2.朝襲ってきたのはイノシシ系幼なじみ!?
オオカミみたいな美少女に襲われたあげく、その美少女に日が昇るまで狩りに駆り出さされた後。
俺は帰ってる暇がなかったので、そのまま校舎の4階にある自分の教室に行き、1番乗りだったらしく、窓側の1番後ろという、絵に描いたような特等席である自分の机で突っ伏した。
にしても…
眠い。
眠い眠い。
眠い眠い眠い。
眠い眠い眠い眠い。
眠い眠い眠い。
眠い眠い。
眠い。
なんだかんだで徹夜した挙げ句、家にすら帰っていないため、心身共に疲れ切っていた。
ここで寝てしまっても、罰は当たらないだろう。
というわけで、目を閉じて授業が始まるまで睡眠を取ることにした。
さて、ここで過去の話でもしようか。
これは俺が9歳の頃だった。
今でこそ乱暴でイノシシでついでに巨乳となった俺の幼なじみ、晴美だが、9歳の頃は正義感の強く、元気な女の子だった。
俺はというと…
イジメにあっていた。
それは強者が弱者を痛めつけてからかうという、至ってノーマルかつシンプルなイジメだった。
そんなイジメからいつも晴美が助けてくれたっけ。
それで助けた後、決まって俺に言うんだ。
「そんなコトだとアンタ死ぬわよ」
俺はこの言葉を最初はあまり気にしていなかったが、何度も言われていたせいか、その気になっていた。
それからというもの、俺は毎日晴美とトレーニングに育んでいる。
それは今であっても変わらない。
1日でもサボれば、死ぬより怖い拷問が待っているっていうから尚更だ。
……ってあれ?
昨日トレーニングしたっけ?
……嫌な予感がする。
何か、北北西の方あたりから殺気を感じるのだが……。
「まぁあさぁああるぅうううううう!!」
(死亡フラグ 4+1=5)
ガバッと起きて直ぐに臨戦態勢に入る俺。
俺の選択肢は……?
そこに天から3つの選択肢がぁ!!
1.窓から飛び降りる
2.バリケードを造る
3.自尽する
あれ?
直接闘うという選択肢はないの?
もしかしてマトモに立ち向かうと死ぬってことだろうか……。
……怖っ……。
…って、んなこと考えるより、今は選択肢のシュミレーションが先だ。
さて、先ず1は…
(毎度毎度スイマセン。ここからは中崎勝の脳内妄想です。ドラ〇エ風なのは揺るぎません。)
if・1を選んだら
晴美はまだこちらに気付いていない!!
中崎勝は窓から飛び降りた!!
中崎勝に5348のダメージ!!
中崎勝は死んでしまった!!
DEAD END
(以上、中崎勝の脳内妄想でした)
……うん、分かってたよ、死ぬことは。
飛び降りたら死ぬというのは一般常識であり不変の真理なわけで。
神様はなんでこの選択肢を残したんだ?
俺に死ねと?
……という事は、もしかして既に死亡フラグ確定?
いやいや、まだ諦めないぞ、2を選んだらどうなるかまだ分かっていないんだから。
(これからは中崎勝の脳内妄想です。この説明が面倒くさくなってきました)
if・2を選んだら
晴美はまだ気付いていない!!
中崎勝は机を入り口付近に積み上げた!!
晴美は入り口の机を蹴飛ばした!!
中崎勝は机の下敷きとなった!!
中崎勝に∞ダメージ!!
中崎勝は死んでしまった!!
DEAD END
(以上、中崎勝の脳内妄想でした)
……。
やっぱり死ぬじゃん。
3を選べば死ぬのは自明の理っていうか、自尽だから自ら死を選んでしまってるし…。
うん、最後はキメゼリフと共に華々しく散ろう。
せーの。
「メディーーーク!!」
(死亡フラグ 5+1=6)
俺が叫び声をあげたのと同時に、晴美が教室に飛び込んできた。
そして俺を見つけるやいなや、イノシシのような茶色い髪をなびかせ、無駄にデカい胸を揺らしつつ、チーターもびっくりの速さで間合いを詰め、喉元に手刀を突き付けながら、
「ね~え?なんでこんな状況になってるか分かってるわよねぇ?」
「もも、もちろん分かってるって!!」
「ぁあ?なんだその態度はぁ!!」
どうやら怒りの琴線に触れたらしい。
「もちろん存じ上げております!!」
「でぇ?誰の責任だって?」
「私めの責任でございます!!」
「そうだよねぇ?バカでアホでマヌケでノロマでクソで……、えっーと、……バカでアホでマヌケでノロマでクソな勝が悪いんだよねぇ?」
語彙力が無くて説得力の無い罵倒をする晴美。
「もうちょっとさ、ビッチとか唐変木とか木偶の坊とかイロイロあるだろ?」
「バカでアホでマヌケでノロマでクソでビッチで唐変木で木偶の坊の勝に情けをかけられる筋合いは無いわ!!」
とか言いつつも、ちゃっかり恩恵をもらっている晴美。
「だいたいね、勝が弱いから私が付きっきりで指導してあげてるっていうのに、生徒からボイコットってどういう事よ!!」
「違うんだ、話を聞いてくれ!!」
「ほぉー、私の納得する解答でなかったらどうなるか分かってるわよね?」
「あ、ああ…。なら言うぜ?昨日建立記念日と知らずに学校に行ったらだな、オオカミみたいな美――」
とまで言ってから気が付いた。
凛世に別れる前にこう釘をさされたのだった。
――他の生徒に言ったら串刺しにして丸焼きにして、『上手に焼けました~♪』と言ってから食べてやる――と
あ、もちろん後半は自分の言葉だ。
というわけで、ここで事実を言うと死亡フラグが確定するのだ。
「早く言いなさいよ」
「び、び、そうだ!!ビーカーが空から降ってきて大変だったんだよ!!」
「んなわけないでしょ!!本当の事を言いなさい!!」
んー、流石に嘘って分かるか…。
じゃあ…。
「ビックリ人間が目の前を通り過ぎたから尾行してたんだよ!!」
「……で?結局はどうなの?」
冷たくアシラわれた。
クソ…、言っても凛世に殺されるし、言わなくても晴美に殺されるし……
つまり本当っぽい嘘をつけば良いんだよな。
ならば!!
喰らえ!!
「ビ、ビ、ビッチだったという事実のあまり気絶していたんだ!!」
どうだ!!自虐ネタだぞ!!
さっき罵倒に使われたを有効に活用し!!
しかも声を震わせて言いたくなかった事を演出!!
見事なまでの本当っぽい嘘だ!!
勝った…、勝ったぞ!!
「あぁ、そう、なるほどね」
「分かってくれたか」
「勝が殺されたがってるって事がねぇ!!」
「良かったってぇええええええええ!?」
その直後振り抜かれる右腕。
警戒態勢を取り払ってしまった俺はなす術もなく、みぞおちにクリーンヒット!!
「ーーーッッッッッッッ!!」
声にならない悲鳴が教室にこだまする。
続けざまに左手で首をつかまれたかと思うと、そのまま後ろに回り込まれ、無理やり押し倒された。
そしてマウントポジションを取られた俺は文字通りなす術も無くなった。
「私もね、こういうことしたくないのよ?ただ、勝の将来のために更正させて道から外れたのを元に戻す義務を幼なじみは負っているからよ!!」
「いや、少なくとも権利だろ」
「いいえ義務だわ!!って事で今日から勝を監視するわ!!」
え?
「あのーっ、それはどういう?」
「24時間私が勝を見続けるって事よ!!」
えぇええええええええ!!
ストーカーか!!
ストレス溜まって死んでしまうわ!!
というかそんな事されたら…、凛世に殺される!!
どんだけ死亡フラグ立つんだよ…。
と、自分の人生を悔やみつつ、断る方法を考えてみる。
せめて条件がマシになれば良いのだが……。
あぁ、そうだ!!
「せめて放課後だけにしてくれないか?」
「何でよ?」
と疑惑の目を向けてくる晴美。
「そりゃあさぁ?特訓っていつも放課後にやってるじゃん?その延長的な感じでやったら楽なんじゃないか、っと思って」
というか凛世と鉢合わせしたら面倒なので。
「うぅ~ん」
まだ折れてくれない様子。
「人格に関しても特訓するって思えばいいでしょ」
「ん…、そう、そうよね」
やっと納得してもらえたご様子で。
「ていうかなんでここまでしてくれるわけ?たかがただの幼なじみだろ?」
「たかがじゃないわ!!……(それ以外勝との接点がないのよ)……」
「ん?なんか言った?」
「そんな事どうでもいいでしょ!!」
「いや、気になるだろ」
「お互い様でしょ!!」
「まぁそりゃあそうなんだが」
「とりあえず今日から始めるから覚悟しなさい!!」
まじか…。
そして放課後。
縛られて天井に吊られています。
晴美曰わく。
「人格っていうのは人生における経験によって形成されるものなの。つまり、強い人格の人が過去にした経験をさせれば自ずとそうなるのよ」
「何か間違ってないようで間違ってるような…」
「口答えしない!!私の言うとおりにしておけばいいの!!」
「へいへい、分かりましたよ」
「一応言っておくけど、この特訓を次すっぽかしたら――」
「すっぽかしたら?」
「――血を見るわよ」
晴美はそう言って何処に仕込んでいたのか、ナイフの刃をこちらに向ける。
こうして、俺の死亡フラグは日に日に増していくのだった、トホホ…。