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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
眠り姫と『お菓子』な姫
21/71

『重い』姫様と監視される魔王

「いらっしゃいませ~」


アストラルゲートをくぐり、たどり着いた場所は

塔の中なのだろう、窓からは赤い月と美しい街並みが見える


部屋の中には屋上に抜けるであろう螺旋階段、本棚には大量の本

魔女の部屋だと言われたら納得ができる部屋だ


「こっちねぇ~」


言われるがままに後をついて行き、扉を抜けると景色が変わる

ちぐはぐなヌイグルミが散らばり、紫のレースであしらった天蓋付きのベッド

読みかけの本が散らかり、なんだか甘い匂いがする


「そんなに見ちゃ……やぁ……」


少女は恥じらう


好きなところに座るよう言われたので、丁度いい高さのベッドに腰掛ける


「そんな……すぐに?でも……嫌いじゃない」


そういって少女は潤んだ目でにじり寄ってくる


「はいはーい。レヴィアちゃんそこまでです」


「なんでレヴィの時だけジンちゃんもいるの~?」

少し膨れる


「あぁ!膨れたレヴィアちゃんも可愛い!」


「お前らいいかげんにしろよ?」

クロノスは不機嫌だ


「クロちゃんに一度来てほしかったの~」

「それは構わないんだが、何故手に鎖をつけられなきゃいけないんだ」

「クロノス様がベルゼに手を出したからです」


ピクッとレヴィアが揺れた


「また、そうやって……どうして他の女の子ばかり相手にするのかな~?」

「いや、違う。不可抗力だ」

「クロノス様、言い訳になっていません。先日もせっかく夜伽をしようと部屋に行けば、マーモを連れ込んでいましたし」

「へぇ~、マーちゃんもおしおきが必要だね~」

「いや、あれは勝手にマーモが潜り込んできたんだ」

「ちょっと待って~?ジンちゃんも敵……?」

「いくらレヴィアちゃんでもクロノス様は渡せません」


空間からレヴィアが大きな黒い鎌を取り出し、クロノスの首に当てる


「いっそ……死ねばレヴィだけのものだよ……ね?」

「まった!話し合おう!その物騒なものをしまってくれ……え?」

クロノスが鎌をまじまじと見つめ、取り上げる


「それレヴィの~」

少し泣きそうだ


「なんでこれをレヴィアが持ってるの……?」

「レヴィの宝剣だもん」

「クロノス様、それは?」


「エリュシオン、相当珍しい宝剣だ。傷から魔力を送り込み死に至らせる」

「まさか……即死系の宝剣が実在するとは」

「驚いた。しかもこれは人間じゃ扱えないはずだ」


「え?レヴィは人間じゃないよ?」


『は?』

二人はレヴィアを見つめる


「どうみても人間だよな?」

「えぇ、可憐な幼女です」


「レヴィはね~、魔女の血族なの~」

「魔女ってあれか?太古に存在したアンブロシアってやつか?」

「そう~。マナが高すぎて神々に生贄にされていた種族だよ~」

何かが音を立てて結びつく


「だからレヴィアはエレメンタル使えないのか!」

「ぴんぽ~ん。ちなみにアーカイブも光系統は使えないの~」

そう言ってにじり寄る


「クロちゃん正解したから、ご褒美のちゅっ」

クロノスは口を塞がれる


「なっ——」

ジンが立ち上がる


「おいレヴィア、年を考えなさい。やっと二桁いったぐらいだろ?」

「え~、マーちゃんより年上だよ?」


時が……止まったかのように思えた


「ん~とね~?下からベルゼ、サーシャ、ベルフェとマーモが同じで~、レヴィ、ルシフ、アルスの順番~」

「ちょっと待て、ジンとマーモが同じだから……俺と同じ……?」

「そうだよ~、今更~?」


「いや、そういう話しなかったし」

「そんな……レヴィアちゃんが年上なんて……レヴィア……お姉ちゃん……」

ジンは呟きながらニヤニヤしている


「で、俺をこの部屋に呼んだ理由は?」

「交わって~、子供をつくるため~」

「こらこら」

「クロちゃんを誘惑するため~?」

「いや、同じだから」

「じゃあ……ジンちゃん!まじわろ~」

「え、そんな!女同士で……でもレヴィアちゃんなら……」

「おーいジン、かえってこーい」

レヴィアは機嫌よさそうに笑っている


「ん~とね、クロちゃんが楽しそうなことしてるから~」

「なんのことだ?」

「聖王攻略げーむ?」

「まてまて、そんなことはしてない」

「だって~、マーちゃんは前より素直になったし~、ベルゼは人に優しくなったし~」

「俺は何もしてないぞ?」

「ジンちゃ~ん、殴ってい~い?」

「えぇ、今なら目を瞑ります」

「なんでだよ」


「次はレヴィかベルフェだね~」

「鋭いな」

「でも~心配しないで~?レヴィはもう攻略されてるから~」

そう言ってクロノスの膝に乗る


「クロノス様は魔王改め、淫王ですね」

「お願いだからやめて」

「アルスみた~い」

「アルス?」

「歩く性遺物?」

「なんだそれは」

「ディオーネの聖王だよ~。ただの変態だけど~」

「痴女ってやつですね」

「ジンさん、やめなさい」


クロノスはレヴィアをクルッと回して、向き合う

「んっ」


レヴィアは目を閉じて顎をあげる


「いや、違うから。本題の続きを」

「むぅ~、ベルフェは怒らせないほうがいいと思うの~」

「どうしてだ?」

「クロちゃんとは相性悪いから~」

「姉妹揃ってかよ」

頭に手をやる


「理由は?」




——




「なるほどな」

「レヴィアちゃんはベルフェ様より強いですか?」

「うぅん?レヴィのが強いー」

「レヴィア!俺を守ってくれ」

「やぁ~。レヴィは守られる方が好きぃ~」

「聖王トップクラスの人がなんか言ってますよ?ジンさん」

「可愛いので許します」

クロノスは頭を抱える


「クロノス様なら案外余裕なのでは?」

「ジン、お前は俺をどんだけ買いかぶってるんだよ」

「霊長類最強かと」

「やめてくれ」


——ィイイイイイイ


「もぅ、またぁ?」

「なんだこの声!?」

「トランぺッターっていう天使族~。ちょっとまってて~?」


「あいきゃんふら~い」

レヴィアは窓から飛び出した


「おい!レヴィ——」

クロノスは窓に駆け寄る


「よんだ~?」

逆さ吊りにレヴィアが顔を出す


窓から上を見ると塔に鎌が刺さり

レヴィアがぶら下がってる


「驚かすなよ……ってか、パンツ見えてるぞ」

スカートが逆さになっている


「ぃ……やぁ……見つめない……で?」


目隠しをつけ、白く美しい翼を広げ、体中に鎖を巻きつけた天使が

空から姿を現す。美しいと言うよりも悍ましいがピッタリな見た目だ


「あれがトランぺッターか」

「麻痺させる鳴き声と~力の強さが特徴~」


トランぺッターの周りに光の刃が浮かび上がる

「おいおい、魔法も使うのかよ」


「ちょっと待っててねぇ?」


そう言ってクロノスの口を塞ぐ

「ちょ、また!」


ジンが言うや否やレヴィアが飛び上がった


「俺たちも行くか」

「ちょ、え?」

そう言うとジンを抱え、空へ飛び出す

タラリアの浮力で浮きあがり、塔から距離をとった


空に飛び上がったレヴィアに光の刃が降り注ぐ

「アイスレイド」

氷の鏡が変わり身をする

トランぺッターが周囲を伺うとレヴィアは塔で手招きをしている

「おいでおいで~」

トランぺッターはむき出しの牙をガチリと鳴らし、

無数の閃光の弾丸を撃ちこむと共に突進する


が——


レヴィアの周囲を黒い霧が包み込む

弾丸と共に塔の上に降り立ったトランぺッターは霧に囲まれる


「タナトスか」

「タナトス?」

「闇系統最上位魔法だ。自身を闇で包み込み姿をくらます……対象が誘い込まれたなら闇に呑まれ抜け出せない」

「だから間抜けにきょろきょろしてるんですね」

「まぁ、対策もあるけどあれには無理だろ」

「そのようですね」


レヴィアを見失い動揺したトランぺッターが叫ぶ


——ィイイイイイイイイ


「あぁ、もうっ!うるさいのっ!はじけちゃえっ!」

空気が震える

振動が大きくなり、トランぺッターが小刻みに震えだした


「終わったな」

「あれは?」

「アトモスフィア。無系統最上位魔法だ。空間の座標にある空気を振動、圧縮して爆発——」


——ッァアアアン


クロノスが言い終わる前にトランぺッターは弾け飛んだ

無残にも肉片が地面へ向かい落下してゆく


「醜い天使も散り方は綺麗だねぇ~」

顔をほんのり赤く染め、レヴィアは赤い月の下微笑んでいた


「あぁ~あ、ここまで飛んできたか。早く洗わないと」

「ですね」

二人の服も少し血で濡れていた


「あぁ~、ジンちゃんずるい!レヴィもお姫様だっこされたい~」


「ちょっと待ってろ」


クロノスはジンを抱え、窓から部屋に降ろすと

レヴィアの元へいく


「お待たせ、ほら。そろそろ帰ろう」

「ありがと~」

クロノスに抱かれ、窓から部屋に戻った


そして三人は夜が更ける前にアスティアに戻った


「ったく、お姫様は人の風呂を邪魔する習性でも?」

「ジンちゃん髪洗ってくれてありがと~」

「いえ、毎日でも洗います」

「二人だけで入ってくれよ」

『やだ』


「こっちが嫌だよ……たまにはひとりでゆっくりさせてくれ」


風呂上がりに話をする三人の前をベルフェが通り過ぎる


「おい、ベルフェ」

「なんだい?」

眼鏡を外し振り返る


「明日工業区の案内頼む。それと、遅くなってごめん」

「あぁ、気にするな。僕がけしかけたことだからな」

静かに微笑んだ


「じゃあ、明日な」

「あぁ、寝坊するんじゃないぞ?」

「俺の台詞だ」


こうして待ちに待った邂逅が訪れる


夜が更け、朝が来て

眠り姫と魔王の戦いが始まる

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