13.オオカミ系美少女の場合。
「はっ!!」
目を覚ますと、また違う場所にいた。
部屋と言えば部屋だが、六畳ほどで、小さい窓が1つ上に付いているだけで装飾品が全くない。
空き部屋か……?
状況から想像するに多分アイツらに運び込まれたのだろうが……。
アイツらは一体全体、何を考えてんだ?
まぁ、ロクな事じゃないとは思うが……。
とりあえず逃げるとするかね。
幸い、手錠は外されてるみたいだし。
逃げたら後でどんな仕打ちを受けるか分かったもんじゃないが。
身の安全の確保が先決だ。
というわけで、さっさと逃げる事にしたのだが……。
出口はどこ?
いや、ね?
さっきも言ったと思うが、小さい窓以外、この部屋には何もないのだ。
そう、ドアさえも。
となると、コレはいわゆる……密室ってヤツじゃないのか?
……………………。
ええええええぇぇぇぇぇぇ!?
どうやってこの中に俺を放り込んだんだ!?
あの小さい窓も人が通れる大きさじゃないぞ!?
ん~~~と。
とりあえず床に仕掛けが無いか探すか。
と思い、床を踏み鳴らすも、何も無い。
ですよね~。
見たところ天井にも仕掛けはないみたいだし……。
となると壁か……。
壁を少しずつ触って調べていくが……。
分かるか!!
早々に諦めた。
だってさぁ。
ただの一高校生がだよ?
密室の謎を解くだぁ?
出来るかよ!!
俺がどういう主人公なのか分かってんのか?
分かるんだったら次に俺がとる行動が手に取るように分かるだろ?
そうだよ。
いつものヤツだ。
「メディーーーーーーーーーーーク!!」
…………。
……………………。
あれ?
何かが可笑しい。
とりあえずもう一度いくぞ。
「メディーーーーーーーーーーーク!!」
…………。
……………………。
やっぱりだ。
死亡フラグが増えないぞ。
これは一体どういう事なんだ?
「メディーーーーーーーーーーーク!! メディーーーーーーーーーーーク!! メディーーーーーーーーーーーク!! メディーーーーーーーーーーーク!! メディークメディークメディークメディークメディーク!!」
何回叫んでもやはり死亡フラグは増えなかった。
くそ……どうすれば元に戻れるんだ!!
…………。
いや、待てよ?
死亡フラグが増えなかったのは良いことじゃないのか?
それだけ死亡する確率が低くなるんだからさ。
そうだ、そうだよ。
俺はこの時を待ってたんだ。
この死亡フラグのせいで面倒な事に巻き込まれていたんだ。
狼に襲われる事に始まり、天井から吊られ、手錠を付けられ、地面を引きずられ……。
…………よくここまで生きてこられたと、しみじみ思うね。
とにかく、叫んでも無駄だということが分かった以上、もうどうする事もできないし……。
と、その時。
外から何やら不吉な音がした。
今までの経験で分かる。
これは……。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーン!!
ほらな。
「……どっせーい」
けたたましい破壊音とは裏腹に覇気の無い声が聞こえた。
凛世だ。
にしても、壁を壊すほどの力って……。
怖っ……。
「それ、俺の家でやったら怒るぞ」
「……待たせた」
無視かよ。
「待たせたって俺は気絶させられていただけなんだが」
「……気にするな」
「いや気にするわ!! お前と関わってからというもの、どんだけ気絶させられてきたことか!!」
「……それはそれとして」
「無視か!? 無視なのか!?」
「……2人きり」
「2人きり? まぁそうだな」
それがどうした?
「……する?」
はぁ?
「何を?」
「……交尾」
「あぁ、交尾ね。あの男と女が子供を作る為にするヤツね。そうかそうか、りn…ニーナ、いや今は凛世でいいのか」
「……イエス、マム」
「だが断る」
「……何故?」
何故ってそりゃあお前……
「俺たち、ただの友達じゃん」
「……っ!!」
ショックを受けたかのような顔をした凛世は、そのまま地面に倒れ込んだ。
「なんだよ、嘘は言ってないぞ?」
何故そこまで落ち込む必要がある?
「……修羅場を潜り抜けてきた2人=夫婦」
「≠だよ!! むしろ夫婦になってから修羅場を潜り抜けるんだよ!!」
「……結ばれる運命」
「別に凛世とは運命の赤い糸で結ばれてない!! 結ばれてるとしたら死への赤い糸だよ!!」
「……諦めるべき」
「元々ありもしない事柄で俺を服従させようなど、100年早いわ!!」
「……攻撃OK?」
「NO!! NO!!」
いきなり攻撃仕掛けようとしてんじゃねえよ!!
「……じゃあ交尾?」
「NO!! NO!!」
「……じゃあ攻撃」
「NO!! NO!!」
「……じゃあ交尾」
何コレ無限ループ。
「とにかく交尾も攻撃もお断りだ!!」
「……ダメ?」
上目使いをしてこちらを見てくる凛世が凄い可愛いが。
「ああ、ダメだ!!」
一般常識だろ!!
意味の分からない事言ってんじゃねぇよ!!
「……なら」
「なんだ?」
「……実力行使」
と言って手を振りかぶる凛世。
「それは攻撃だぁああああああ!! 止めろぉおおおおおおおお!!」
「……予測可能回避不可能」
淡々と発せられる言葉とは裏腹に、素早く多種多様な攻撃を仕掛けてくる凛世。
もう……避けきれ……ない!!
その時凛世のアッパーカットが俺の顎を直撃し。
俺は今日3度目の眠りに付くのだった。