12.夢オチという都合のいい話はない。
今の状況を整理しよう。
俺の両隣りに裸の女(狩り友、幼なじみ、妹)が寝ている。
なんだ、夢か。
俺は別にコイツらと一緒に寝たんじゃなくて、夢の中でコイツらが勝手に寝てるんだ。
そうだ、そうに決まってる。
こういう大事は往々にして夢オチと相場は決まってる。
現実では有り得ない事を起こして期待させて、それが夢でしたとしてオトす。
小説やマンガの常套手段だ。
多分、今回もその類なのだろう。
ラノベだったらエロすぎて挿し絵にする事すら出来ないような、そんな情景が現実であるわけがない。
ほら、その証拠に頬をつねったら痛いじゃないか。
…………え?
夢じゃねぇじゃないかぁああああああああああ!!
おい、倫理的にヤバいぞぉ!!
このシーンがあるせいでこの小説がRー15になってしまうじゃないかぁ!!
なんということだ。
あくまでも健全を守っていた俺がこんなところで変態になってしまうなんて。
いや、待てよ。
今、この場所からそっと逃げ出したらなんとかなるんじゃないのか?
この状況を誰にも気付かれずに打破すれば、最悪うやむやに出来るだろう。
そうと決まれば早速行動である。
だが。
両手に手錠が繋がっていた。
忘れてたぁああああああああああああああああああ!!
もうどうしようもないような気がする。
しかーーーーーーしっ!!
ここで諦めないのが俺だ!!
進化したと言えば良いだろうか。
確かに今までの俺は『メディーーーーーーーク!!』と軽々しく言ってましたよ、すぐに諦めてましたよ。
しかし、今の俺はその修羅場を掻い潜ってきた(?)、いわばニュー中崎なのだよ。
なんか既視感を覚える呼び方だが、気にするな。
とにかく、これだけでは全くあきらめないのだよ。
とりあえず、晴美とまひるを起こさずにこの場から離れたらいいんだろ?
なら簡単だ。
晴美とまひるを抱えて出ていけばいい。
え? 無理ゲ―だと?
そんなのやってみないと分からないじゃないか。
何? どうやるか知りたいだと?
それはだなあ……。
よーく聞けよ?
いいか?
……………………。
どうしよ?
そういえば、選択肢をまだ考えてなかったな。
えーと、選択肢はと…。
1.「メディーーーーーーク!!」と叫ぶ
2.「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」とつぶやく
3.一人をだっこ、もう一人をおんぶして脱出する
1と2は死亡フラグでしかないじゃん!!
強制的に3を選ばせる気じゃん、思考の余地なしじゃん!!
……じゃあ3を選ぼっか、それ以外出来る事がないのだから。
その時。
首に違和感を感じた。
なんだろうと首の方を見ゆると。
首輪がつながっていた。
凛世の首と。
NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!
これじゃあどうしようもないじゃないか!!
かかか、これは俺に1を選ばせようと、そういう事なんだな。
それを望んでいるのなら、甘んじて受けようじゃないか。
そうすることで期待にこたえられるのなら本望である。
所詮、俺はこんな運命なのだ。
さてと、戯言を並べても仕方ない、さっさと仕事をして苦しみから解放されるか。
「メディーーーーーーーーーーーク!!」
(死亡フラグ ∞+1=∞)
「……?」「んにゃあ!?」「なななな何事ですか!?」
やっぱり三人いたら、反応も三者三様なんだな。
誰がどの反応をしたかは明らかだろう。
「ハロー、エブリワン。起こしたのは言うまでもないな?さあ、この状況を説明してもらおうか」
「……?」
「何言ってるの、勝がしたくせに」
「兄様は……凄かったです」
「何が!?」
こいつら、あくまでもしらばっくれようというのか。
よし、ならばどんな手を使ってでも口を割らせようじゃないか!!
一番口が軽そうなのは……まひるだな☆
「まひる、とりあえず説明プリーズ」
「い、いくら兄様でも教えることはできません」
「そうか、それならば実力行使しかないな…」
くすぐって全てを吐き出してもらおうか。
と、その時。
「それはもう想定済みよ!!ニーナ!!」
「……ラジャー」
凛世に急に首輪を引っ張られ首が締まった。
あ、ヤベ、俺死ぬかも。
全てを吐き出すのは俺かもしれない。
嘔吐物の方だけど。
つーか凛世と晴美の間に何があったんだ?
なんで晴美が命令してんだ?さっきまで凛世に馬鹿にされてたのに…。
あぁ、意識が遠のいていく……。
いや、まだ諦めたら駄目だ。
「まあいい、俺にはまだ切り札があるんだ、こいつがあればまたいくらでも……」
「それも死亡フラグですよ、兄様っ!!」
(死亡フラグ ∞+1=∞)
アウチッ!!
もう既に無限なのにさらに死亡フラグが増えていく…。
さしずめ、俺は死亡フラグの創造者といったところか。
あぁ、もう頭に血が回らなくなって何を考えているのかよく分からねえ…。
最後にこれだけは言わせてもらおう。
「メディ…………クッ」
(死亡フラグ ∞+1=∞)
そこで俺の意識は途絶えた。