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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
眠り姫と『お菓子』な姫
18/71

お姫様と魔王様

「どうも納得いかない」

クロノスは不機嫌だ


「公平に決めた結果ですわ」

マーモは嬉しそうに言う


ここはアスティア帝国。元々武力の塊でしかなかった国を、ベルフェが聖王になってから見事なまでに進歩を遂げた。

巨大な城壁で円をなぞらった街並みは圧巻の一言である。


二人がいるのは城を中心とし、南西の商業区。

珍しく二人きりなのである。その理由は——




「明日ベルフェと工業区に行ってくる」

屋敷の広間でクロノスが何気なしに発言する。


これが戦争の幕開けだ


「二人でですの?」

「あぁ」


「では私もお供します」

「ジンはたまには休みなよ」

「休みなど必要ありま——」


「ベルもついてくー」

「君はこなくていい。邪魔だ」

「またお姉ちゃんはそういう——」


「レヴィは~?クロちゃんレヴィをおいてくの~?」

「レヴィアは明日一度国に帰らなきゃいけないんだろ?」


——ダンッ


ベルフェが手に持っていた本を机に叩き付けると、眼鏡を外し、立ち上がる

「静かにしてくれないか?明日僕は彼と工業区に行く。これは決定事項だ」


そこまで言うとニヤリと笑う


「だが、彼に好意を抱いている君たちには悪いと思っている。そこで……だ、明日より一日交代で彼と二人きりで過ごせるというのはどうだ?」


女性陣がベルゼ以外一同に立ち上がる


「ここはアスティア帝国!聖王様の言うとおりにするべきですわ!」

「異議な~し」

「では、偉大なる聖王に礼!」


ジンの声と共に三人は礼をした


そして、現在に至る。


「で、順番はどうやって決めたんだ?そもそも今日はベルフェと工業区だろ?」

「女性の品ある格差順ですわっ!」

マーモは胸をはる


クロノスはマーモの張り上げられた双丘を見て言う

「なんかわかった気がする。だからベルフェが風呂上がりに不機嫌だったのか」

「なんのことですの?」


話しながら街中を二人は歩く

「で、他の皆は?」

「ジンはレヴィアについて行きましたわ。あの姉妹は屋敷で怠け倒してますわ」

「は?」

クロノスが立ち止まる

「なんですの?」


「レヴィアの国に行けるならそっちがよかった……」

「そんなに私と二人っきりが嫌ですのね、そうですのね!?」

マーモは少し潤んだ目で顔を真っ赤にして問う


「いいや、そんなことないよ?ただ、二人っきりだと俺も色々と歯止めが利かなくなるかもしれないから困っているんだ」

クロノスはマーモの頬に手を当て、顔を近づけて言った


「そ、そんな無理に我慢しなくても、私なら言っていただければいつでも……」

マーモはモジモジしながら言う


「これが『ちょろい』ってやつか、本の通りだ」

「誰がちょろいんですの!?」

マーモがまた怒る


「冗談だよ。そうやって感情を素直に出せる所が、マーモの可愛い所だよな」

「クロノスはずるい……ですわ」

マーモがクロノスの袖を掴むと、二人はまた歩き出した


「マーモ、あれはなんだ?」

クロノスは人だかりを指さす


「あれは薬品を扱った商店ですわ」

「あそこだけ異常にごった返してないか?」

「あぁ、薬品の開発はベルフェが一人でおこなっているので、生産が追いついてないのですわ」

「あいつ怠けてないで仕事しろよ」

「なんでも魔法回路という機械を使うらしく時間がかかるらしいのですわ」

「ベルフェ程魔法が使えても追いつかないのか……今度手伝ってやるか」

「クロノスのそういう優しい所が、私は好きですわ」


「困ってる人は助けないとだめだからな」

少しはにかんでクロノスは言った


「あそこもひどい人だな」

「あそこは製菓商店ですわね。ベルゼが作るお菓子を販売していますわ」

「すごい人気だな。確かに美味かったけど」

「販売数が少ないみたいですわね」

「あれだけ作ってか!?」

クロノスは屋敷に作り置きされた菓子を思い出す


「あれは自分用らしいですわ」

「あの姉妹本当に国王かよ……」

クロノスは頭に手をやった

すると、クロノスのローブを誰かが掴む


「お兄ちゃんいい匂い」

小さな女の子がいた


「あぁ、よかったらあげるよ。一つしかないけどごめんな」

クロノスは腰から下げた袋から、袋詰めされたクッキーを取り出した


「いいの?ありがとう!」

そう言って女の子は走っていった


「あんな笑顔にできるベルゼのお菓子ってすごいな」

「えぇ、そうですわね。もっと沢山の国民が食べられたらいいですわね……」

その言葉を聞いてクロノスは笑う


「この国でする楽しいことを思いついた」

「なんですの?」


クロノスは耳打ちをする


「はぁ……クロノスらしいですわね」

マーモは呆れたように笑った


「お、マーモちょっと待っててくれ」

「え、ちょ……」


クロノスは走っていった


もぅ、なんなんですの。せっかくの二人きりの時間ですのに……

そもそも私は何故こんなにもクロノスのことを好きになったのでしょう。

確かに、国での一件では感謝はしていますし……

でも、いつもからかってくるし、冷たくあしらわれるし、

胸をいきなり鷲掴みにされるし……ま、まぁ嫌というわけではありませんが……

一体何故……


「お待たせ、ごめんな」

「い、いえ、大丈夫ですわ」

「どうかしたか?」

「な、なんでもないですわ!」


「ならいいけど……ほら、これ」

クロノスは綺麗な和柄の鈴がついた髪留めを差し出す


「これは……?」

「今日の礼だ。一緒に見て回れて楽しかったし、この柄俺のローブと似てるだろ?自分の好きなものをマーモにもつけてほしいと思ったからさ」


マーモは俯き呟く

「そういう所でしたわ……」

「え?なんだって」


マーモは髪留めをつけたあと、

「なんでもないですわ」

と言って舌をベッと出して歩いて行った


少し離れたところで立ち止まり振り返ると——


「ありがとう。クロノス……愛してますわ」

笑顔で言った


「さ、行きますわよ?早くきてくださいます?」


この時マーモはクロノスが自分に見惚れていたことには気づかなかった


そして二人は帰途につき、


鬼と人との戯れが始まる

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