今日のとっておき 【月夜譚No.412】
風呂上がりのプリンが楽しみだ。
仕事帰りに駅前でやっていた、有名店の出張販売。ずっと食べたいと思っていたが、近くに店舗がなくて実物を見ることすら叶わなかった逸品である。
彼女はいつもより手早く身体を洗い、湯舟にはしっかり浸かってから、冷蔵庫に直行する。棚の中央に鎮座する白い箱が、まるで宝箱のように見えた。
いそいそとリビングに運び、今日配信されたばかりのテレビドラマ最新話を再生。準備が整ったところで、箱からカップを取り出した。
横から見ると、薄黄色一色が綺麗に映える。蓋を開けた瞬間にぷるんと表面が揺れて、スプーンを入れるのを一瞬躊躇った。しかし食欲の前ではそんな躊躇も呆気なく、掬った一口をえいやと咥える。
舌の上にひんやりとした感触と蕩けるような甘みが広がった。思わず頬を手で覆って味わってから、今度は付属されているカラメルソースを上から垂らす。濃い茶色がプリンそのものの色合いを強調させて、香ばしさと苦みが加わった。
暫く夢中でプリンを食べてしまってから、ドラマをちっとも見ていないことに気がついた。彼女は苦笑してから女優が何か言おうとしたのを遮って停止させ、頭から再生し直す。
明日は休日だし、今夜はのんびりできる。全身で好きなことを味わいながら、彼女は幸せに頬を弛ませた。




