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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
眠り姫と『お菓子』な姫
19/71

鬼の少女と鈍感な魔王

あぁ、今日も靡く髪が美しい……

触れたら怒られるだろうか……


「そんなに後ろ歩いたら話しづらいだろ?」


「申し訳ありません」


私としたことが気づかなかった。

今日は久々に二人になれたことに浮かれてしまっているようだ。

気を引き締めねば。


「帝国の武器屋だったら案外掘り出し物があるかもな」


「そうですね、いいものが見つかればよいですが」


貴方様に見合うものなど、このような人であふれた場所にあるはずが……

いっそセレネで貴族どもから巻きあげてくればよかったか……

いや、もしそのようなことが耳に入れば……

いっそこの刀を渡せればどれほどよかったか……

私の所有物も、私自身も全て愛しい貴方様のものですのに……


「お、この槍とかどうだ?」


「槍は動きに制限がつきますので」


「そうだよな……間合いだっけ?小回りきかないと面倒なんだよな……」


槍なんて地味なもの貴方様には似合いませぬ!

魔剣でさえ使いこなし凛々しく振るうお姿が、今でも瞼の裏に……


「ならこの銃とかどうだ?」


「装填の間に後ろがとられかねません」


「マーモみたいにかっこよく撃ってみたかったな……」


あんな体の一部分に栄養の偏った女などと同じ物はもたせません!

聡明な貴方様には立派な剣があるではないですか!


「杖か……魔法を使うのに持ってたらカッコいいかな?」


「戦闘は命がけですよ?見た目にこだわってどうするんですか」


「だよなー……」


杖なんて持ってしまったら、あの小さなひねくれ者のように、

性格がねじ曲がってしまいます。

まぁ、意地悪な部分も、少し阿呆な所も可愛くて……

貴方様だから許されますが……


「この刀なんてどうだ?お揃いだ」


「そんな鈍刀と一緒にしないでください」


「ごめんなさい」


そんな……お揃いとか……嬉しすぎるじゃないですかっ!

でも、そんなごみ置き場から拾った様な鉄持たせられません。


「なぁ、今日機嫌悪くないか?」


「いいえ、いつも通りですよ?」


あぁっ!私の機嫌まで心配してくださるとは!

貴方様の傍に居られるだけで私は本望でございます……


「お、この手甲似合いそうだな。つけてみなよ」


「では……確かにしっくりきますね」


「おぉ!その蝶の柄も似合ってるよ。お兄さん、これもらうね」


「いいんですか?」


「あぁ、たまにはそれぐらいさせてくれ」


「ありがとうございます」


まさかの贈り物ーーーーっ!

どうしましょう、枕元に毎晩置きましょう!

いえ、抱いて眠りましょう!

抱いて眠ると言えば……

私はいつになれば貴方様の腕の中に抱かれるのでしょうか……

いや、私としたことがはしたない。

求められたなら喜び、自ら求めてしまえば忠義とはいえません!

ですが……


「なんか懐かしいなー。なんなら今日は俺の部屋で寝るか?」


「!?」


「いや、なんか二人っきりの頃思い出してさ」


「そうですね……でわ、今晩参ります」


「あぁ、そうすればいい」


求められたーーーーー

遂にこの時が来ました!より一層身を清めねばなりません!

はぁ、貴方様の綺麗な指が私の体を這うかと思うと……

いけません、今は落ち着きましょう。

落ち着いて、落ち着いて……


「なぁ、ジンたまには体動かすのに付き合ってくれよ」


「はい、クロノス様。お慕いしております」


「え」


「い、いえ、なんでもございません」


「今日ちょっとおかしくないか?」

「実はその……久しぶりに二人きりなので浮かれていました」

少し恥ずかしそうに笑う


「そうだなー。ジンと二人だと気楽だし……でも、悪くはないだろ?」

「えぇ、彼女たちとの旅もいいものです」

にこりと笑う


「で、ここが演習場か?」

「はい、そのように仰ると思いベルゼに借りておきました」

「へー、じゃあ強そうなの頼む」

「はい、でわ参ります」


そう言ってボタンを押す——


「は?」


目の前に夜叉の様な耳と尻尾の生えた美しい男が現れる


「おい!これ妖孤!いきなりこのレベルかよ!」


「強そうなのと仰いましたので」


火の球が周囲に浮かび襲い掛かる


「くっそ、アイスレイド!」


氷の鏡が現れ、火球を受け割れる


「準備運動ってのがあるだろ?」


「クロノス様にそのようなもの必要ないかと」

「鬼ー」

「はい、そうでございます」

にこりと笑う


妖孤が長い爪で切り付けるのをダーインスレイブで受け流す


「あーもう、すばしっこいから詠唱の隙が無い」


そういってアストラルゲートに手を差し込み羊皮紙を取り出すと

羊皮紙が盾の形になり、


「アイギス、我を守る盾となれ」


その言葉で白銀の赤い水晶を中心に飾る盾となった


「アイギスの盾を使うとは本気じゃないですか」

「うるさい。でも、ちょっと焦ったのは認める」

そう言って笑う


妖孤の爪を宙に浮かぶ盾が受け流し続ける

「この建物どのくらいまでいけそうだ?」


「エレメンタルなら大丈夫かと」


「なら——」

盾と共に吹き飛ばされながら地面に手をつき

「ヘカトン——」


詠唱しようとしたときにジンの刀の音が聞こえ身を翻した


「ちょ、おま、赤椿打つなよ!」

「クロノス様こそ建物ごと地の底へ沈める気ですか!」


「いや、そうだな。ありがとう……さて、それならどうするか……」


何かを思いついたように両手を妖孤の後方右と、左にそれぞれ向けた

「リフレクトレーション」


妖孤の後方に2つ鏡の様な丸い空間が現れる


「ライトニングノヴァ」


詠唱と共に妖孤を鏡の中央に蹴とばし、鏡に閃光の弾丸を打ち込む

すると鏡が飲み込み、吐き出そうとした


「クロノス様!何を——」


ニヤリと笑い

「全てを照らし焼き尽くせ、アルテミス」


目の前に大きな鏡が現れ、吐き出された弾丸が撃ち込まれると

弾丸がまるで水面に雨が沈むかのように波紋を打ち、

美しい光が鏡から射出された。

光は妖孤を飲み込み灰にした


「……」


「はぁー、疲れた」


「見てるこっちがハラハラしましたよ!」


「これが一番最適な戦い方だっただろ?」


「まぁそうですが……自分に攻撃を打ち、それを利用して光系統の最上位魔法とは……」

呆れてみせる


「よし!準備運動も終わったし、次だ!」

「なら私が……」

「うん、ごめん。そろそろ陽が落ちる。帰ろう」

「では、そういたしましょう」

にこりと笑う


そして二人は帰路につく


帰り際、ジンが手甲を見て微笑んだのをクロノスは知らない


そして『お菓子』な姫と(元)魔王は対峙する




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