表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/64

7.嵐の前の静けさとはこの事だ。

人生史上最もしょぼいハプニングを乗り越えた後。



「このまま外でお昼にしませんか?」



まひるがふと、こんな提案をした。



「そうだな、せっかくの日曜日だしな」



外に出ている間は縛られずにすむしな。



「なら、とりあえず手を繋ぎません?」



「まぁそれぐらいなら」



と言って俺はまひるの手を取る。



(ガチャ)



すると、まひるが俺の左手首に手錠を取り付ける。



ってえぇえええええ!!



「なんでこうなったかな、まひる」



まひるは俺の発言もお構いなしに、今度は自分自身の右手首に取り付ける。



「これで安心して手を繋げますね」



「うん、既に繋がってるけどね」



「重箱の隅をつつくような真似をしていると嫌いになりますよ?」



「お兄ちゃんにとっては全く重箱の隅じゃないんだよ。それから、嫌いになってもらうのはこっちからしたら好都合だし」



自分が矛盾している事を言っていると気付かないのだろうか。



「そ、それは困ります」



「だろ?だったら手錠を外してくれないかな。食べる時にも支障が出るだろうし」



このまま外に出たらまた視線が降り注ぐだろうし。



「はい…、兄様がそうおっしゃるのなら外します」



と言って、朝から着ている寝間着のポケットの中を探す。



って、忘れてたぁあああああああ!!



俺達、さっきまで縛られてたからすっかり頭の中から抜けていた。



「良く考えたらこの服装じゃ店に入るどころか、家に帰ることすらままならないよ!!」



そう、俺達は今寝間着を着ているのだった。



中国には寝間着で徘徊するような街もあるらしいが、日本には生憎そういう場所もない。



つまりだ。



店で食べるには1つの問題をクリアしなければならない。



一、服装をなんとかする。



「申し上げづらいのですが…」



「ん?何」



「鍵が見つかりません」



追加。



二、手錠をなんとかする。



これらの問題を打破するのは……。



うん、無理だな。



「なあまひる、今日は一旦帰らないか?お昼はお兄ちゃんが作るからさ」



「ダメです、せっかくの久しぶりのデートなのに、容易く終わらせてたまるものですか」



「ちょっと待て、なにやら不穏な言葉が聞こえたんだけど。デートって……、もしかしてコレの事?」



「当たり前ですよ!!」



えええ?



兄とコンビニまで謎の格好で行ってロープの束縛から解放される、という行為をデート!?



「まひる、お兄ちゃんはとうとうまひるを病院に連れて行かないといけなくなったよ」



「何でなんですか?ただただ兄様を異性として見ているだけじゃないですか」



「それが駄目だと言っているんだ!!」



「あ、訂正します。好きな異性です」



「もっと質が悪くなったよ!?」



「とにかく、まひるは帰りたくありませんから」



う~ん、困った。



さて、どうするかな。



服は買うしかないか。



手錠は……



ハサミで切れないかな。



と考えつき、持っているハサミで手錠を斬りつけてみる。



だがビクともしない。



「そりゃあそうですよ、地球上で一番硬いとされているダイヤモンドでも傷つけることの出来ないと言われている金属が使われていますから」



「無駄に高スペックな手錠を使わないでくれるかな!?」



値段とか大丈夫!?



「これはまひると兄様に繋がれている、運命の赤い糸の強度を示そうと思いまして。なので、たとえこの手錠が100万円だったとしても全然苦ではありませんでした」



「100万円ってどうやって稼いだ!?」



まだ中学生だからアルバイトは出来ない筈だろ!?



「大丈夫ですよ、アルバイトはしてませんから」



はぁ…、良かった…。



「って全然良くないよ!!どこから湧いてきたの100万円!?」



まさか…、援交?



いやいやそんな事あって欲しくない、あるわけがない、あってはならない!!



「あぁ、あの方のテクニックは凄かったです」



オーマイガーッ!!



やっちまった、俺の妹が汚されてしまった!!



「いったいドコのドイツだ!!ぶん殴ってやる!!」



「あ、あのぅ…」



「なんだ!!早くお前を壊した犯人を言え!!」



「それがですね……」



「言わないように口止めされているのか!?大丈夫だ!!お兄ちゃんがソイツを殺してお兄ちゃんも死んでやるから!!」



「嘘なんですよ!!」



はい?



「だから!あの方とかテクニックだとか言うのは嘘なんですよ!!」



「なんだ嘘か…」



安堵感と疲労感が一気にこみ上げてきて、俺は遂にはしゃがみ込んでしまった。



だが。



「なんで嘘をついたのかな、お兄ちゃんに」

「ほ、本当はお兄ちゃんが慌てるのを見たかっただけなんですよ!でも、アソコまで怒り狂うとは…」



と、まひるは手をあれやこれやしながら説明する。



「だって実の妹がそこらへんにいるオッサンに汚されたと思ったら、妙にイラついてな」



「もう、まひるは兄様一筋ですからその心配はしなくても良いですのに」



「それは一番問題だな!!」



「なんだったら兄様の手でまひるを汚――」



「却下」



「……却下されるのは分かってましたよ、でもまひるは諦めません、たとえそれが犯罪であろうと!!」



「そこは諦めて!!」









一段落したところで、もう一度これからどうするかを考えてみる。



手錠については諦めるしかないので、とりあえず服を買いに行くことにした。



だが、どうやって?



「もう一度2人羽織をすればいいんですよ」



「まぁそうするしかないか、じゃあドコに行く?」



「それぐらいはエスコートして下さい」



「デートという形は崩さないのな」



まぁ、妹の頼みとあらば聞いてやらんこともない。



それならば兄らしく妹をエスコートしてやろうじゃないか。



だが、気乗りしたせいであんな事になるとは思ってもみなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ