4.家で待ち構えていたのはドラゴン系妹!?
前述したが、さり気なく言ったので忘れている人も多いと思うので重ね重ね述べると、俺には2才下の妹がいる。
俺には似ても似つかぬような金髪でルックスも平均より遙かに上。
なおかつ学校の定期テストでは平均95点で、所属している空手部を全国大会まで導くという文武両道。
動物で例えるならば、伝説の動物『龍』を彷彿させる。
それが俺の妹、中崎まひるだ。
髪の毛の色が金色なのは義妹だからと言うわけではなく、単にイタリア人の母親からの遺伝だ。
なんで俺達兄弟は一応ハーフって事になる。
妹はその髪の毛のせいかハーフだと気付かれるみたいだが、俺は父親の遺伝で黒髪100%という、父親から産まれたんじゃないかと思いたくなるぐらい母の遺伝を受けなかった。
そのせいか、ハーフだと気付かれた事は一度も無く、知っているのも身内と晴美ぐらいだ。
とまあ、平凡な俺とはことごとく違うまひるな訳だが…、
こんな妹でも駄目な所はある。
それはこれから起こる事で分かるであろう。
学校から所変わって中崎家玄関。
俺は正直ドアを開けるべきか悩んでいた。
なぜって丸2日も家をあけ、その間連絡すらしなかったからだ。
つまり家に妹を1人置いていったという事になる。
なので妹が怒ってないか不安なのだ。
というか確実に怒っている。
何故なら…
「兄様はまだカァアアアアアアアア!!」
(死亡フラグ 5+1=6)
叫び声が外まで響いてるからね。
家に入った瞬間跳び蹴りを食らうのが関の山だろう。
せめて気付かれないように自分の部屋にまで辿り着けば休戦協定を結べるだろうから、2階の自分の部屋に妹から気付かれずに入れば、跳び蹴りフラグ、大げさに言えば死亡フラグを回避できるのだ。
そしてここでの選択肢は下の3つだ。
1.木によじ登って飛び移る
2.謝る
3.このまま失踪する
……3はないな。
って事で恒例の脳内シミュレーションタイムだ。
(中崎勝の脳内妄想にしばらくお付き合い下さい)
if・1を選んだら
中崎勝は木に登ろうとした!!
しかしMPが足りなかった!!
中崎勝はもう一度木に登ろうとした!!
しかし中崎勝はそもそも特技『木に登る』を覚えていなかった!!
中崎勝は悪あがきをした!!
中崎まひるに見つかってしまった!!
中崎まひるの跳び蹴り!!
中崎勝に1888のダメージ!!
中崎勝は死んでしまった!!
DEAD END
(以上、中崎勝の妄想タイムでした)
何コレデジャヴュ。
というか跳び蹴りで死ぬの?
何気にオオカミに攻撃されるよりダメージが大きいのだが……。
2を選んだ場合はどうだろうか……。
(中崎勝の妄想タイムの始まり始まり~♪)
中崎勝はドアを開いた!!
中崎勝はナチュラル土下座を繰り出した!!
しかし中崎まひるは見向きもしなかった!!
中崎勝はスライディング土下座を繰り出した!!
中崎まひるは怒りだした!!
中崎まひるのテンションが200上がった!!
中崎まひるはスーパーハイテンションになった!!
中崎まひるの攻撃!!
18880のダメージ!!
中崎勝は死んでしまった!!
DEAD END
(以上、中崎勝の脳内妄想、もとい死亡妄想は終了いたしました)
何コレデジャヴュ・パート2。
んでやっぱりオオカミより攻撃力高いし…。
オオカミに襲われた時に死んだ方が楽に永眠出来たかな…。
と考えてる内に、
「……」
家から響いていた怒鳴り声が静まった。
これは正面突破の方が成功する確率が高いんじゃないだろうか?
これ以上立ち往生していても時間の無駄遣いだし。
と思い、意を決して玄関のドアを開いた。
するとそこには!!
「お帰りなさい」
エプロン姿のまひるが立っていた。
「おぉぅ…、ただいま」
突然の事で少し戸惑ってしまったが、殺される事は無いようだ。
「まひるにお風呂で限界まで煮られたいですか、まひるに料理されたいですか?それとも…、」
「ちょっと待ってまひる。今の選択肢だとお兄ちゃん死んじゃうしか無いと思うんだけど」
「だって息を止めることしか考えてませんから」
「怖えーよ!!……因みに聞いておくけど『それとも』の後は何て言おうとしたの?」
「まひるの隣で永遠に眠りますか?」
「聞くまでも無かったみたいだね……、で何故俺が殺される運命になってるわけ?」
「何故かと言いますと、まひるの大事な兄様が帰ってこない理由はまひるに何か至らぬ点があるという事なんじゃないかと思いまして、2日間寝る間も惜しんで熟考いたしましたが、皆目見当が付かず、それならばと思い、最終的に諸悪の根元である兄様をこの世から消せば一件落着なんじゃないかという答えに辿り着きまして」
「全然一件落着じゃないよ!!お兄ちゃん死んでるよ!!原点に返りすぎて犯罪に手を染めようとしてしまってる事に気付こうね!!」
「兄様を守るためならたとえ兄様であろうと邪魔はさせません」
「矛盾してるよね!!肝心なお兄ちゃんの人権その他諸々が守られてないよね!!」
「兄様は何もなさらなくても結構です、ただまひるに介錯されるのを待っていればいいのです」
「おーい、まひる?聞いてる?」
「兄様はどの方法で最後を迎えたいですか?首吊りですか?切腹ですか?飛び降りですか?自爆テロを起こしますか?いっそのこと青酸カリでも服用しますか?」
「死なないから!!それと別にまひるが悪いなんて事は何一つ無いから、安心して!!」
「兄様の事を考えると安楽死が一番良いかと思いますので、安楽死専用の薬を作ってきます」
あぁ…、全く話を聞いていない…。
こうなったら実力行使でもしない限りまず止まらない。
そう、俺の妹こと中崎まひるは世間一般で言う『ヤンデレ』というヤツなのだ。
いや、もしかしたらただ病んでいるだけなのかもしれない。
まひるは前述の通り、完璧超人なのだが、それのせいか頼られる事が多くなった。
まひるもその期待に全て応えようとした為、責任感が人より数十倍ほど強く育った。
それが強すぎたせいか、何か少しでも不具合が起こるとなんでも自分のせいだと思ってしまうらしい。
それで思い詰めた結果、曲解を出して失敗してしまう。
それがまひるの駄目な点なのだ。
こういう暴走をすると兄である俺が何とかしなくてはならない。
というか今回の場合は直接的な被害があるわけだが……。
その対処方法とは…
くすぐる事だ!!
「安楽死と言っても種類がありまふっ、ヒャヒャヒャヒャ!ハハハハハヒヒャヒャヒャヒャ!止めてくだ、ひゃい!!ヒャヒャヒャ!!」
「ならまず冷静になるんだ!!」
たちまち形勢が逆転した。
元々はまひるを笑わしてやりたいと思ってやり始めた事だったのだが、思いのほかくすぐりに弱いらしく、暴走を止める時に使い始めたわけなんだが……
端から見ると変態だね。
「わっ、わかりまっ、したからっ、ヒャヒャヒャ!!止めてっ、くだっ、ヒャヒャヒャ!!い!!」
「やり方が分からなくなった時いち早くお兄ちゃんに相談すると誓えるか?」
「誓いまっ、フヒャヒャヒャヒャ!!」
「さっきはご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
まひるがひとまず落ち着いたらしい。
「まぁ、いつもの事だし良いよ」
いつもの事なのは駄目だと思うが。
まぁ、誤魔化す事も出来たわけだからいいか。
「それはそうと、昨日は一体どちらに?」
誤魔化せてなかった。
「いや、それはアレだよ、アノ…、いや、ソレがアレで」
「代名詞の使い方を1から勉強し直したらどうですか」
でも口が裂けても凛世と夜な夜な狩りをしていたなんて言えない!!
でも言わないと多分殺される!!
これなんて無理ゲー?
「もしおっしゃらないのなら…」
お?この展開は巷で噂のデジャヴュですかい?
『監視する』とか言い出して、実際にはお兄ちゃんの隣にいたいだけなんだろ?だろ?であれ!!(願望)
……うん、ないな。
「なら?」
とりあえず話を聞かないことには一向に事態は収拾しないから、必要最低限の文字数で尋ねてみる。
まひるの言うことは予想通り、予想(願望)とは全然違った。
「兄様を再教育します!!」
「いいよ」
「即答ですか!!」
いや、だって再教育って保健体育もあるんだろ?
んで、実技もしてくれるんだろ?だろ?であれ!!
「多分考えている事とは違うと思いますよ?」
「え?裸になってくれないの?」
「なりません!!一体どうしたらそんな結論に至るんですか!!」
さっきまで曲解を出してた人が言うセリフですかね。
「まぁいいです!で、再教育の方法とはですね……」
10分後。
「え~~、なんでこんな事になってるんでしょうか、まひるさん」
「兄様がまひるに振り向いてくれないからなんですよ?」
ここで俺がどうなっているのかを説明しよう。
まひると抱き合った状態でロープに縛り付けられてる。
え?分かりづらい?
言うなれば、カップルが抱き合っているのをロープで外せなくしたような状態。
そういう、相手が妹でなければなんとも羨ましい状態になってるのだ。
「いや、いろいろ理解出来ないから」
「理解なんかしなくて良いんです、ただまひるの言っている通りにしていれば良いんです!!」
「じゃあ一応聞くけど…、これにはどういった意味が?」
「吊り橋効果ってありますよね?」
「ああ…、確か不安定な場所のドキドキを相手への恋心だと勘違いするってヤツ?」
「はい、それを実践しています」
はい?
……不安定というか動きづらいだけだと思うが。
「って事は妹に恋心を持てと?そう言いたいわけですね、まひるさん」
「はい!!最終的にはまひるしか見えないようになってもらいます!!」
「却下」
「即答ですか…、でもこの状態を続けていけば必ず!兄様はまひるに振り向いてくれる事でしょう!!」
「……無駄だと思うけどね、気の済むまでやってみたら?」
「はい!!」
とまあ、こういう訳で。
俺は家にいる間、風呂(流石に拒否した)以外は妹と抱き合ったまま生活するようになったのだった……。