表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/64

17.マジで修羅場った5秒後!?

目を覚ますと、辺りはオレンジ色に染まっていた。



凛世、晴美、まひるの3人は仲良く何かを覗いていた。



「……Good evening」

「あら勝、やっと起きたのね。心配したわ」

「兄様、お怪我はありませんか?」



「それホントに当事者のセリフかな?」



何故だ、みんながやけに冷たい。



「それはそうとして、今日って何曜日なんだ? 夕方ってのは分かるんだが」



状況を整理しないとな。



「まひるの女の勘では今日は火曜日です」



「何故女の勘!?」



「本当は兄様のケータイを見ているだけなんですけどね」



「ケータイ返せ!!」



止めろ、そのケータイには俺の秘蔵のコレクションが……。



「返したらまひるに得は無いじゃないですか」



ぐっ、確かにそうだが……。



「あ、コチョコチョ止めるから! な、まひる。それで良いだろ?」



「コチョコチョはまひるにとってはご褒美のようなものなので止めないで下さい」



「じゃあ返さないとコチョコチョ止めるぞ」



「えーっと、ケータイって金とかレアメタルが入ってるんですよね」



「ほじくり返して売るとか本当にやめて!!」



脅し返すとは、まひるも成長したものだ。



「じゃあ頭撫でてやるから、な?」



「むー、本当ですよ? 嘘だったら兄様のソーセージ切り落としますからね」



なんだ? まひるは変態キャラに生まれ変わったのか!?



コチョコチョはご褒美だと言い張るし、ソーセージ言い張るし……。



俺はキュウリくらいは……ないけど、まあソーセージだな、うん泣きそう。



「本当だ、ほら。返して?」



「わ、分かりました、兄様のこと、信じます」



と言ってまひるは、渋々ケータイを差し出した。



俺は受け取り、約束通り頭をなでてやる。



「偉い偉い」



「んっ……」



まひるも心なしか気持ちよさそうだ。



撫で撫で……撫で撫で……。



「んはっ……」



撫で撫で……撫で撫で……。



「んんっ……」



何だこの優越感。



「ガルルルウゥゥ」

「腰を落として気を集中させ……」



おい、そこの2人、牙をむき出しにするのと正拳突きの練習をするの止めろ。



とりあえず、撫でているのが原因だろうから、まだ撫でていたいけれどこれくらいで止めておこう。



「あっ……」



手を離したとき、まひるはどこか残念そうにしつつも、顔を赤らめていた。



あー可愛いなぁ、これで妹じゃなくてバイオレンスじゃなくてヤンデレじゃなかったら……いやいや、そんなことはあり得ない。



妹でバイオレンスでヤンデレだから俺の妹、まひるなのだ。



異論は認めん。



だから俺とまひるは、一生兄妹のまま、まひると結婚なんてしてたまるものか。



と、その時。



「……隙あり」



凛世は大変な物を盗んで行きました。



俺のケータイです。



「ってなんでだよ!!」



さっきまでお前ら持っていたじゃないかよ!!



取り返す必要性はないはずだろ!?



「……でて」



「え? なんだって?」



「……撫でて」



んー? どういうことだ?



「……stroke my head」



直訳で『私の頭を撫でろ、そうすればケータイは返してやるぞクハハハ』ってことだな、なるほど分からん。



まあ、好奇心旺盛の凛世のことだから、頭を撫でられるのがどういうものか知りたいのかもな。



「はぁ、分かったよ」



そう言って凛世の頭を撫でてやる。



「クゥ~~ン」



撫で撫で……撫で撫で……。



「whineeee」



英語で鳴く、だと……!?



撫で撫で……撫で撫で……。



「キャイ~~ン」



それは止めろ。



謎の言語によって反射的に手を離す。



「……じゃあ」



それなりに満足はしてくれたのか、凛世からケータイが返ってくる。



「まあなんだ、ケータイなんか盗らなくても撫でるくらいならいつでもしてやるぞ」



ケータイを受け取りながら凛世にそう言ってやる。



そうだ、ケータイの秘蔵のコレクションさえ見られなければいいんだ。



「……そう」



「理解が早くて助かるよ、誰かさんと違って」



「その誰かさんに背後を取られている勝は何なのかしら?」



「うわぉお!?」



急に背後から背中に抱きつかれた。



「もう一度気絶させさえすれば、ケータイを奪うなんて楽勝なのよ!!」



この言葉遣いにこの背中に当たっているモノから察するに、首を絞めに掛かっているのは晴美だろう。



「待て待て、晴美。いったい何をするつもりだ」



「この状態から技をかけられるプロレス技よ」



そう言って、晴美は俺の腹付近で両手をしっかりロックして見せる。



「ええと……ジャーマンスープレックス?」



「正解よ、でもね正解したとしても止めるとは言ってないわ」



ですよねー。



「じゃあさ、ケータイを渡すからさ、ジャーマンスープレックスは止めにしないか?」



ケータイを奪うのが目的なのだったら、別にわざわざジャーマンスープレックスを決める必要性はないだろう。



ジャーマンスープレックス、ああ長いなもう、ジャーマンで良いか。



ジャーマンを決められる怖さから、背中に当たっているモノを喜べないでいる俺なのだった。



「いえ、ジャーマンを決めないと私は引き下がれないのよ」



ジャーマン言いよる。



「なぜそこまでしてジャーマンにこだわる? 別に他の方法ならいくらでもあるはずだぞ?」



ああ、俺はいったい何の説得をしているんだ。



「ジャーマンはジャーマンであってジャーマンのみジャーマンなる神聖な技だからよ!!」



日本語でお願いします、頼みますから。



「分かった分かった、よく分からないけど分かったと思う、分からないけど。ジャーマンをしたい、そうだな?」



「そういう事よ」



「じゃあ、俺じゃなくてもいいんじゃないか? まひるとか凛世だとか」



「凛世って誰よ?」



あ、忘れてた。



凛世のことはニーナと言っていたんだった。



「勝? 私に嘘をついていたの? じゃあ、あのオオカミ少女の名前はニーナじゃなくて凛世ってことなの?」



くそ、こんなときに限って勘が鋭いな。



必死に首を動かして凛世のもとを見る。



「……イエス、マム」



「オーケー、逝くわよ!!」



「漢字も違うししかもそこイエスマムじゃねええええええええごっ!!」



体が宙に浮き、後頭部から地面に落ちた俺は、気を失わざるを得なかった。



最後に聞いた声が「良い子のみんなは真似したら怪我するから止めてね」と言った晴美の声だったのは空耳として忘れたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ