表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/71

暫しの別れ

クロノスとジンが館に戻ると皆が揃っていた


「おそいですわ!」


「は?」


「急を要する事態でね。君が帰るのを待っていたんだ」


クロノスとジンは広間の椅子に座る


大きな黒板の前にマーモとベルフェ

それに向かい合うようにベルゼ、ルシフ、レヴィア

クロノスとジンはその両方を眺めるように座った


「でわ、始めますわ。まず現在重大な問題が三つありますの。一つ目は世界各地で目覚める神格を持つ者、ベルフェ」

ベルフェは眼鏡をかけて、黒板に髪を張り出す


「これは分布図だ。確認されたのは、リオスの森、アスティア山脈、あと先程西の湖でリヴァイアサンが確認されたようだ」

「それ大丈夫なの?」

ベルゼが慌てる


「そうですわね、すぐに聖王軍を100人ほど……」

マーモが口元に手を当て深刻な顔をする


その時、クロノスは机に結晶を置いた

「それはなんですの?」

「リヴァイアサンの結晶だ。もう倒してきた」

「はい!?」

「えぇ、確かに。クロノス様が倒されました」


ジンは詳細を説明する

でたらめだとか、なんだかんだ言われている


と、急にジンが皆を集めて小声で話し始める

ベルフェの目つきが鋭くなる


マーモは髪を耳にかけ、真剣な顔だ


ベルゼは何故か泣きそうで


ルシフはニヤニヤしている


と、レヴィアが振り返りこちらにやってくる

「ちょ、レヴィ——」

ジンが言い終わる前に


レヴィアはクロノスの前で

「め、めぇ~……」

「は?」

「めぇ~?」

上目遣いで鳴いている


「ど、どうしたんだ?」

「そんなに羊さんが好きなのかなーって……」


羊?


聖なる羊=エコー


あぁ、なるほど……


「おい、ジン!お前——」

目の前に鎌が差し出される

「ちょ~っと詳しくお話を聞かせてもらうね~」

光を失くした瞳で笑う


「レヴィア……様?話し合おう、な?」

「ルシフ~、そこの部屋を借りるね~」

レヴィアはクロノスの首を掴み、引きずりながら消えて行った


「いや、まぁ流石の僕もデレデレしすぎだと思うから止めはしない」

「お姉ちゃんが言う通り最近ひどいよねー」

「カッカッ、魔王なんだそれぐらい許してやろう」

「姉様は甘いです」

「ルシフは興味がないから余裕なんですわ」


刹那——

四人は視線を通わす


『エコー許すまじっ』


バタンッと音を立てて扉が開かれる


レヴィアがぐったりしたクロノスを、ずるずると引きずってきた

「さぁ、続きをやろ~」


「レヴィア……怖い……」


皆は定位置に戻った

「何があったのかは聞かないでおくよ。僕は巻き込まれたくないからな……さて、神格を持つ者なんだが……聖王軍の騎士100人相当の力がある。そこで、僕たちが帯同して討伐しようと思う」

「そういうことですわ。今回は遊撃を担うサーシャとアルスが不参加の為、地道な討伐になりますわ。心してください。」


「はい、質問」

クロノスが手を上げる


「なんですの?」

「どうして緊急事態に不参加なんだ?」

「サーシャは寝てた~。アルスは……交換条件がきつすぎて……」

レヴィアは俯く

「ま、レヴィアは悪くないから俯くな」

クロノスはレヴィアの頭をなでる


レヴィアは微笑み、顔を上げた


「続けてもいいかい?」

ベルフェは少し睨んだ


「あぁ、すまない」


「そこでだ、パーティーを組んで行動しようかと思う。僕とベル、マーモとルシフ、レヴィアの三つのパーティーで行こうかと思う」

「ちょっと待て、レヴィア一人はきつくないか?」


マーモが笑う

「あら、言ってませんでした?レヴィちゃんは聖王二人がかりでもきついくらい強いんですのよ?」


「へー、そこまでとはな……」

クロノスはふと、空を見て笑う


「なぁ、それ俺とジンも参加していいか?」

「な、何を言っているんだい?君は」

「そうですわ、得体のしれない男を騎士の前に出せませんわ!」


「俺の組には騎士はいらない」

クロノスは笑う


ベルフェは肩を落とす

「マーモ、言っても無駄なようだ。せっかくだ、力を借りようじゃないか」

「そうですわね……」

マーモは頭に手をやる


「但し、条件がある」

「なんだい?」

「組み合わせは俺が決める。行先も、つまり指揮は俺がとる」

「まぁクロノスになら任せても構いませんが……」

マーモは俯き、考える


「これは先に残りを説明したほうが良さそうですわね」

「あぁ、そうしよう。二つ目は聖王軍、ゲーテ軍に次ぐ第三勢力……ロキ軍の存在だ」


ロキ……何処かで聞いた様な名だな


「落日の首謀者であり、各地でゲーテ軍を装っていた輩だ。調査の結果、そろそろ動き出すのではないかとのことだ。そこで、各地で情報収集及び、討伐をかかげる」

「つまり、滞在も条件か」

「そういうことですわ」


ベルフェは大きく深呼吸をした

「三つ目だが……ジンの兄の仇……接触していた男の情報が入った」


ガタッ


ルシフとジンが立ち上がる


「煩くなるのは嫌いだ。反応は許可するが黙っていてくれたまえ……」


二人は顔を見合わせ座った


「当時、ジンの兄とリオスで行動を共にしていた男の噂がある。腰元まで伸ばした銀髪の男だ」


その風貌も覚えがある気がする……


「そこでリオスに行く者は、その件の調査も引き受けてもらう。話をまとめるが、行先はリオス、アスティア、セレネだ」

「この国はどうするんだ?」


ベルフェがニヤりと笑う

「冒険者ランク10の隻眼の修羅こと、ヘファイストスが暫し剣をとってくれるそうだ」

「あいつが10なのかよ!」

クロノスは苦笑いした


「以上の条件を踏まえて、選任を頼めるかい?」


「あぁ、少し考えさせてくれ」


まず、組み合わせか……


マーモは普段は出来損ないのお笑い担当だが

「なっ」

突拍子もないところに切り口を開く発想

カリスマ、実力共に文句ないだろう

戦闘も近接、支援両方可能……


顔も整っていて、色気があって、優しくて

いい女なんだよなー


ベルフェは子供っぽくて頑固でうるさいが

「はぁ?」

冷静な判断力と頭脳の明晰さ

判断を誤ったり、周りが見えなくなることもないだろう

戦闘は支援専門だが、詠唱速度でカバーされるだろう


小さくて可愛らしいし、時折見せる素直な感じが

男心をくすぐるというか……


ベルゼは少し馬鹿で体を動かすしか脳がないが

「えっ」

皆の空気を軽くするムードメーカーであり

類稀なる料理スキルで軍の士気も高まるだろう

戦闘は前衛専門だが、圧倒的な力でねじ伏せれるだろう


素直で小動物みたいで愛らしくて、スタイルもいい

あんな妻なら毎日幸せだろうな……


レヴィアはすぐに周りが見えなくなるし無鉄砲だが

「……」

圧倒的な戦力と知識で頼りにされている

戦闘では予測不能な動きと魔法で

どんな困難も打ち払えるだろう


あそこまで積極的に迫られると嫌とは言えないんだよな

アンバランスさと、妖艶さで気づけば見惚れてしまうし……


ルシフは……うん、ただのバカだろう

「なっ」

だが剣一本であそこまでだと侮れない

戦闘では完璧に前衛をこなすだろう


しっかし着物を着た女って、胸がでかいとここまで妖艶なものか?

端正な顔立ちとは裏腹に堂々とした態度は嫌いじゃない


ジンは……まぁ、ジンだな

「……」

これまでに見たこともない力を見せられて

聖王達も頼りにしている

冷静で戦闘経験も豊富

前衛、後衛とそつなくこなすだろうし

何よりこの中では頭一つ抜けているだろう


なにより綺麗だし……見た?あの脚!光り輝いてたんですけどっ!

時折見せるしおらしさはつい、胸の中に引き込みたくなるというか……


「おい」


「ん?」


「旅に出る前に聖王を潰してどうする」

ヘファイストスに言われて、周りを見ると


ルシフ以外が顔を真っ赤にして俯いている


「声に出てた?」


「あぁ、しっかりと。というか、俺が入ってきたことにも気づけよ」

ヘファイストスがクロノスの頭を軽くこつく


「悪い、真剣に考えてた」


ヘファイストスが悪い顔をする

「これは誰がクロノスと帯同するか見ものだな」


全員の視線が一気に鋭くなった


「おいおい、別にゲート使えばいつでも会えるんだし」


『よくない』


全員が声を揃える


「わ、私を選んでくだされば、なんでも言うこと聞きますわよ?勿論、求められれば……」

マーモはくねくねする


「ぼ、僕と旅をする快適さはよくわかっただろう?効率的に旅をしてストレスは溜まらないし、もし溜まってしまった時は……」

ベルフェは上目遣いをする


「ベ、ベルなら美味しい料理が毎日食べれるよ!なんならベルの事も」

ベルゼがにじり寄る


「レヴィは~、毎晩一緒に寝てあげるよ~。クロちゃんが希望するなら朝からでも~」

レヴィアは光を失った目を大きく開く


「ク、クロノス様は私がいないと駄目ですからね、やはり常にお世話をしている私が。その……他にもお世話が必要なら……」

ジンは袖で顔を隠す


「カッカッ、私を連れて行けば、毎日稽古してやるぞ?」

ルシフは剣を突き出す


「お、おい」


『さぁ、選んで』


皆に見つめられる中、クロノスは立ち上がる


「さ、支度しろよ」


「はい?」

マーモは首をかしげる


「実は、もう決めてあるんだ」

クロノスは笑う


「は?」

ベルフェが呆気にとられる


「ヘファイストスー、留守の間頼むわ」

「おー、気をつけてな」

顔を見合わせ笑う


「クロノスさん?」ベルゼが

「結局~」レヴィアが

「誰に」ジンが

「決めたんだ?」ルシフが


「さぁ~?支度が終わってからな」

クロノスは手をひらひらさせて歩いてゆく


納得がいかない少女たちは

大きく息を吸い込み……


さん……はいっ!


『答えろー!』


そして魔王は決断し


新たな旅の幕が上がる


悲しまなくていい


暫しの別れなのだから





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ