表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/64

23.やってしまったのは事実なんだから説明しても無駄。

なんなんだろうな。



凛世の住みかで2回気絶されられたかと思えば、気が付いたら晴美の家に移っていてまた気絶させられるという、俺自身にはどうしようもない状況にあるわけで。



起きたら多分、帝剛さんが俺を壁に貼り付けていて、晴美が言ったあることないことを全て信じて、俺を殺しにかかるんだろうなぁ。



こんな受け身の人生で本当に良かったんだろうか。



もっと人としての最低限の権利は欲しかった。



例えば、ご飯を食べるとか。



最近、何も食べていないような気がするんだよな。



気絶するばかりでエネルギーを消費していないのが幸いだが、気絶しているから食べられていないって事も加味すると、やっぱり今の状況のままだと死因は餓死あるいはショック死になる。



どうにかして食べ物をゲットしなければ……。



そう考えている最中に、目が覚めた。



目を開けると、天井の猪の絵が俺を出迎え、俺自身が貼り付けられていないことを教えてくれたのでホッとしたのだが。



頭に何やら違和感を感じる。



枕でも無い、床でも無い、プニプニと柔らかく、それでいて細身で芯の通っている物体。



それが俺と床の間に挟まっていたのである。



その物体を恐る恐る手で触ってみると、意外にもソレは長く、俺の左側に伸びていってるように感じた。



それを何となーく辿っていくと。



一段と柔らかいボールのような突起物が手に収まった。



興味本位で手に取った突起物をこの目でちゃんと見ようと、左に寝返りを打つと。









晴美の顔がドアップで接近していました。



晴美はどうやら俺に腕枕をしてくれていたらしく、そのまま眠ってしまったようだ。



じゃあこの突起物は……。



イヤな予感がしつつ目線を下に落とすと。









自分が胸を揉みしだいている変態だと分かりました。



…………コレは叫んだら帝剛さんが駆け付けて気絶ルート突入だな。



何か策を考えよう、胸を揉みしだいた罪を隠蔽するために。



まずは指紋を消すことだな!(何も考えていない)



指紋を消すのは拭けばいいんだったっけか。



拭く物なんて服しかねえな……ギャグじゃないぞ!?



とりあえず俺の服の袖で突起物を拭くことにしたのだが。









さて、揉むと拭くではどちらの難易度の方が高いでしょーか?



拭くとか無理に決まってるじゃねえかよ!!



証拠隠蔽をしている最中に起きられたらタマったモンじゃない。



あ、そうだ、揉みしだいても起きないのなら、揉みしだきながら少しずつ拭けば良いんじゃないか?



……ダメだ、俺がどんどん変態へと成り下がっていくぞ。



だが、証拠隠蔽のためには仕方のないことなんだ、分かれよ俺!!



そうやって自分を諭して、胸に徐々に手を近付ける。



そうして手が胸に触れるか触れないかどうかとなった時、後ろで物音がした。



「おう、さっきは済まなかった。ワシが話を聞かなかったのも問題だったな、小童。お詫びと言っては何だが、娘が作ったハンバーグでも……」



入ってきた帝剛さんが俺の方を見て驚愕の表情をしながら、手に持っているお皿を地面に落とした。



「いや、あの、違うんです帝剛さん、アナタが思っているような疾しい事をしようとしていたのではなくてですね」



「胸を揉みし抱こうとしながら言える台詞か? 小童」



普通の根性なら言えるわけないじゃないですかー、やだなー。



だって俺も、理由はどうあれ揉みしだこうとしていたからな。



つまり、どう考えても言い訳の余地はないという事だ。



「これはですね、寝ぼけていてですね」



「寝ぼけると胸を揉む癖でもあるのか?」



「いや、俺の家には30回揉むと止まる目覚まし時計があるんですよ」



「ほう、それと娘の胸を見間違えたってことか?」



「まーそういう事ですね」



帝剛さんの気迫に圧倒されつつも、なんとか追及を避けていく。



「どちらにしても、胸を揉んだことには変わりないな?」



「いや、帝剛さんも見たでしょ? まだ俺は触っていなかったことを」



「儂が居なかったときはどうか分からんではないか」



おっとー、痛いところを突いてきたー。



「分からないというのは、今の日本では無罪なんですよ?」



「ふっ、そんなのは胸に付いた指紋を調べれば済むだけの事」



俺が何にも考えずに証拠隠滅しようとしたところを的確に突いてくるとは。



胸に付いた指紋を調べるとか、良く考えてみれば正気の沙汰じゃないよな。



大体、服の上からなんだから、指紋なんてあまり付かないって。



じゃあなぜ拭こうとしたのか?



…………それは、男子高校生の好奇心と言いますか、なんと言いますか。



ええい、今はそんな事どうでもいい!!



とりあえずこの状況をどうやって抜け出すかだ。



よし、こういう時に頼りになるのが神様だ。いでよ! 神、我に選択肢を与えたまえ!!



1.帝剛さんにミンチにされてハンバーグの具材になる

2.晴美にミンチにされてハンバーグの具材になる

3.自らミンチとなってハンバーグの具材となる



……ちょっと、これはないって。もしかしてさっき帝剛さんが落としたハンバーグがもったいないから原因となった俺にハンバーグになれというんですか? そうなんですか。分かりました。



神様、アナタに頼る事自体が間違いでした。



俺は受け身の人生なんだ、コレは仕方ない。



しかも俺は決定的な罪を犯した、ヤってはいけない事だ。



そうなりゃ、天命に従って罰を受けるのが、俺の生きざまってもんだろ。



「スイマセン、全部俺がやりましガブフ!!」



自供した瞬間に顎と腹を二連打された俺は、早々にめまいがし出した。



「クハハ、今は気絶しておれ。すぐにミンチにしてハンバーグにしてやるでの」



神様の言った通りになったなと思いながら、もう一度顎にキックを貰って、俺の視界は真っ暗になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ