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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
【外伝】それぞれの落日
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統べる者

幼い頃の思い出や記憶などない

気づけばジンがいて

父と母の顔すら知らない

もう一人家族がいた気がしなくもないが

もはや彼にとってはどうでもいい


過去には縋らず

今をただひたすら貪る

好奇心と知識欲に塗れた怪物


彼の名はクロノス・ヨルムンガンド


ある日配下の魔物が人をさらってきた

興味があったので話した

飽きたからやめた

また興味が湧いたので連れて来いと命じた

もういないと言われたので諦めた


ある日街を壊したいと言われた

自分の知らない世界なんてどうでもよかった

『いいよ』と言った

街は壊れたそうだ


ある日船というものを知った

自分の世界に踏み込まれたくないから

全て破壊させた

これで静かに暮らせる


ある日魔物が持っていた人間の書いた本に興味が魅かれた

取り上げて読んでみる

面白かったので部屋を埋め尽くすほど持ってこさせた

人間の世界を知った


ある日人間が攻め込んできた

この感情は本で学んだ

物を強奪したから怒っているのだろう

うるさかったから消してやった

隠れていた者たちが話したいと言ったので話す機会を与えた

『死にたくない』という感情を知った

なら国に帰ればいいと思い

帰してやった


ある日魔物がやっていたことは『悪』だと知った

これ以上は加担出来ないと放っておくことにした

ただ、静かに本が読めればそれでいい

ジンが傍にいればそれでいい


そして『落日』を迎えた

魔王群が大陸全土を脅かした日だ

彼は部屋で本を読みふけっていた

いつもより静かだったから

沢山読めた


ある日彼は外に出た

久しぶりの日光が眩しくて

とても目が痛かった

魔物が滅んだ事を知り悲しくなった

『悪』とはいえ共に暮らした者たちだ

復讐は何も生まない

小説にはそう書いてあった

だから彼は悔やみ

憎しみと共に心に納めた


そして彼は旅に出る

多くの感情と出会い

物語との矛盾や差異を身体で感じ

貪りつくす為に

そう、ヨルムンガンドの血筋の通りに


彼はクロノス・ヨルムンガンド

統べる者である


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