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天の王と夜の王

常夜の国セレネは今日も静かだ

だが……塔の中から異様な魔力が漏れ出ていた


塔の中の応接室

机をトントンと叩きながらレヴィアは待つ


かれこれ三時間は待っているだろう


扉がコツンと叩かれる

「遅い、早く入って」


扉が開かれると

銀糸を二つに結んだ美しい少女が入ってきた

蒼白い瞳はレヴィアを冷たく見つめた


「久しぶりね」

「うん、座って」

レヴィアはいつものゆったりとした口調ではない


少女は椅子に腰かける

「で、何?謝るつもりになった?」

「そんな気はない。緊急事態だから呼んだ」

「っそ」

少女は艶やかな足をゆっくりと組んだ


「聖王軍が倒した魔王軍が偽物だった。アルスの予想通り」

「ほら、言ったじゃない」

少女は自慢げに微笑む


「で、どうするの?」

「情報が欲しい」

「対価は?」

レヴィアがあからさまに嫌そうな顔をする

「何が……欲しいの?」

「レヴィア」

「却下」

二人はニコニコと見つめあう


「他には?」

「うーん、噂の魔王様かなー?」

「何処で知ったの!?」

「サーシャから聞いた」

「昔からサーシャとは仲いいよね」

「あら、レヴィアとも仲良しなつもりだけど」

「なら一々天使送るのやめて欲しいな」

「それは駄目。そうしないとレヴィアが何処かに行っちゃうから」

「昔から思ってたんだけど、アルスのレヴィに対する執着は何?」


少女は指を唇に這わせる

「欲しいから」

「それ性的な意味だよね」

「それ以外に?」

「レヴィ……子供だからわかんな~い」

「私と2つしか変わらないのに?」

「知ってたんだ?」

「レヴィアのことならなんでも」

「相変わらず寒気のすることばっかり言う……」

「いい加減受け止めて欲しいけどね……でも」

「でも?」

「最近素敵な男性を見つけたの。色っぽくて、知的で」

「遂にアルスもまともに!」

レヴィアが笑顔になった


「でも……遠い所にいるから中々会えなくて。遠い男性より、身近な女性よね」

「喜んで損した……魔王はあげないから、他のにして」


少女は天井を見つめ、レヴィアに向き直る

「じゃあ、魔王様の旅に同行したい」

「アルス……一応神の使いだよね?」

「それが?」

「神殿は抜けられないでしょ。長い間」

「代わりにレヴィアが」

「魔女に神の使いやらせないで」

「うーん……」

少女は髪をいじりながら考える


「じゃあ、欲しい宝具が欲しい」

「レヴィあんまり持ってないけど……」

「聖杯」

「うん……持ってるわけないよね」

「見つけたらでいいよ?」

「見つからなければ?」

「一日出かけるのに付き合ってくれればいい」

「レヴィ、頑張って探すね!」

レヴィアは身の危険を感じた


「で、何が知りたいの?」


「勢力、主の名前、いつごろ動き出すか」

「勢力は上級の魔物と神格を持つ者かな」

「いきなり面倒だね」


「名前はロキ……素性は不明」

「聞いたことのない名前」

「私ですら最近知ったから」


「動くのは早くて一か月後……神の力を手に入れてからかな」

「伝説でしょ?」

「実在するよ」

「だとしたら……止めようがない」

「そうね。その前に止めれれば」


「居場所は?」

「アトロポスっていう島」

「聞いたことない」

「私の国から近いみたい」

「どうしてそんなに詳しいの?」

「天使を忍ばせたから。200程やられたけど」

「あっさり言うけど相当な数」

「まぁ、私の国の者が私の為に死ねるなら本望でしょ」

「変わらないよね~」


「他に質問は?」

「聖王軍がまた動き出すけど、アルスはどうする?」

「そうね、レヴィアが謝れば参加していいけど」

「謝る気はないし、いい加減根に持たないでほしい」

「根に持って何がおかしいの?国が滅びかけたのに」

「アルスが悪い」

「私は悪くない」

お互い笑顔のままだ


「もういい、次にいく」

「何?」

「最近国から出た?」

「今日が久しぶりかな。あ、この間衣を作る材料を取りに行った」

少女はウサギの形をしたバッグから何かを取り出す


「それは?」

「魔王君に渡して。きっと必要だと思うから」

「聖衣が必要って……彼は何をするの?」

「わからないけど、そんな気がした」

少女は衣を手渡した


「ほんとは会って自分で渡したいけど」

「会わせない」

「そう言われると思ってた」

ニコリと笑う


「じゃあ、私そろそろ行くね」

「うん、また何か情報が入ればお願い」

「今度一緒にお風呂入ろうね」

「絶対に嫌」

少女は手を振って出て行った


「はぁ~、疲れた~。クロちゃんに癒してもらわないと~。その前に各国を周って対策をマーちゃんに練らせよう」

レヴィアは立ち上がるとゲートの向こうに消えた


——


「おかえり」


「ただいまー」


神殿で銀髪を腰まで伸ばした男が

銀糸を二つに結んだ美しい少女を出迎える


「どうだった?」


「うーん、色々聞かれたー」


「そうか。出来れば内容を聞かせて欲しいな」

男は屈託のない笑顔で言う


「疲れたからまたにして」


「つれないね。なんなら一緒に眠ろうか?」


「私はあなたに興味ないの。例えあたなが彼と同じ見た目でも」

少女は男を冷たい目で見る


「うーん、なにかしたかな?」


「ありすぎて言えない」


「そっか、じゃあ今日は帰るよ」


「そうしてくれると嬉しいわ」


少女は神殿の奥へ消えて行った


「早く僕の物になればいいのに」

男はアストラルゲートを開き、消えて行った


こうして運命の歯車が回り始める


ゆっくりと


ゆっくりと……


そして魔王は冒険者になる

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