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6.平和な日曜日、とは行かない。

一連のゴタゴタの後、俺は久しぶりに寝床に着いた。



着いたのだが……



「なあまひる、この体勢どうにか出来ないのか?」



「絶対出来ません」



そう、俺はまひると抱き合った状態で縛られているのだ。



理由は言うまでもないが、まひるとそういう契約を結んでしまったからである。



「せめてさ、縄をほどくとかさせてくれると有り難いんだけど」



「いけません、寝ている間に寝返りをうつといろいろ面倒ですから」



「でもほどかないとお兄ちゃん寝れないんだよ」



ただでさえいろんな所に当たる状態のに、パジャマになってよりリアルに感じれるようになってしまっているのだ。



妹と言えど、やはり意識してしまう。



「寝れないのなら寝れるまで頑張って下さい」



「この状態に慣れるまでに過労で死んでしまいそうだよ」



「なら文字通り死ぬ気で眠りについて下さい、そしてこの状態が当たり前のように感じるようになって、あわよくばまひるを襲ってあんなコトやこんなコトを……」



「ヤバい、そんな陰謀が潜んでるなんて考えもしなかった」



「そうでしょう、名付けて『既成事実作っちゃおう作戦』です」



「でもそれ本人に言ったら意味ないよね」



「あ…、でも欲望を抑えられないまで誘惑するので大丈夫です」



「その言葉は出来ればお兄ちゃん以外に使ってほしいな」



近親相姦なんて神話の世界だけにして欲しいぜ。



「とりあえず、この体勢を変えることはありませんから」



「さいですか」



「あ、もし抑えきれなくなった場合はロープをほどいても良いですよ」



「そんな事絶対起きないから!!」



という事で前述の通り、抱き合いながら寝る事になったのだが……。



ああ!!



髪の毛からシャンプーのイイ香りが!!



柔らかく小ぶりな胸が!!



これまたしっかりしつつそれでいて弾力のある太ももが!!



という風に案の定誘惑されまくって一睡も出来なかった。









いつの間にか外は明るくなっていた。



寝るはずだったのにただただ疲れただけだった。



しかも縛られていたせいでむやみに動く事も出来ず、筋肉痛になってしまった。



まひるはというと、



熟睡していた。



しかも心なしか肌がいつもよりツルツルしている気がする。



何故なのかは怖くて聞けないが。



妹の寝顔を見るのももう限界だし、そろそろ起こすか。



「とりあえず起きようか、まひる」



全く反応を示さないまひる。



「おい、まひる起きろ」



やっぱり全く反応を示さないまひる。



「起きないとイタズラしちゃうぞ」



「イタズラだったら存分にやっちゃって下さい」



「起きてるね」



「起きてません」



「寝ている人間は喋らないはずだよ」



「これは寝言です」



「寝言だったら返事は出来ないはずだよ」



「じゃあ一種の催眠にかかってるんです。返事に全て答えてしまうという」



「なら着替えるから一旦ロープをほどこうか」



「このまま着替えてもいいですよ?」



「まひるは良くてもお兄ちゃんはダメなんだよ!!さぁ、ほどこうか」



「無理です」



「何でだよ」



「だって……、ほどけないように細工をしましたから」



へ?



「ちょっと待って、どういうこと?」



「ちょっとやそっとじゃ結び目がほどけないようにと少々複雑にロープを縛らせてもらいました」



「ちょっと!!どうすんの!!」



「まひるはこのままでいてもいいんですよ?」



「ダメだから、社会的に死ぬから。というか完璧起きてるよね」



「あ、はい、起きてます」



「ならとりあえずハサミを取りにいこうか」



ほどけないなら切る他ないだろう。



「でもハサミって家にありましたっけ」



「俺は学校に荷物全般置いてきてるから」



「まひるもです」



なんだかんだ言って似た者兄妹だった。



「あぁ…、どうしよう」



「プラスチックのハサミならあるんですけどね…」



「他に刃物っていうと包丁ぐらいか」



「怖いから嫌ですよ!!」



「分かってるよ、じゃあ……買いに行くしかないだろうな」



「でもどうやって買いに行きます?流石にこの姿で街を歩きたくはないです」



「まあ誰だってそうだろうな」



「せめて着替えてからですよね!」



「ちょっと感性がズレてるようだけどね」










あの後いろいろ協議した結果、近くのコンビニに買いに行くことになった。



そして行く方法なのだが……



「まひるは前も後ろも見えないので合図宜しくお願いしますね」



「あぁ、分かってるよ」



一回り大きな服を羽織り、まひるを覆い隠すようにしたのだ。



そうすれば、やや不自然ではあるが、まひるが抱きついている状態である事はまずバレる事はない。



が。



「ねぇー、あの人どうなってるの」



「こらっ!指差さないの」



視線が痛い、痛すぎる。



早く移動しようにも、



「……漏れるのでゆっくり動いて下さい」



まさかの尿意ときた。



これはもうどうしようもない。



つまりだ。



拘束が解けないとトイレに行かせる事が出来ずにまひるがお漏らしをしてしまう。



だけども急げば急ぐほどお漏らしする確率が上がる。



あぁ!なんだこのジレンマ!!



あぁ!もうこうなったら心の中でだけでもあの言葉を叫ぶしか無かろうて!!



行くぞ!!



1、2、3。



メディーーク!!


(死亡フラグ 7+1=8)









(ジャーーーーァ)



「あぁ…何だか、いろんなモノが一緒に出たような気がします……」



「俺も気力体力ともにマイナスゲージに振り切ったよ……」


(死亡フラグ 8-1=7)


本当にギリギリだった。



家から500メートル先にあるコンビニまで20分。



コンビニに入ってからハサミを買うまで5分。



トイレを借りてロープを断ち切るまで5分。



計30分もの時間を費やして、遂にロープの呪縛から解き放たれたのだった。



「これからはこうならないようにしてね」



「はい、もうハサミを買いましたので寝る時には寝床に置いておけば万事オーケーです」



「そっちに行っちゃた!?」



ロープで縛るのを止めようという思考は無いのね。



「ロープで拘束しない限り安心出来ませんから」



「まあ良いんだけどね、お兄ちゃんも承諾しちゃったから」



そしてこれから先もまひるに恋心を抱く可能性など皆無だから。



とまあこんな具合に、人生の山場というにはちょっとちっぽけでしょぼいハプニングを乗り越えたのだった。

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