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5.竜狼相搏つ!?

次第に暗くなってきた頃…



俺は唯一自由が認められた風呂場にいる。



一通り体を洗って熱々の湯船につかり、これまでの3日間で起きた出来事を整理してみた。



まず建立記念日と知らずに学校に行ったらオオカミに襲われた。



これがすべての元凶だったんだよな…。



んで凛世に会って狩りに連れて行かれた。



熊を狩るとかどこのハンターなんだよ凛世は。



次に晴美に殴られた。



あれで死ななかったのは奇跡と言っても良い。



それから天井に吊り上げられて……



なんでだろ、この3日間自分の人権が一切守られていないような気が……。



まあそれから凛世ともう一度会って、勉強会をする事になって、俺の家に……。



って、



「忘れてたぁあああああああああ!!」



(バンッ)



「どうかしましたかぁ兄様!!」



「何でもないから風呂場に入ってくるなぁあああああああああ!!」



「まひるはいつでも準備万端ですよ?」



「訳分からない事言ってないで早く出て行けぇええええええええええええ!!」



「すみません冗談です!!ただ一刻を争う事態がありまして……」



「おぉ…、何だ?ツマラナい事だったら兄妹の縁を切るぞ」



「それだけは勘弁下さい!!……もし縁を切られるような事などあれば、まひるも兄様の首を切らざるを得ません」



「怖いよ!!」



「大丈夫です、まひるもその後お供いたしますから」



「どこが大丈夫なんだ!!さっきのは冗談だから止めてくれ」



「本当にですか?」



子リスのように縮こまり、か細い声で再確認するまひる。



「あぁ、冗談だよ。だから話してごらん」



抱き締めたい感情を抑えられなくなるから。



「それがですね…、オオカミが家の周りを囲んでいるみたいなんですよ」



何ですと!?



凛世の奴、一家総出で来やがった!!



「あぁ……、ちょっと待っててね、服着るから」



「分かりました、お手伝いさせてもらいます」



「いやいやいや!!大丈夫だから、外で待ってて!!」



もう既に危ない状況なのに、それ以上されたら理性とか何やらがぶっ飛びそうだし!!



「そうですか……、まひるは兄様の召使いすらさせてもらえないのですね。という事はまひるは奴隷、または人間ではない、つまり生きている価値は無いのですね」



「いや、そんな事言ってないって」



「かくなる上は身投げも辞しません、今まで本当にありっヒャッヒャヒャヒャヒャヒャ!!」



全力でくすぐり倒した。



やはりこれからは早めに策を打つべきだな。



「……部屋で待っててくれるね?」



「ハヒャヒャヒャヒャ!!ヒャッヒャッ、ヒャい!!分かりヒャヒャ!!止めっ、ヒャヒャヒャヒャ!!」



結果、兄の圧勝。



という事で、まひるはそのまま部屋に戻り、俺はというとさっきまで着ていた私服を洗濯機から出してもう一度身に着け、玄関へと走った。



だが、手遅れであった。



何故なら……









(バコーーーン!!!!)



扉が吹っ飛ばされたからね。



「……只今参上」



「せめてもうちょっと違う入り方をして欲しかったな……壊したらダメだって……」



あぁ…、ドアってどう修理するんだろ。



「……鍵が掛かっていた」



「だったらインターフォンを押すなりしてよ」



「……?」



「え?もしかしてインターフォンを知らないの?」



「……(コクン)」



ドコゾの原始人!?



まぁ、野生生活してたんだから知らなくても無理はないか。



「よし凛世、一旦外に出よう」



文明の利器とやらを教えてやらんとな。



「これがインターフォンだ、ココを押してみて」



「……ココ?」



細く、しなやかな指でインターフォンのボタンを押す。



すると、



(ピンポ~~~ン)



と、馴染みの音が家の中にこだまする。



「……!!!!」



(ピンポ~~ピンポ~~ピンピンピンポ~~~ン)



凛世はかなり驚いたらしく、ボタンを連打しては、目を皿のようにしていた。



こういう光景を見ると、子供に教えてるみたいで何だか和むな。



と思ったのもつかの間。



「インターフォン鳴ってますよ兄様」



まひるが出てきてしまった。



「ガルルルルウゥゥ」



即座に臨戦態勢に入る凛世。



「何ですか、兄様に危害を加えるのなら容赦しませんよ!!」



こちらも構えるまひる。



「待て待て待て待て!!」



「ガルルルルウゥゥ」



「……行きます!!」



両者が間合いを詰めにかかった。



あぁ、もう……無理だ。



さあ皆さんもご一緒に。



「メディーーク!!」


(死亡フラグ 6+1=7)









あの後、まひるに実力行使もといコチョコチョを繰り出して一旦コトは収まったのだが……。



「兄様、これはどういう事か説明して下さい」



「……どういう事?」



誤魔化せなかったみたいです。



「あぁ……、えぇ……、実はカクカクシカジカなんだよ」



「分かりました、この変態犬耳女がストーカーなのですね」



「……オオカミ耳」



「いや多分違うし、凛世もツッコミどころがおかしいよ」



「じゃあ言葉を濁さずにちゃんと言って下さい!!」



「でもなぁ…、凛世、言ってもいいか?」



「……生徒?」



まひるを指差す凛世。



「ん?まひるの事か?まだ中学3年生だから生徒じゃないよ」



「……ならいい」



お許しも出たところで。



「実はな……」









「なるほど、つまり2人の仲を例えるとしたら『狩り友』という事ですね」



「あぁ」



「つまり恋愛感情はないと、そういう訳ですね」



「あぁ」



「……勝は群れの仲間」



「ちょっと凛世、ややこしくなるから喋らないで」



「むむ、群れって家族って事ですか!?」



ああ…聞こえてたよ。



「……だから一族で挨拶を」



「ガルルルルウゥゥ」



「待て待て、なんでこういう事になったんだ?凛世」



「……縄張りに入る事の許可を得たから」



あぁ…、なるほどね…。



「人間界では家に呼ぶ事は友達の証であって家族の証では無いんだよ」



「……!!」



初耳だ!!という風に愕然とする凛世。



「という事だから大丈夫だよ」



「そうみたいですね、なら私は部屋に戻ります。ドア直しておいて下さいね」



「あぁ、分かったよ」



まひるが部屋に引っ込んで、2人+オオカミ沢山になった時、



「……勝」



「おぅ、なんだ?」



「……諦めないから」



「???」



そう言うと、踵を返してオオカミと一緒に走り去っていった。



「おーい!!勉強するんじゃなかったのかぁ!!」



と言っても帰って来ることは無く。



今日は事なきを得たのだった。

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