持つ者を討伐。そして、クロード大陸へ渡ります」


「ほぉ……ゲーテ城に手がかりがあるのか」


「はい、全ては話せませんが……ゲーテ城には先代の墓、つまり王墓があります」

「はぁ?先代ってクロノスの親か?」

「……」

ジンは窓から夜の街並みを眺めてから話す


「そうですね……そういうものです。そして、そこに兄様は手がかりを残しているはずです」

「それならジンたちが来る前に気づくんじゃないか?」

「いいえ、城の裏側にありますので……それに、刀の時のように、ガーゴイルを使ったりしたのでしょう」

「へぇ……で、ユミル兄様を殺したのは誰なんだ?」

「憶測ですが……ロキという者ではないでしょうか」

「じゃあ、今回の件の首謀者が!?」

「はい、その可能性が出てきました」

「そいつは一体何者なんだ!?」

「さぁ……魔王のなりそこない……なのではないですかね」

ジンの顔に闇が落ちる


「ってことは魔物なのか?」

「だと思いますよ。これ以上は何も」

そう言ってジンは微笑んだ


「仕方ないな……行ってみればわかるか」

ルシフは目を閉じ眠りにつく


兄様……そこまでして役目を果たさねばなりませぬか……?

王は今でも優しく、温かい方です……

それでも……茨の道を歩かせねばならないのですか……?


ジンは月に問いかけ


眠りについた


——


目を覚ますとルシフはいなかった


ジンは支度をして、刀を手に取る


すると、ルシフが部屋に戻ってきた


「待たせたか?」

「いえ、何処に?」

「あぁ、軍の準備だ」

「起こしてくだされば」

「気持ちよさそうに寝てたからな、姉様、姉様って」

ルシフが悪い顔で笑う


「なっ——」

ジンの顔が真っ赤に染まる


「カッカッ、冗談だよ」

ルシフは高らかに笑い、ジンの頭をくしゃくしゃ撫でた


「もぅ……姉様は……」

ジンは恥ずかしそうに笑う


——


宿の前に待機していた騎士100人の隊列は壮観だった


隊列を従え、ルシフとジンは歩き出す


「気持ちいいもんだろ?」

「私はあまりこういうのは……」

「ジンは根暗だなー」

「慎ましやかと言ってください」


聖王軍の行進を民は手を振り、完成を上げながら見送る


「そういえば、他の奴らはしっかりやってるかなー」

「心配なのはクロノス様のパーティーですかね」

「ベルゼが前衛、ベルフェが後衛、クロノスが遊撃。問題ないだろ」

「いえ、姉妹でクロノス様を取り合ってないかどうか……」

「それはありえるなー」


そうこうしている内に森に着く


「全軍、捜索開始ー!発見次第笛を吹け!」

『はっ!』


森に騎士達が散ってゆく

ものの数分で白い外套は見えなくなった


「どんな奴がくるかなー」

「ウロボロスの様なものの可能性も……」

「縁起でもないこと言うなよ」

ルシフは苦笑いをする


——ピィーッ


ビクッと音をたて、二人は音の方角を見る

「いっきなり驚かすなよな……」

「いきますか」

「あぁ」

「私は空から」


ジンは大地を強く蹴ると

木から木へ飛び移って進む


ルシフは森へ向かい走り出す


開けた場所に出ると


巨大な亀が傷つき、伏せていた


「これはお前らが?」


「いえ、来た時には既に……」


遅れてジンが到着すると

「え?」


ジンの獅子王が光りだした


獅子王を縛る鎖が解け、刀が自ら抜かれる


「こ、これは!?」


ボンッと音を立て


刀身が小さな……


「猫?」

「虎じゃ!」

白い猫ほどの小ささの虎が喋った


「まさか……白虎?」

「その通りじゃ。おーい、そこの赤い娘ー」

ルシフは自分を指さすと

首を傾げる


「おぬしじゃ、おぬし」

「こいつはジンのペットか?」

近づいてきたルシフが言う


「聖王の癖して礼儀がなっとらんのー」

「四神の森の白虎の宝剣です。小さな猫になりました」

「だから虎じゃい!」

「ほー、あの名高い白虎か……ひとまず信じるとして、何か用か?」

「玄武がおぬしを呼んでおる」

「玄武?」

「あれじゃ」

白虎が小さな右足を、巨大な亀に向け伸ばす


「あれが?四神の森にいるんじゃないのか?」

「わからんが……とにかく呼んでおる」


ルシフは玄武に向かい歩き出す


「シロでいいですか?」

「は?なんのことじゃ?」

「あなたの名前です」

「誰がじゃ」

「ほーら、おいでおいで~」

「あーもう、シロでいいから愛でるでない」

ジンは無理やりシロを抱えると可愛がる


「何の用だ?」

「おぉ、お前が剣聖か……?」

「あぁ、そうだ」

「一度戦いたいと思っていたが……叶いそうにないようだ……」

玄武は今にも結晶化しそうだ


「何故、このようなことに?」

「四神の森に……銀髪の男が現れてな……青龍を殺し……この玄武をこのような所まで吹き飛ばしよった……」

「銀髪の男!?」

「あぁ……」

玄武の傷をよく見ると、鋼よりも頑丈そうな甲羅が

抉り取られている……


「人……か?」

「姿形はな……振るう力は魔物を超えていたがな……」

「きっとロキだな……」

「ロキ……?何者だ……?」

「よくわからんが、世界を壊そうとしてるみたいだな」

「それは大変だな……そうだ……もう動けそうにない……宝具をもってゆけ……」

「いいのか?」

「あぁ……世界が壊れては戦いも楽しめんからな……」

「でわ、有り難く頂戴する。また……機会があれば」

「あぁ、その時は容赦せんぞ……?」

玄武は結晶化し、その場に黒く、甲羅の形をした石が転がる


ルシフはそれを拾うとジンの元へ歩く


「どうじゃった?」

シロが問う

「宝具を貰った」

「楯無、使い方はその時が来たらわかるじゃろ」

「シロは武器にならないのですか?」

「わしか?わしも……その時が来たらな」

そう言って刀に戻ると、鞘に納まり

再び鎖で縛られた


「シロ?」

「えぇ、名前をつけました」

「ジンは変わってるよなー」

「そうですか」

「宝剣に別名を付ける奴は初めて見た」

「呼びやすかったので。で、何があったのですか?」

「どうやらロキにやられたみたいだな」

「やはりですか……」

「なんだ、驚かないのか?」

「いや、傷が深すぎるところと、ここまで吹き飛ばせると考えれば自然に」

「いやー、やっぱりジンは頭いいわ」


ルシフは楯無を見つめた

「で、他に神格を持つ者は見当たらないようだが、どうする?」

「クロード大陸へ向かいましょう。何やら嫌な予感がします」

「あぁ、では」


「全軍、港に向かい前進!」

『はっ』


今度は軍の隊列の後ろからついていく


「しっかし、そんな化け物みたいな奴相手にしなきゃならないのかー」

ルシフは頭の後ろで手を組み、歩く


「一歩間違えれば、クロノス様に挑もうとしてたのですからこれくらい」

ジンは笑う


「それもそうか、これはマーモがいつも言ってるんだが……」


『今やれることだけを、ひたすらやる』


「そうすればなんとかなるらしい」

ルシフは笑う


「クロノス様も、そのようなこといつも言ってます」


「じゃあ、ロキを泣かせるために、今出来ることは?」


「王墓へ向かう」


「じゃあ、急ぐか」


「はい」


二人は軍の先頭へと駆けてゆく


そして船旅が始まる



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