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原点5
喉が裂けるほど叫び続ける。
声が枯れても。
息が続かなくなっても。
それでも叫び続けた。
やがて──
視界が暗く染まる。
足の力が抜ける。
そのまま、裁花の意識は途絶えた。
◇
次に目を覚ましたとき、裁花は病院のベッドの上にいた。
白い天井。
消毒液の匂い。
何が起きたのか、最初は理解できなかった。
だが、すぐに思い出す。
赤いリビング。
倒れていた母。
そして──血。
「……ママ」
声に出した瞬間、胸が締めつけられる。
だが、その場にいた大人たちは何も言わなかった。
警察も。
医者も。
誰も、はっきりとは何も言わない。
ただ一つだけ、分かったことがある。
母は死んだ。
それだけだった。
そして──父は、帰ってこなかった。
いつもなら、とっくに家に帰ってきている時間だった。
なのに、その日だけは帰ってこない。
裁花はその理由を、このときまだ知らなかった。
父もまた──同じ日に死んでいたことを。
残った家族はみたらしだけだった。




