プロローグ~アスティア~
「お姉ちゃん!それベルの!」
豪華なソファに寝転がるオレンジ髪の少女は反対側のソファに寝転がる黒髪の少女に言い放つ
「ベルの?なら僕もベルだから問題ないだろ?」
「違うー!ベルフェお姉ちゃんじゃなくてベルゼのケーキなのー!」
「紛らわしいな。ならそう言ってくれないか。だが、僕はここから動きたくない!手の届くところにケーキがあるんだ、食べるしかないだろ」
「お姉ちゃんはそうやって怠けてばっかだから大きくなれないんだよ!?」
「うるさい、まな板」
「絶壁ー!」
オレンジ髪の少女の名は『ベルゼ・ベアウッド』ここ叡智の国『アスティア帝国』の聖王である。身長は160程、ショートヘアーで、はねっ毛を熊の髪留めで止めている。のほほんといつも笑顔、琥珀色の瞳で見つめる様は小動物のようだ。
可愛らしい見た目と反して槍の腕は一流。『獣牙のベルゼ』と呼ばれていた。
黒髪の少女の名は『ベルフェ・ベアウッド』ベルゼの姉である。身長は145程、腿まで伸ばした黒髪といつもゴスロリな服を着ている上に、魔法の詠唱はグリモワール1と言われている事から『黒閃の魔女』と呼ばれている。
サファイアのような瞳と無表情さから、国民からはかなり怖がられている。
この姉妹の共通点それは……体の一部が『絶壁』であることだ
「もう、仕方ないなお姉ちゃんは。ベルがまた焼いてきてあげる!」
「君が食べたりないだけだろ?」
「えっへへー、ばれた?」
——リンゴーン
「誰かだ?」
「お姉ちゃんでてよ~」
「面倒だから嫌だ」
「え~、知らない人だったら話せないよ~」
「仕方ないな」
ゴロゴロと屋敷を転がり玄関へ行き、ドアを開けた
「これはこれはベルフェ様、本日も麗しゅう」
「なんだ、大臣か」
「なんだはないですよ。本日も報告に」
「わかった。入るといい」
大臣を応接室に通すとベルフェはソファに体操座りで座る。
「で、報告内容は?」
「本日は経済状況と新たな開発についてでございます」
「それなら結構だ。把握しているし、開発はポーションで構わない」
「そうですか。かしこまりました」
「それだけなら帰っていいぞ」
そこへ、ベルゼがケーキと紅茶を持ってくる
「も~、お姉ちゃんってば失礼でしょ!」
「ベルゼ様、よいのですよ。私は大臣。貴女様方は王なのですから」
「も~、そういうの恥ずかしいからやめてください」
「城を一般開放されて、町はずれの屋敷に住むなど前代未聞でございましたが、城での夜会、薬品の開発、魔導書の図書館と帝国はどんどん繁栄しました。全て貴女様方のおかげでございます」
「ならその分働けばいい。僕は動きたくないのだ」
「またお姉ちゃんは~」
「はっは、それでよいのです。命令されたら働くのが国民の義務でございますから。それではこれで」
大臣は一礼した後に部屋を出た
「あ、ベルお見送りしてくる~」
続いてベルゼも部屋を出る
「さて、疲れたから寝よう」
こうして今日もベルフェは平和に怠けるのであった