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26.男なら腹を括るべし。

 気絶させられるようになってから、これまでの三人の行動をさかのぼってみる。



 いつも同じように振り返っていては主観が入るからな。客観性を持って状況を振り返ろう。



 あれ、なんか俺、賢そうな感じじゃね? いや、そこまで? いえ、あの、なんでもないです。スイマセン。



 まず、凛世。



 凛世はと言えば、やはり世間知らずの野性児という感じを貫いている。



 壁を壊したり、森の中に住んでたり、イノシシを狩って丸ごと調理して食べたり……コイツ、別に勉強とかしなくても地球で十分暮らしていけるだろ。



 相変わらず意思の疎通とかはスムーズにできないこともあるけど、ジョークだって言うようになった。



 多分、晴美とかの影響だろう。アイツは悪影響しか及ぼさないと思っていたんだがな。見直したよ、うん。あえて上から言うけど見直した。アイツはよくやってくれましたよー(棒)



 その晴美が吹き込んだのか、急に好意を寄せるような仕草も見られてきたし?



 多分、あの変態な父親と離れるための方法として、俺とくっつくしか選択肢がないからとか、そういうオオカミ業界としてありきたりな理由(?)だったりするんだと思うんだけど。



 もう少し世界を見て、現実を痛感してからでも遅くはない。森の中のオオカミ、ビルディングを知らずだ。まあ創作だけども!! 井の中の蛙なんとやらだけども!!



 晴美はと言えば、この状況を作り出した張本人と言っても過言ではない。



 まひると手錠でつながれていたのはまだ良い、妹だから。それに晴美が堂々と手錠を取り付けたのが悪いんだ。断じてシスコンとかだからではない。



 だから暴力事件、つーか結局は凛世の父親を蹴り飛ばしただけなのだが、それがキッカケで気絶させられるようになって、今に至るんだよな。



 というか気絶させられるのでアイツ絡みじゃなかった時がない、間接的にも直接的にもアイツが少なからず関係してやがる。誰か抹殺してくれねえかな。



 さて、話を変えないと何をされるかわからんからなー、まひるの話でもしようかな。うん。



 まひるは今までにも増して残念になった。いや、前から酷かったのに気付かなかっただけか。何年も前から俺の性活動をチェックしてたりしてたわけだからな。



 あれ、これって俺の方が酷いのか? いや、性に走るのは男子高校生の日常だから、仕方ないよね? 仕方がないんだよ、断言する。男子高校生は変態しかいない。



 というわけで、まひるの話はする必要がないと思う。いつも一緒にいるから別に考えなくても大丈夫、俺たちは繋がっているからな。あまり深い意味はないが。



 ともかく、今まで気絶させられてきた中で分かったことがある。






 俺が気絶してる間に話がめっちゃ進んでね?



 毎回毎回起きた時に思うんだけれども、場所が変わったかと思えば状況説明をされて、その過程で怒りを買って何かしらの方法でまた気絶させられる。そのエンドレス。



 俺の人生は、いつの間に気絶に始まり気絶で終わるようになってしまったのか。



 やはりそれはあいつらのせいだろう。



 しつこくしつこく同じことを繰り返しては、飽きたら子供みたいにおもちゃをポイポイ捨てるような感じ。まさしく今、俺が置かれている状況はこうだ。



 ついにはままごとなんかやり出すし……どうしろってんだよ。



 ともかく、今度こそは気絶させられないように演技をやり遂げなければいけない。



 そういうわけで、俺は覚悟を決めて目を開けた。








「それにしても、まひるちゃん。最近の勝はどうなの?」

「最近は日に2回ってところですかね? でも数日前からは……なんで、多分まだしてないんじゃないかと」

「……おかわり」



「ままごとの設定はどこに行ったんだよおおおおおおおおおおおお!!」



 すぐに何もかもリセットしやがったよ、普通に世間話してるよ、ほのぼのとした日常風景が広がってるよ!!



「あら勝、起きたの。起きたんならお風呂にでも入ってきなさい。臭いわよ」



「臭くなったのは誰のせいだよ!?」



 つーかその言葉、親子の会話みたいじゃねえかよ、結局続いてるのか続いてないのか分からねえよ!! まあ臭いのは一概に父親のほうだから、俺と晴美の立場を入れ替えた方がどちらかというとハマるというかうんたらかんたら……どーでもいいわ!!



 とりあえずサッパリさせるという意味も込めて、俺は風呂へと向かうのだった。








 お風呂。体の垢を落とし、芯から体を温め、精神的にリラックスを得ることが出来る場所。



 前にお風呂に入ったのは確か、まひるが縄で縛ってきたときだったか。あの時も憩いの場として活躍したお風呂。もはやお風呂で暮らしたい。お風呂 is my life!



 それは冗談なのだが、気絶していないかつ長時間入っていても干渉されない(鍵もかけた)場所ということではお風呂は非常に重要な役割を持つ。



 これからどうするかを考える時間を取ることが出来るのは、全地球の中でもお風呂とトイレくらいだろう。



 海の上という案もあるが、それを含めても水回りしか居場所がない。もしかして俺は水に好かれているのか? どうもー、遣り水、差し水、おいしい水。中崎勝です。



 駄目だ、一文字も自分の名前と被ってないし、水だけに。おあとがよろしいようで。ねーよ。



 だから考えるんだ、ここから抜け出す秘策を、この浴槽、約一畳の空間の中で!!



 少し湯船のお湯がぬるくなってきたな、もうちょっと温めるか。



 さて、どうやって気絶させられないかを考えよう。



 気絶させられ方は、殴る蹴るの打撃や、地面を引きずられたり、ジャーマンや地面に落とすなどして叩きつけられたりぐらい。



 これを総括すると触られなければ気絶することはあり得ないということだ。



 そして俺の自由が認められている場所はお風呂とトイレと海の上。






 …………出たらそこで試合終了ですよ。



 つまりお風呂で暮らすというのは冗談じゃなくなってきたわけだ。マイ、ガッ!



 お風呂で籠城するのだったら、水はあるから何とかなる。だから数週間は生きていられるはずだ。



 いざとなれば食べられるものは食べればいいわけだし、数週間の間にあいつらが降参して俺を気絶させないという約束を勝ち取れば、俺の気絶ライフが終わる。



 さぁ、俺とあいつら、どちらが勝つか。勝負だ!!

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