ここから、
シンデレラと言えば。
ガラスの靴
12時の鐘
意地悪な姉や継母
魔法使いに助けられ、王子の花嫁を探す舞踏会へ行く。
不憫な人
...そんなのは嘘。
この後のことまで含めるのなら、1番最後のだけは合っていると言える。
私の家は没落しているけど、田舎でのんびり暮らす、穏やかな貴族だ。
姉や継母は優しく私を気遣ってくれ、家事を全て私に任せるなんてこと、絶対にしない。
ついでに、王子とくっついて権力を握ろうなんて卑しいことが大ッ嫌いな人達だ。間違ってもそんなことのために舞踏会(私に言わせれば下らない合コン)には行かない。
しかし、王家より直接招待状が届いてしまえば別の話だ。
「レラ!王家から手紙よ」
「この時期に手紙...まさか、」
「舞踏会、ね」
姉はまるで来たない物を見るかのように、指で摘まんだそれを見る。
「...お姉様、いくらなんでもその扱いは王家に対する侮辱と捉えられかねないわ」
「いいのよ、別に。没落貴族にこんな税金の無駄使いする阿呆どもなんか、敬うに値しないわ」
...酷いことを言う。
確かに、国内有数の貧しさを誇る(?)我が貴族に、こんなものを送っても、意味などないだろう。
むしろ、金を使わなければならなくなるので迷惑ですらある。
「でも、うちごときの権力で王家に物申すなんてとんでもないし、無視するわけにもいかないでしょう?」
「そうね、その通りだわ。問題は、行くにしても誰が行くかなのよ。」
対象とされる年齢は15歳から19歳までとされている。母はもちろんのこと、目の前で王家に毒を吐く長女アリスラも、齢21のため、出席は叶わない。
「ケイラお姉様は恋人がいらっしゃるし...」
次女ケイラは18だが深く愛し合う恋人がいるため、舞踏会へは行かないだろう。
すると、必然的に。
(私か...)
15歳で悔しくもギリギリ出席可能な私しかいなくなる、そういうわけか。
「...ねえレラ、無理して行くことも無いわよ?あなたが言うなら、私が王家に手紙を書くし、」
「それだとうちの信用問題に関わるわ。ただでさえ現状維持でいっぱいいっぱいなのに、そんな無理は出来ないでしょう。」
「それは...、そうだけれど...」
正論に言葉を詰まらせる姉。
私が行くことに反対してくれているらしい。
「隅の方に1人でいれば、平気よ」
納得してもらおうと精一杯の言葉を絞り出すが、姉はあまり納得できない様子だった。
「っ、王子なんかに、私の可愛い可愛い妹をあげないんだから!!」
姉のシスコンな言葉に、思わず吹き出してしまう。
そんな姉達を護るためにも、私が王都へ向かわなければ。
そう、決心した。
...このとき、既に巧妙な罠にかかっていることに、
気付くよしも、無かった