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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
神格を持つ者と破滅の王
46/71

第二軍『アスティア』

ここはアスティア帝国執務室——


ゲートが開く


「はい~、到着~」


「また戻ってきてしまいましたわ」


二人はソファに腰かける


「で、何からやりますの?」


「ん~、レヴィはとっとと終わらせてクロちゃんの元に馳せ参じたい~」

ゴロンと棒状の飴を舐めながら横になる


「その割にはゆったりしてますわね」


「ん~、動くのめんどい~」

目を閉じる


「少しはやる気出しませんの?」

マーモは肩を落とす


と、ドアが開く


「レヴィア様、軍の準備が整いました」

綺麗な顔立ちの青年が入ってきた


「ごくろ~」


「準備がいい割にやる気が感じられませんわ……」


「でわ~、行軍開始~。目標は~北の墓地~」


「はっ、でわお先に出発いたします」

青年は出て行った


「いってらっさ~い」


「で?私たちは?」


「特殊任務……宝具を集める~」


「はい?そんな任務ありました?」


「だから特殊~。ほんとは一人でやろうとしてたけど~」


「今やる必要がありまして?」


「ロキ軍と戦うのにカードが足りなさすぎるから~」


「なるほど……でわ、古い資料を漁りますか」


二人は黙々と本を読み始める


一時間後


「そろそろいくよ~」


「どこへ?」


「増援」

レヴィアはピースする


ゲートが開き二人が抜けると


そこは墓地だった


「かかれ~」

「怯むな!左右から周りこめ!」

「砲撃隊、魔法使い迎撃用意!」

「てーっ!」


先程の青年が駆けてくる

「お待ちしておりました」


「劣勢~?」


「若干ですね」


「でわ、加勢しますわ」


マーモがブリューナクを構える


構えた先には、大勢の死人の騎士の軍隊がいた


「エインヘリアル……死せる者の行進……レヴィちゃん情報は?」


「う~んと、殺しても死なないし、死んだ兵士は仲間にされる……何処かに指揮をとる者……核になる死者がいるはず~」

「う~ん、めんどくさいですわね……皆の者、下がりなさい!」

マーモがブリューナクを宙に投げる


騎士たちは距離をとると

眼前に銃口が現れ、エインヘリアルを取り囲む

「焼き尽くせ!カラミティフレアーッ」


銃弾が放たれ爆発すると

辺りは煙に包まれる


「マーちゃん、全部はずれっぽい」

「はい?」


煙が晴れると兵士たちは立ち上がる

「核は何処ですの……?」

「面倒だから一気に処理しよ~」

「どうしますの?」

「マーちゃん、銃撃で後ろに押しやれる?」

「出来ますが……壁ですわよ?」

「問題……な~し」

レヴィアは墓石に腰かけてゆらゆら揺れている


「では」

マーモが右手を空にかざすと

銃口がエインヘリアルを再び取り囲む


「いきますわ……よっ!」

右手を振り下ろすと

エインヘリアルが壁に……


壁がない?


「ダンシングラビット」


壁があった筈の場所に、ぽっかりと開いた大穴が

エインヘリアルを呑み込み

噛み砕く


ゴギッ


「ね……?」

「あー、レヴィちゃんと組んで正解でしたわ」

マーモは苦笑いをする


「で、核はどこですの?」

「う~ん、多分あれじゃないかな?」

レヴィアは一際大きな十字架に石を投げつける


すると、見る見るうちに十字架が大きな鬼へと姿を変える


「あー、グールですのねー」

マーモは引き攣った笑顔で言った


「あれは見破るのが困難だから気にしな~い……の!」

レヴィアは再び石を投げる


グールは二人の方にゆっくりと歩み寄る

「マーちゃん?」

「わかってますわ、相手が悪すぎる……全軍後退し、待機ーっ!」

『はっ』


一同が下がり墓場の中心には二人とグールが残される


「援護頼みますわよ」

マーモは背中のティソーナを抜く


「は~い」


「はぁああああっ」

マーモは走りだし、グールに斬りかかる

グールは左手を前に出し防ぐ

瞬間にマーモはニヤッと笑い

トリガーを引く


ッダーン


刀身で爆発が起き、グールの左腕が地に落ちる

瞬きを一回する間にグールの右腕がマーモの眼前に迫る

「くっ」

マーモは剣で受け止めると吹き飛ぶ


吹き飛んだ先には木の網があった

「レヴィちゃん!助かりましたわ……なにか撓ってません……?」

「ウッドレイド……そして、マーちゃんバズーカー、ごー」

レヴィアは右手を前に振った


「もしかして……なっ」

撓った木の網がマーモを弾き返す


勢いよく飛ぶマーモは剣を前に出すと


グールの胴を貫いた


そのままマーモは脚を地面に滑らせ着地した

「レヴィちゃん!人をなんだと思ってますのーっ!」

「マーちゃん、いい仕事した……」

レヴィアは右手の親指を立てた


「まったく、グールの腹を通り抜ける羽目になるとは……」

マーモが足元を見ると、紫色の球体が割れている


「まさか……エインヘリアルの核?」

「御名答~、あとは~まかせ……て?」

レヴィアは墓から飛び降りると

そのまま地面に消えた


グールが辺りを見渡すと

背後から現れ、左足に強烈な足払いをすると

グールが左側に倒れ

「ディレイ」

ない——


ゆっくりと倒れ行くグールの首の下に

エリュシオンを逆刃にして置くと

ゆっくりとグールの首が刎ねられてゆく


首を落とし切ると、首の切り口から

脚に向かって鎌を引きずりながら歩く

斬り終わると指を鳴らす


ダァーンッ


ディレイが切れて三つに分けられた体が地面に落ちた


「終了……?」

レヴィアが振り向くと

グールが結晶化した


「動く相手にディレイとか……どんなマナの量してますの!?」

「マーちゃんの10倍くらい?」

「もういいですわー」

マーモは遠い目をしている


「そこの人~、おいでおいで~」

先程の青年が走ってくる


「はい、いかがなさいますか?」

「次は~、南の森ね~」

「はっ!行軍いたします」


「さっ、マーちゃん続き~」

ゲートを開きマーモを引きずりながら

執務室に戻る


「最近扱いが雑ですわね……」

「なにかいったぁ~?」

「なぁんでもないですわー」

マーモはふてくされながら本を読み始める


また一時間後


「マーちゃんいくよ~」

レヴィアがゲートを開き

二人がくぐると


湖の上に巨大な黒い岩が浮いている

水面につくか、つかないかの所で

ふわふわと浮いている

表面からは沢山のルビーが突き出している


「あれは……なんですの?」

「……見たことない」

二人はじっと見つめる


「そもそも神格を持つ者ですの?」

「マナは感じるよ~?上級の魔物程度だけど」

二人は揃って首をかしげる


「まぁいいですわ、歩兵は全軍待機!銃を構え、魔法詠唱始め!」

全軍が岩を取り囲む

「てーっ!」


数多の銃弾と魔法が襲い掛かる


が——


びくともしない


「どうしますの?」

マーモが振り返ると

レヴィアは木にもたれかかって寝ている


「ちょ、えー」

マーモはレヴィアに近づく

「昼寝は後にしてくださいませんか?」

「ん~、やる気が……出ない」


マーモは困った顔をして

岩に向き直る



岩が少し剥がれている?


「全軍に告ぐ、私が今から打ち込む場所に一斉放射せよ!」

「はっ!」


マーモは剥がれかけている部分をブリューナクで打つと


全軍が構えた


「てーっ!」


岩から煙があがる


煙が晴れると……


岩から大きく剥がれた内側が


赤く……脈を打っている?


嫌な予感がする


「全軍、十分な距離を取り待機せよ!」

『はっ!』

「盾よーいっ」

『盾よーいっ』

隊列の一番前の者が大きな盾を構え

岩を取り囲む城壁となった


マーモはブリューナクを宙へ投げ

ティソーナを空へかかげる


「一気に決めますわよ」

マーモの上空に大きな魔法陣が現れ

数多の銃口が顔を出す


「エンシェントフレアーッ」

ティソーナを振り下ろすと

銃弾が降り注ぎ、爆発し続ける


銃撃が止まり、煙が晴れると

岩肌がブランと二つ細い岩からぶら下がっている


レヴィアがビクンと動き立ちあがる


「マーちゃん!危ない!」

レヴィアはマーモの前に飛び

二人を包む大きさの空間を前方に展開した刹那——


岩がグルンと一回転し

二つの翼を大きく広げ


叫ぶ


グァロロロロロロロ


——ッダダダダダダ


周囲で幾つもの爆発が起きた

煙が晴れると

兵士の盾は溶けてなくなっているが

全軍生きていた


湖に片足をつけるか、つけないかの所で浮くそれは

長い手足、漆黒の体、鋭く赤い眼光に大きな口

翼の内側は赤く脈を打っている


「バ……バハムート……」

レヴィアは呟いた


「——全軍退避ー!」

一斉に騎士たちは逃げる

蜘蛛の子を散らすように


だが、バハムートは動かない

「どうしますの……?」

「あれは……伝説上の神格を持つ者……対処するにも情報がなさすぎる……」

珍しくレヴィアは真剣に対象を見つめている


膠着状態が五分ほど続く


二人にとっては一時間にさえも感じた


俯いていたバハムートは

何かに気づいたように空を見上げる


そして


ゆっくりと空へ羽ばたいていった


森をなぎ倒して


「助かりましたわ……流石に分が悪すぎますわ」

「あれはきついよね~」

いつものレヴィアに戻っている


「しかし……取り逃がしたのは後悔に繋がりそうですわね」

「クロちゃんとジンちゃんがいたら、なんとかなったよね~」

「ま、まぁともかく、情報を集めましょう」

「そだね~」


レヴィアがゲートを開くと二人は消えていった


これから起こる災厄に


一縷の希望を見出す為に……


そして三人は里帰りをする

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